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異世界を賭けた異世界による物語の為のバトルロワイアル ~Alice's in the Another World!~  作者: 月夜空くずは
第二章 明けない夜の永い尾話
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062 対キングゴブリン-1

 キングゴブリンの居る場所は森の中――それも、洞窟に巣を作ってコミュニティを築いているらしい。

 東の森へ進んで、そのまま山脈付近にまで近づくと、高い崖が見えるようになってきた。この崖にできた洞窟を根城にしているとのことだが……


「アリス、気配はどうだ?」

『もっと北ね。わざわざ雑魚の気配を探るってのも疲れるわ……』

「おつかれさん。でも探知はアリス頼りなんだ。頑張ってくれ」

『ええですとも。今回頑張った分、今度褒美を用意しておきなさいよね』

「ご褒美って、例えば?」

『アンパン。粒あんで』


 ……そんなに気に入ったか、粒アンパン。まあ安上がりだし結局食べるのは俺だから良いですけど。

 俺達は揃って崖沿いに歩き続ける。すると、崖にぽっかりと亀裂が入っているのが見えた。アレが洞窟だろうか……?


『……! カタル、そこの洞窟から大量の気配がするわ。雑魚がそこそこの数住み込んでるみたい。奥の気配まではわからないけど、これは……間違いない、キングゴブリンの巣窟よ』

「こんな小さな入り口の洞窟にキングゴブリンが住み着いてるのか? 確かキングゴブリンって数メートルほどデカいんだろ? 狭いと出入りできないんじゃないかな」


 うろ覚えだが、オークに負けず劣らずの大きさだと記述されていたはずである。だったらこんな隙間を出入りできるとは思えないのだが……どうなんだろう。スライムみたいに軟体生物なら無理やり通れなくもないと思うけど。


『キングゴブリンはリーダー格のゴブリンが巣の中で巨大化して誕生するの。外に出るのは働きアリみたいな小間使いのゴブリンだから、キングゴブリンは外に出る必要が無いの』

「なるほどね……王様は働かないってことか」


 アリスの解説を聞きながら洞窟の湿った壁をヒタヒタと触る。

 洞窟の入り口は思っていたよりも狭く、金の鍵なんか振りかざしたら周囲の石壁にぶち当たって上手く振れないだろう。

 この中では小型の時計の針を使って戦闘するべきかもしれない。


『あら、松明とかあるのね。ゴブリンとはいえ意外と文明レベルは高めなのかしら』

「……なんかオイル臭いな。布に染み込んでるのは化石燃料か?」


 洞窟内には点々と松明が壁に固定されていて、明るさは十分確保されているように見える。

 そういえば洞窟内が暗所になることをまったく想定していなかったが、これなら暗所になる洞窟での戦闘も問題ないだろう。偶然に救われたな。


『……! 中から二匹の気配! ゴブリンよ!』

「! 来たか……!」


 ゴブリンの巣の前でウロウロしすぎたのか、ゴブリンに気配を悟られたらしい。中からゴブリンが武器を片手に飛び出してきて、俺を目掛けて襲いかかってくる。


――《ウェポン・スキル「金の鍵」》


「ギャ――」

「――ギャ、ギ……ィ」


 俺は咄嗟に武器を召喚し、襲いかかってくるゴブリンを迎え打つ。襲いかかってきたゴブリンを二匹、俺は容易に切り伏せて塵に還した。

 まだ洞窟の入り口前だからこんな大剣を振り回せているが、これより先に進むと金の鍵で戦闘をするのは難しくなるだろう。


「……? なんだ、他の奴は出てこないのか?」


 他のゴブリンは……出てこないな。木の枝で突くとワラワラ出てくるようなアリの巣を連想していたが、そんな大混乱は起きていない様子。


『……なんだろう、警戒されているわね』

「そんな気がする。ここからは慎重に乗り込まないと罠に掛かるかもしれない」


――《ウェポン・スキル「時計の針」》


 金の鍵を捨ててトランプを一枚めくり、時計の針三本を指の間に挟むように持つ。まるで鉄の鉤爪ような感じだ。正直こんな扱い方は不慣れだが、仕方ない。


『行きましょう。私たちなら問題ないわ』

「ああ……だと良いんだけどな」


 武器の大きさの都合上、今のような一対多人数戦は出来なくなる。洞窟内での戦闘はこちらにとって不利だ。これからは地の利とかを考えて戦わなくては。


「…………」


 湿った地面を慎重に踏みしめるように洞窟内を歩く。

 ……不安が募る。松明があるからとはいえ、暗所を自分から歩いているからだろうか。人間である以上、暗闇には幾らか恐怖心を抱いてしまう。


 それにこの洞窟は生臭い。食料や糞尿の臭いだろうか。生き物が住んでいる気配が嫌というほどする。恐怖心だけではなく、不快感も感じずにはいられない。

 これがモンスターの巣というものか。野外での戦闘とはまるで勝手が違う。色々な要因が足を引っ張ってくるような、そんな感じ。


「アリス、敵の位置を把握できないか?」

『……駄目ね。近場に密集しすぎていて細かな判別ができないわ。洞窟内部の構造もわからないし、どこに潜んでいるか伝えられそうにないわ』

「そうか……」


 なら、なおのこと神経を研ぎ澄まさなければ。相方の力を借りれないのなら俺が全部補わなければならない。


『! カタル! 左!』

「――――!」


 合図を受けて俺は咄嗟に右手に握りしめていたクナイを爪のように振り払う。

 ザシュ、と生肉を抉るような手ごたえと、地面に砂袋のような物が落ちる音。

 見なくても何が起きたのかはわかる。不意打ちを狙って飛び掛かって来たゴブリンを時計の針で引き裂いたのだろう。


『ナイスアタック。良い反応速度だったわ』

「……野外戦しかしたことなかったけど、ゴブリンってのはこんな戦術を仕掛けてくるのか」

『以前戦ったのは語り手(笛吹き男)の手先だったからね。それに、この巣はゴブリンにとってホームグラウンドのようなものだから。どこが不意打ちに適しているかも把握しているんでしょ』


 そういえば、あのモンスターは語り手――ハーメルンの笛吹き男に操られているモンスターだったな。だからこんな不意打ちなどせず、動きが攻撃か撤退の単純なものだったのか。


「厄介だな……以前みたいに楽勝とはいかないってことか」


 ならば、より一層気を引き締めなくては。

 緊張のためか、俺はクナイを持った手にほんの少し汗が滲むのを感じた。


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