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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
86/216

32 ジハード

「どうなってやがるっ! 何だお前はっ!」


「私は……キアラ! キアラ・ナーゴだよっ!」


 赤い光が次第にキアラの胸へと収束し、内に収まった後、キアラの身体を包むように赤いオーラが噴き出す。その赤いオーラは、キアラの身体中についた小さな傷や火傷を癒していく。


「何だこりゃあ……ふざけやがってぇぇえ!」


 ダラックは目の前の現象に混乱するが、どんな敵が来てもぶっ潰すのが脳筋ダラックの信条であった。そのため、ただただ目の前のキアラをぶっ潰そうと全力で攻撃を仕掛けるのみであった。


「獣王拳 餓狼の爪牙(ロウ・エ・ラウ)


 巨大な両腕が左右からキアラを切り裂こうと、鋭い爪を立ててバッテン斬りしてくる。


「無駄だよっ!」

「!?」


 キアラの身体を切り裂く寸前で、対象が消えて虚しく空を切り裂くダラック。何の感触もなくただただ素振りをしただけの格好となる。


「どこに行ったっ!?」

「ここだよっ!」


 左右を見渡すダラックだが、すぐ後ろからキアラの声がする。反射的に首だけ振り返るダラックだが、そこにキアラの強烈な拳が繰り出される。


「ぶふぅっ!」

「やぁぁあ!」


 さらに追撃とばかりに鼻を強烈な蹴りでへこませる。


「ぶへぇっ!」

「まだまだァ!」


 ダラックの正面に着地したキアラは連打の嵐を叩き込む。


「やぁぁぁぁあああ!」

「ぶふ、がふ、げふぅ」


 連打に合わせて、ダラックの身体が軽く宙に持ち上がる。キアラの拳はいつの間にか真っ赤なオーラで包まれて巨大な拳のようにも見えてくる。


「たぁぁぁぁあ!」

「ぐぁぁぁああ!」


 バガァァァアン……


 トドメの一撃とばかりに飛び上がり、正拳突きをダラックの顔面に叩き込む。ダラックは派手に吹き飛び壁に激突した。



 ガラガラ……



 仰向けに倒れるダラックは天上を見上げて混乱する。この力は一体……。何が起きた……? 死に損ないだったじゃねぇか……! 頭の中を訳の分からないこの状況を理解しようと駆け巡る。そんなダラックにキアラが叫ぶ。


「お前なんかっ!」

「? ……」


 首だけ持ち上げてキアラへと視線を向けるダラック。


「お前なんかが奪っていい物なんて何一つないっ! 私は……私達が守るんだぁ!」

「! ………………ガキが、調子に乗るなよ……」


 キアラの言葉にダラックは無性に怒りが込み上げる。守る? 誰が? 何を? オレ様は幼い頃から自分の力のみで生きてきた。あの男に復讐という束縛をされ、雁字搦(がんじがら)めに自由を奪われたダラックは奪う事でその心を保ってきた。


 そんなダラックにキアラの言葉は耳障りでならなかった。瓦礫から身体を起こして、再び身体中を黒と白のオーラで包む。キアラも掛かって来いとばかりに、真っ赤なオーラで身体を包む。


 そんな態度に再びダラックは侮辱された気になり、額に血管の筋が浮き出る。オレ様を否定する奴は皆潰してやるっ! それがダラックの全てであった。


「獣王拳 山嵐の加護(エル・ド・ヴァリ)

「……」


 ダラックの身体が硬質化し、毛がまるでハリネズミのように突き立つ。さらに身体の周囲を赤い風が舞踊り、鋭く尖った毛も一緒になってダラックの周りをグルグルと風に沿って舞う。


「行くぞクソガキがぁ! オレ様がその口を開けねぇようにしてやらぁ!」

「……」


 何も言わずただただ構えた状態でダラックを見据えるキアラ。その姿にダラックは心底面白くないというように、眼をギラつかせている。


 近寄れば熱風と針地獄を浴び、攻撃出来たとしてもその硬質化した身体と、鋭い体毛が逆に攻撃した相手を自滅させる最悪な組み合わせであった。


 しかし、キアラは動じない。むしろ、笑ったのだった。


(こ、こいつ……笑っただと!? この状況で笑うだとぉぉぉぉお!)


 ダラックが遂に怒りの頂点に達する。怒髪天という言葉通り、全ての毛が逆立ち、ダラックは一気に駆け出す。


「獣王拳 猿帝の剛撃(アデ・ラ・バース)


 全ての力を右手に集約して打ち放つ。それはただただ力技の頂点にして最大火力のぶん殴りであった。黒と白のオーラが螺旋する拳が、キアラ目掛けて一直線に迫る。


 しかし、キアラはその圧倒的なオーラを前にしても、口元は笑顔で、目だけはしっかりとダラックを睨みつけていた。


(しねぇぇぇえ! クソガキがァァあ!)



 直撃を確信するダラック。しかし、そんなキアラがついに動いた。それは一瞬、静かになり、頭に血が昇っているダラックの耳でさえも捉えるほどに強く、そしてハッキリと聞こえた。


()() 烈火怒竜撃(フレア・ボム)


(な!?)


 ドオゥッ


 一瞬の出来事だった。ダラックからすれば、キアラを殴れる寸前だった。しかし、今は身体中を焼かれたように焦げて壁に埋まっていた。真っ赤な光……それだけが最後の一瞬で見えただけだった。


(な、何が……?)


 正面に立っていたキアラを見ると、右手を突き出し、正拳突きをしたような形で残心している。


(あ、あれはっ!)


 その右手には竜のような鱗で出来た武器のような物が装着されていた。手の甲の辺りには竜の顔の様なデザインがあり、指を包むように赤い爪が生えている。まさにドラゴンクローという名が相応しい武器であった。


「て、テメェ……何しやがったっ! このオレ様に何をしやがったぁぁああ!」


 壁に埋まっている身体を力で抜き出し、キアラへと再び向かっていく。


「獣王拳 獅子の牙突(ガル・デ・ゴア)


 それはジハードに放った技であった。極太のビームがキアラを飲み込もうと地面を削りながら迫ってくる。だが、キアラは逃げない。


「竜拳 赤竜滅撃砲(カラミティ・ノヴァ)


 キアラが右手の手のひらを向けて、集約したオーラを一点集中にして放つ。拳大の大きさの真っ赤なビームは、ダラックの放った極大ビームを穿ち、威力を殺して霧散させ、そのまま突き抜けて行く。


(そんな……まさかっ!)


 ドシュン


「クボホァァ」


 自分の放った必殺技が潰され、さらに突き抜けたビームがダラックの左肩を抉り飛ばす。衝撃で再び地面に転がるダラックは、ありえない事ばかりで動揺する。


(オレ様がやられているだと……? このオレ様が!?)


 ダラックにとっては屈辱であった。既にその力はこの時代では誰にも負けない実力を持っていたのだから。だからこそ、奪って奪って奪ってきた。奪われない為に。


「このくそがァァァあ!」


 ガバッと立ち上がり、ダラダラと左肩から血が噴き出すが構わないとばかりにダラックは歩みを進める。


「オレ様はなぁ、奪っていいんだよ。だから奪うんだっ! 全て奪ってオレ様の人生を取り戻すんだっ!」

「させないよっ。だって、私とジハードちゃんが守るんだからっ!」


 ダラックの身体が怒りに震える。そして、最後の必殺技を放つ構えを取る。


「オレ様が勝つ! 奪って良いのは奪われた者だけだぁぁあ!」

「絶対に守るよ! もう、何も奪わせたりなんかさせないっ!」


 二人は集中してオーラを掻き集める。この一撃に全てをかける。


 ダラックは腹の底に集約していく。キアラは右手の竜の装飾にオーラを集約していく。どちらも最大出力となるまでしっかりと溜め込む。


「グゥァァァァァア」


 ダラックの腹には眩しい程のオーラが集約して、身体が黒と白の光に包まれる。


 ウィンウィンウィンウィン……


 キアラは静かにその腕にはめたドラゴンクローへとオーラを注ぐ。その瞳には一片の曇りもない。


 お互いが最大出力を貯め終わり、合図を送る。


「行くぞォォォ!」

「こいっ! 私達が守るんだっ!」



「獣王拳 黒白の咆哮(ダル・ロ・ラヴァ)

「竜拳 終焉(ジ・ハード)



 ドオオオオオオッ ドウンッ!


 ヒュイイイイイイン ゴバァァァァア!


 ダラックが口から黒と白の超巨大なビームを放出する。それはお腹に貯めた全エネルギーを一気に放出する、ダラック最大奥義だった。


 キアラも腕のドラゴンの装飾の目が光り、ガコッと変形して竜の顔の下から竜の口のような形となり、その口から貯めていたエネルギーを一気に放出する。真っ赤な極大ビームが飛び出す。キアラの足が地面に沈むほどの反動が、その小さな身体を襲う。


 両者の中間でぶつかり合うエネルギーは、どちらも一歩も引かずに拮抗している。


 ドウウウン


 ゴババババ



 両者は力の限り放出し続ける。己の信念を貫くために。





(勝つのはオレ様だ! 奪われてなるものかァァァ)



(守るよっ! 一緒にっ!)


 決着がつく。それはまさに一瞬の出来事だった……。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

技名にジハードをどうしても使いたかった。

キアラと一緒に戦う意味でも絶対でした。


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