18 嫉妬
きゅきゅーう!
元気復活、迅速アライグマッ! とりあえず、意識を取り戻したアライグマさん。話を聞くと、村の外が火の海に包まれた後は、みんなで村の中心で固まり、迅速アライグマさん達に水を掛けてもらいながら耐えたのだという。
「そ、そうだったんだ! 良かった……うう、良かったよぉう」
「ミロ……本当に良かった」
みんなの無事を聞いて嬉し泣きするミロ。リヴィアとニコレットは三人で抱き合う形でミロを抱きしめる。
そして、急に突風が吹き荒れて、村の中の火も大分消え、風が収まった所で一斉に消火していたそうだ。そして外の様子を見る為に一人、勇敢に現れたのがこのアライグマさん。
外を覗いたら、リヴィアとミロが居て安心して出てきた所に、ジハードの威圧でぶっ倒れてしまったようだが、それでも相当な勇気があるアライグマさんだった。
「んん〜! すっごい偉いね! 迅速アライグマさんっ!」
きゅきゅーう
キアラがアライグマさんの頭をよしよしと撫でている。気持ちよさそうに目を細めるアライグマさんだったが、何だか毛がチリチリしているのを感じて、目を開けるとキアラの背後で殺気をぶつけるように睨みつけるジハードがいた。その目は「貴様……可愛いからって調子に乗るなよ?」っと訴えている。
それはまるで子供がママを取らないでと縋る姿であったが、アライグマさんからすると心臓を鷲掴みされる思いであった。
きゅうー
バタり
再度アライグマさんは気絶するのだった。
キアラが「あれ? あれ? ど、どうしたのぉ!」とあたふたと慌てているが、背後のジハードは満足そうにしていた。これで邪魔な奴はいなくなった……と。
そんな時、ある事に気が付くのだった。
「オヤ、ヴァルさんはご一緒ではないのデスか?」
「……ヴァル? そういえば、私達よりも前を走っていたはずなのに居ないわね」
「言われてみたら、ダール達もいない……」
リヴィアとミロが辺りを見回す。ニコレットも気になって村の中を探しに行く。
「あのバカ共はこんな時にどこへ行ったのよ!」
「ほんとよね」
段々元気が戻ってきたのか、ミロがいつも通りになってきた。
「ダールゥ! ヤンナァ! ムンガジィ! どこにいるのー!?」
「ヴァルー? どこにいるのー?」
ミロとリヴィアが大声で叫ぶが、近くにはいないようだった。
「ドウヤラ付近に反応はないようデスね」
「んんー、一体どこに行ったのよぉ」
「…………」
「ん? どうしたの? ミロちゃん」
ミロが俯き加減に黙っていた。
「もしかして、ダールの奴、レッドに復讐するつもりじゃ……」
「……え?」
「前に言ったでしょ? 湖での『ある場所』の事!」
ガバッとリヴィアの腕を掴んで必死に訴える。
「もしかしたら、そこに行ったのかもしれない……」
「そ、そんな、どうして?」
「きっと、ダールはそこにレッド……いえ、ジハードちゃんの大事なものがあると思ってるに違いない」
ミロはそのイチゴのように赤い目に涙を溜めている。それを聞いていた緑の落下物がミロに声を掛ける。
「ソノ話、詳しく聞いても?」
「えっ……」
見たことの無い物体に、ミロは目を白黒させている。
「大丈夫デスよ、真っ白なお嬢さん。私は変な人ではありません」
「え? でもリヴィアとニコレットさんが……」
「忘れなサイ、すぐに」
やたらと顔を近付けてくる緑の変態兵器にビクつくミロ。
「ソレで? 先程の話ですが……」
「は、はい。ダールはきっと湖の中心に向かったと思うの。そこに何かあって、それを奪おうとしてるんだと思う」
「フム、不味いデスね。リヴィア殿、すぐに追いかけましょう」
「え? え、ええ。良いけど、そんなに焦ることなの?」
「ソコには魔王の封印があるかもしれないのデス」
「な、なんですって! 本当なのっ!?」
コクリと真面目に頷く緑の変態紳士。湖には火山の火口があり、その中に魔王の一部が封印された神殿がある事を伝える。それを聞き、事の重大さに気付き焦るリヴィア。
「ど、どうしたのリヴィア?」
「ミロ、急いでニコレットを呼んできてちょうだいっ!」
「う、うん! 分かったわ!」
鬼気迫る表情のリヴィアに、ミロも只事ではない事が分かり、ニコレットを呼びに村へと走っていく。
「キアラちゃん!」
「んんー? どうしたの? リヴ姉」
「お願い、湖に連れてって欲しいのっ! ジハードちゃんにお願い出来ない?」
「うんっ! 聞いてみる!」
キアラもリヴィアの慌てぶりに、真剣な表情となる。
「ジハードちゃん! お姉ちゃん達が湖にいそいで行きたいんだって! お願い出来る?」
|グオオオオオオオオッ《キアラの頼みなら任せろ》
「大丈夫っ! それでどこへ向かうの?」
「火山の……封印の神殿までお願いっ!」
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ヴァル達は湖までやってきた。ここまでかなりのスピードで向かってきているため、息が上がる三人。
「ハァ、ハァ、ダメだ、ダールの奴、見つからねぇ」
「ハァ、ハァ、ここまで来ちまったらァ、後は……ハァ、ハァ、あそこしかねェな……」
「ハァ、ハァ……ダール」
ヴァル達の前には、あの湖に沈んだ火山の火口があった。
「仕方ねぇ……行くぞ」
「ああァ……待ってろよダール」
湖に飛び込もうとするヴァル達であったが、レッドの咆哮により止まる。
グオオオオオッ!
「! ま、不味い! ありゃ完全にコッチに向かってきてやがる」
「くっ……こんな時にィ! 」
それでもと飛び込もうとするヴァルをムンガジが抑え込む。
「! なっ、は、離せっ! ダールの奴をーーーー」
「…………」
ムンガジが無言でヴァルに首を横に振る。その表情にヴァルは息をつまらせ、舌打ちをして湖に入るのを止めた。
既にレッドは目と鼻の先までやって来ていたのだった。今から追いかけても間に合わないのだった。しかし、レッドはヴァル達を見つけ、こちらへと飛んできた。
「チッ……仕方ねェ。ちっと遊んでやるかァ」
そう言ってヴァルは愛銃をレッドに向け撃つ。
ダァン
グオオオオオッ
レッドは急旋回して回避する。
「おうおゥ、この距離じゃあ大したダメージは与えられねェが、時間稼ぎくらいは出来そうだなァ」
ヤンナとムンガジが見たことも無い武器で攻撃するヴァルに目を白黒させる。
「お、おい、ダンナ。そりゃ一体……」
「あァ? こりャ銃っていう未来の武器だ」
「み、みらい? じゅう?」
流石に分からねェよな っと思いつつも、ヴァルはレッドに再度狙いを定める。
「こうやってェ……遠くの敵を穿つのさっ」
ダダァン
その強烈な音に、ヤンナもムンガジも耳を塞ぐ。小さな光る物が真っ直ぐ、そして高速で射出されたのが遠くに飛んでいくのが辛うじて見える。
放たれた二つの弾丸は、レッドの身体を逸れて行く。
「チッ……流石に有効射程範囲外だよなァ……」
ヴァルは風の抵抗など含めて、この距離でレッドに当てるなんて神業は持ち合わせていなかった。しかし、少しでもダールの助けになるようにと、時間稼ぎに威嚇射撃をしているのだった。
「ヴァルのダンナ、不味いぜ! ヤツがこっちに来ちまうっ!」
「良いんだよ! これでダールの生存率が高まるかもしれねェじゃねぇか」
ダダァン ダァン
ヤンナが止めるが、ヴァルは一向に止める気配がない。レッドは発砲されるたびに旋回して避けるが襲ってくる気配はないようだった。
ヴァルは弾を込めながらレッドの動きを窺う。
(……変だな。いつ襲ってきてもおかしかねェんだがなァ)
ヴァルが発砲しない間は、レッドは滞空しているだけであった。近付いてくる気配もない。
(火を吹くかもしれねェからな……あんまり近づけられねェ)
そんなことを考えながらヴァルはレッドに銃を向ける。そして、レッドの頭に狙いを定めると、何やら動く物体に気が付いた。
「おいおィ……嘘だろォ?」
ヴァルは信じられないといった様子で銃を下ろす。ヤンナとムンガジがどうしたのか聞くと、ヴァルは振り返り、呆れたように親指でレッドをさす。
「ありャ敵じゃねェかもしれねェ」
「「?」」
そう言われ疑問に思いつつもレッドに目を向ける二人。よーく、目を凝らすと、そこにはリヴィア達が一生懸命手を振っていたのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
ジハードちゃんの尊厳は、私が守る!キリッ
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