表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/10

第7眠

 ――う~ん、むにゃむにゃ。


 むにゃ?


 ……。


 んん?


 ………………?


 目が覚めたら、また真っ暗な世界だった。

 ()の一つも差し込まない、完全なる闇の世界。


 ……えっ、『光』はどうなったって?


 ははは、何を言っているんだい。

 あれは便宜上『光』と呼んでいるだけで、光とは別物だよ?

 だからノーカンです、ノーカン。


 ん~、でもあれって一体何なんだろうね。

 俺の魔法で創った物だから魔力で出来ているのは間違いないんだろうけど、これっぽっちも魔力を供給してないのに、なんで膨張し続けているんだろう。

 ほんと、意味が分らん。


 だって、何もエネルギーを加えてないのに『光』が生み出され続けてるんだよ?

 エネルギー保存の法則はどこへ行った。

 こんなんじゃ、永久機関だって簡単に造れちゃうよ。


 ……まあ、チートがあるから、永久機関とか別にいらないんだけどね。





 そんなことよりもだ。

 永久機関なんていうチートの代替品よりも、今は寝具が欲しい。

 布団でもベッドでも、なんなら寝袋やハンモックだっていいから、いい加減寝具に体重を預けて寝たいんだ。


 そりゃ無重力の中をぷかぷか浮かんで寝るのも気持ち良かったよ?

 でもさ、なんか知らんけど、自然と両腕が上がってきて気が付いたらバンザイみたいな格好になってるんだよね。

 いやまあ、だからどうしたって話なんだけどさ、一度気になりだすと、気になって気になってしょうがないんだ。


 という訳で、今日はチートを使ってサクッと地面を作ってみようと思います。


 ほら、ネット小説なんかの土魔法って、だいたい土を生み出せるでしょ?

 あんな感じでチートを使って大量の土を生み出せば、ちゃんと寝転がれるぐらいの地面が出来ると思うんだ。


 「大地よ!」


 俺はそう言って手の先に魔力を込めた。


 ……しかし、土は出なかった。


 前回の『光』の時と同様の違和感が生じて、土が生み出されなかったのだ。

 しかし、それと同時に、もっと魔力を込めて勢いを付けてやれば上手くいきそうな感覚もある。

 完全に前回と同じ流れである。


 おーけー、おーけー。

 そういうことね、完全に理解したわ。

 つまり、魔法は勢いマシマシでやらないとダメってことね。

 そういうことなら……


「大地よぉぉぉ!!」


 もこもこもこもこもこもこもこもこ。


 頑張って魔力を込めたら、物凄い勢いで大量の土が現れた。

 土というか土砂というか、もはや山と呼んで差し支えないほどの量である。


 う~ん、自分一人が横になれればいいやと思っていたけど、さすがにこの量は予想外。

 だけどまあ、これでも地面の上で寝るのに不都合は無いか。

 大は小を兼ねるって言うしね。


 ってなわけで、早速ダイブ!

 久し振りの地面の感触は……


 感触は……


 …………


 ……なんか思っていたのと違う。


 確かにそこには大量の土がある。

 それこそ、文字通り山のようにあるんだから、寝転がれないはずがない。


 そう思うじゃん?

 けどさ、実際にダイブしてみると、これが全く寝転がれないわけよ。


 俺が無重力の中をぷかぷか浮かんでいるってことは、地面も無重力の中をぷかぷか浮かんでいるってことで、一緒になってぷかぷか浮かんじゃうんだよ。

 こういうの、宇宙の用語でなんて言うんだっけ?


 ランデブー?


 なんかそんな感じのヤツ。

 おまけに、ダイブした拍子に土や砂が舞い散って、目や鼻に入り込んでくるから鬱陶しくてしょうがない。

 別に痛くも何ともないからいいんだけどさ。

 なんかもう、全体的にコレジャナイ感が酷い。


 なんていうかこう、俺はもっと『しっかりと体重を預けて寝たい』んだ。





 ……ああそうか、『重力』だ。





 そりゃ、重力が無きゃそうなるか。

 重力が無いから『無』重力って言うんだもん。

 

 え~っと、重力ってどうやって作るんだっけ?

 重力と言えば万有引力の法則だよね。

 確か「全ての物資はお互いに引き合う力がある」ていう理論。


 地球も人間もリンゴも全てがお互いに引き合う力があって、本当は人間とリンゴの間にも引き合う力が発生している。

 でも、リンゴと引き合ってる実感が無いのは、お互いの引き合う力が小さ過ぎるからだ。


 そして、その力は物体の質量が大きくなればなるほど強くなるから……


 ……


 ……


 ……


 ……よし、やるか。

 俺は全力で魔力を込めた。





「大地よぉぉぉ!!」





 もこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこもこ。





 二度目の土魔法ということで慣れたのか、違和感を覚えることなく大量の土を生み出せた。

 試しに『鑑定』をしてみたところ、その量は実に毎秒1兆トンにも及んでいる。

 

 まさにチートの名に相応しい土の質量兵器。

 もはや桁が違い過ぎて、どのくらいの量が生み出されているか理解することすら難しい。


 これなら、すぐにでも満足がいく重力が得られるだろう。

 逆に、土を出し過ぎて重力が想像以上に強くなるのも嫌なので、ちょうどいい塩梅になるまでの時間を『鑑定』してみる事にした。





【鑑定結果】


 完了まで残り約69日――





 ……ろくじゅうきゅうにち?


 ……


 ……


 ……


 えっ、ろくじゅうきゅうにち???


 思わず鑑定結果を二度見してしまった。


 地球並みの重力が欲しければ、当然ながら地球並みの質量を用意しなければいけない。

 そして、『鑑定』によると地球の重さは5,972,000兆トンだという。

 毎秒1兆トンというチート級の土を生み出していても、約1,659時間かかる計算だ。


 ……つまり、約69日間である。





 ええ~、面倒くさい。

 別に出来ないわけじゃないけど、それだけの間、土を生み出し続けるなんて面倒くさ過ぎる。

 いっそのこと『光』みたいに、何もしなくても膨張し続けてくれたら良かったのに、何故か今回はそうなってくれていない。


 ……いやダメか。

『光』みたいに収拾がつかなくなったら、それこそ面倒くさい事態になってしまう。


 むむむ、勝手に土は生み出されて欲しいけど、収拾つかない事態には陥ってほしくない。

 魔法の自動化でもできればいいのに……。


 ……


 ……


 ……うん、できるね。


 じゃあ、自動化の魔法を土魔法にセットしてっと。

 ……これでよし、あとは69日間待てば完了!


 それじゃあ、大地(ベッド)が出来るまでおやすみなさい。






 ………………






 …………






 ……






 ……ぐぅ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ