第13話 愛され子
いつもそうだ、こちら側がどれだけ気を配っていても叩きつけ踏み躙るのは、他人なのだ。しかし、人の世で生きる限り仕方がないことでもある。それは自分もしてきている事だから。
だが、一番タチが悪いのは平気で土足で踏み荒らしに来る人間だ。だからこそ、この男に殺される訳にはいかない。
集中だ、大丈夫出来るはずだ。
ホロル「ふぅ、、、」
すっと息を吸う、体に酸素を循環させるように魔力を流し込むのだ。
俺たちを囲んでいる黒ヤギの中に一体だけ、黒く透明な異様なヤギがいる。何だが変な感じだ、魔法の一つなのだろうか、、、瞬間背中を何かに掬い上げられた。
ひっくり返されて地面に落とされると思ったが、その主の背中に乗せられた形になったのだ。
その主というのは、マルシュルホルだ。
だが、その個体は今まで見てきたどの個体とも違う。
なんというか、老いた個体なのだが、不思議なオーラというのだろうか。それに全体的に白い毛並みで神秘的なオーラがあるのだ。
黒ヤギの群れを蹴散らして遠ざかるように、逃げるマルシュホル。
背後に気を配りながら、マシュルホルの背中の上で魔法を展開しつつ1匹ずつ確実に仕留めていく。
それにしてもキリがない、無限に黒ヤギが湧いているような気がする、やっぱり本体を叩くしかないのだろうか。
???「母に愛されし、子よ、聞いておくれ」
声が聞こえてくる、それも耳元で。
さっきのエルマタールの声とは、違う、穏やかな老人のような優しい声だ、、、。
前にも同じような事があった、あの森で殺されそうになったところを聖獣に助けられた時だ。
ホロル「もしかして、マシュルホルなのか?」
老いたマシュルホル「人は、私たちのことをそう呼ぶのだね、私は森で暮らす者だ。名前など持ち合わせない。
しかし、私の種は、母に与えられた役割がある。
それは、森の守護だ。」
ホロル「、、、、」
俺は、思ったのだ。勝手に住み着いていた俺たちを何故助けてくれたのか、わからない。もしかしたら、助けたように見せかけて殺されるのかもしれないと。
マシュルホルだけでは、ないが他の動物もたくさん殺した、生きるために。
俺があれこれと考えていると。
老いたマシュルホル「愛され子よ、警戒する必要は、ない。確かに君らは、同種をたくさん殺めてきたかも知らないが、それは循環の一環にすぎない。
最初に母が君たちを受け入れた時は、こちらも嫌なものだったが、他の人間とは違った。
君たちが森を母を重んじ慎ましくけれど、逞しく暮らす姿は、いつしか私たちのような者達にも受け入れられたのだ。
だからこそ、森を荒らすあの男に立ち向かう愛され子を森の守護を担う私も協力しよう。」
森の守護獣と言われている、マシュルホルに協力してもらえるなんて、なんと光栄な事だろうか。
シャルーサの行いは、いつしか森の住人の心まで動かしていたのだ。俺も森に住む人(者)として、この男に立ち向かおうと強く決心したのだ。




