17話 本音と覚悟
土埃を払いのけるように、ゆっくりとエルマタールが近づいてくる。手を休める訳には、行かない、、次の攻撃を繰り出さなくてはならない、その時だった。
シャルーサが小刻みに震えている、何かに恐怖しているかのように。
フロウ「どうした?シャルーサ!?」
焦る気持ちと心配する気持ちが混濁してかなり同様していたと思う、目の前には殺しにかかる相手が居るのだ、当然だ。
シャルーサ「お、お兄ちゃん、、怖いよ、、怖いの凄く怖い、、、。」
シャルーサが怯えていた、冷静になればわかる。俺たちが今相手にしているのは、動物でも魔物でもない。
同じ人間なのだ、シャルーサからすれば俺視点でみているだけだ。実際に動いている俺より恐怖を感じるのは、至極当然のことだ。
俺が思考を巡らせる中でもエルマタールは、足を止めないゆっくりと着実に俺たちの命を取ろうと近づいてくる。
俺は今一体どんな顔をしているのだろうか、改めて突きつけられた現実に顔を歪ませているのか、ぼーとアホ面をしているのだろうか。
あぁ、足が手が震える。首を吊ったあの時よりも怖いかもしれない、心臓が焼き切れそうなくらいに脈を打っている。
俺たちの前でエルマタールが立ち止まる。
エルマタール「素晴らしい、、素晴らしい表情だ!!絶望と恐怖を感じてひれ伏すその姿!とてもとても美しい!!さぁ!死を受け入れろ、、、!」
エルマタールが俺たちに向けて手をかざす、魔法をぶっ放す気だろう。
勝ちを確信したエルマタールは、ゆっくりと詠唱を滑らせる。
フロウ「死ぬのは、、、」
エルマタールが詠唱を止める。
エルマタール「なんだ?」
不機嫌そうに問いかけるエルマタール、俺は震える体を黙らせて続けた。
フロウ「死ぬのは、簡単だ。恐怖も後悔も絶望も死んでしまえば楽なものだ。」
エルマタール「、、、、、」
フロウ「けど、それで救われるのは自分だけだ。」
エルマタール「だからなんだというのだ!!」
エルマタールが再び詠唱を始め乱暴に俺たちの額に手を当てる、俺はエルマタールを睨みつけて言葉を殴りつける。
フロウ「だから、、だから!!この体も心も俺だけのもんじゃねーんだよ!!」
俺はこの子を護ると、、あの日背中を押した名も知らない彼女に何よりも自分に誓ったんだ。
もう何にも後悔をさせないと、2回目の死に際に絞り出された俺の本音だ。
エルマタール「もう、遅い」
エルマタールの手先から黒い光の魔法が放たれようとした、瞬間だった。俺に聞こえてきたその声は、転生してきた時の彼女の声だった。
女性の声「そうね、貴方はいつもそうよ、定めは決まっています。思う存分護りなさい。」
俺の体に電気が走ったような感覚に襲われた。魔法が貫通して死んだのだろうか。
目を開けた時に見えた光景は、二、三歩先にいるエルマタールの姿だった。
シャルーサ「お兄ちゃん、、今何のをしたの、、?」
我にかえり体を見渡すと、稲妻のような光の筋が俺の体の上で踊っている。
エルマタール「ここれは、、なんだ?上位魔法なんて物じゃないぞ、、、!」
何故だろうか、俺はこの魔法を知っているような気がする。瞬間俺はエルマタールまで一気に距離を詰めて腹に拳を叩きつける。エルマタールは、よだれを吐き散らしながら地に膝をつける。
エルマタール「ふ、、ふざ、、ふざけるなぁだぁぁ!」
絞り出した怒声と共に複数の黒ヤギが俺たちに襲いかかる。
フロウ「もう、、終わりにしようか」
エルマタールがどんな境遇で俺たちを殺そうとしているかは、知らない。
どう足掻いてもコイツは、こうするしかなかったのだろう。なら俺も覚悟を決めなくては、いけない。
例え、シャルーサを護る事でシャルーサの手を汚す事になっても、、、!
フロア「はあぁぁあぁ!!」
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拳に光を溜めて放った一撃は、エルマタールの腹から背中にかけて貫いた。臓物と体液を撒き散らしてエルマタールの体から力が抜けていくのが見てわかった。
断頭台が崩れて空がガラスのように割れて、いつもの森の風景に変わる。
穏やかに眠ったようなエルマタールの顔を見ながら、人を殺した事を改めて実感させられた。しかし自然と体は震えない、俺はもう、、覚悟を決めた。




