29 反撃の狼煙
「ま、魔王っ!!」
禍々しいオーラを放ちながら魔王がゆっくりと降りてくる。
「あ、あれが……魔王」
「っく、なんて恐ろしい姿してやがんだよ」
「ケ……計測不能。まさに規格外デスね」
ニコレット、ヴァル、グリーンメイルがそれぞれ初めて魔王と対峙した。そして、部屋の中間位の高さで静止すると、魔王は手のひらに魔力を溜める。
「ま、不味いわ! 魔法を放つ気よっ!」
リヴィアが必死に声を上げる。しかし、時すでに遅く、大量の魔力弾がリヴィア達を襲う。その数は二十や三十ではない程であった。
(だ、ダメだっ)
そう誰もが思っていた。
「随分とせっかちなんだな?」
「!?」
ボボボボボーン
リヴィア達の背後から真っ赤な魔弾が、魔王の放つ紫の魔弾を相殺する。
「こ、これはっ……まさかっ!」
「こ、この魔法はっ!」
リヴィアとラリィが見た事ある魔法の色に、興奮気味に背後へ視線を向ける。そして目にした。その黒いローブを身に纏い、鍔の大きな三角帽子に、漆黒の髪、燃え盛るような赤い瞳の人物。
「今、いい所なんだ。邪魔をするな」
「「レッドっ!」」
その姿を初めて見るジーク王が「あれが? レッド?」と首を傾げるが、何となくその威圧的な態度、魔力がジーク王の知るレッドに似てきて青ざめる。
「………………」
魔王が無言でレッドを見つめている。魔法を呆気なく防がれたから動揺しているのか、追撃する気はないようだ。
「だ、誰なのあの人は?」
「レッドよっ! 私の国での化け物と戦ってくれた人よ」
「そーなのっ? じゃあ、すっごい強いのっ!?」
「強いなんてもんじゃありませんよ? 最強です」
ニコレットの質問にリヴィアが嬉しそうに答える。やはりレッドがいると心強いのであろう。キアラも目を輝かせて聞いてくるのに対して、何故か自慢げに話すラリィであった。コツコツと進んでくるレッド。
「エレノア……準備は?」
「申し訳ありません、もうしばしの猶予を頂きたいです」
「わかった」
そう言うとレッドはリヴィア達をそのまま通り抜け、魔王の前へと立ちはだかる。
「俺が奴を止める。お前らは他の奴らを止めろ」
そう言われてハッと気付くリヴィア達。他の入り口二箇所から忍者や獣達が現れる。
「や、やるしかないわ! みんな! 準備して!」
「リヴィアとジーク王は後ろにいてください!」
「暴れ足りなかったんだっ! ブランガちゃんの分も暴れちゃうよっ!」
「一気に畳み掛けましょう!」
ラリィと、キアラ、ニコレットが忍者のいる橋へと向かう。
「そいじゃ俺らはあっちかァ?」
「騎士達よ、必ず死守するのだっ!」
「「ハハッ」」
「ヤレヤレ、近接戦闘しか出来ませんが、やるしかありませんネ」
ヴァルと騎士達四人、割と今は使えないロボットが獣達のいる橋へと向かう。
そんな中、レッドはふわりと空中に飛び、手から真紅の稲妻で出来た剣を出現させる。合わせるように、魔王も紫と黒に燃える剣を生み出す。
こうして決死の戦いが幕を開ける。
「行くわよっ! 突風斬」
ビュオオオオッ
橋の幅に合わせるようにニコレットは真っ直ぐにカマイタチを引き起こす突風を放つ。これにより、近くまで来ていた忍者達は、その大半が谷底に落ちていく。
魔法の効果が切れた所で第二陣が突っ込んでくる。魔法を撃たせないために沢山の手裏剣がニコレット目掛けて飛んでくるが。
「任せてくださいっ! コルム」
ニコレットの前に虹色に輝く一枚のバリアが現れる。そのバリアによって、ニコレットに当たるはずだった手裏剣が弾かれていく。
「サンキュ!」
「いえ、当然です!」
ニコレットに笑顔付きの感謝をされて照れるラリィ。今度はキアラが橋の前に立つと、向かってくる忍者達に軽くフットワークを入れて突っ込む。
「今度はこっちの番っ! 獣拳 豹牙」
手のひらが黒く輝く。そして手を口のようにパクパクさせながら、低い姿勢のまま疾走する。一人の忍者が右から左へ小刀を振り抜き、キアラの顔を狙うが、ヒラリと身体を上下回転させて 顎スレスレで避けると、そのままの勢いで懐に潜り込み、腹部と首元に片手ずつ突き刺して吹き飛ばす。
さらに後ろに回り込んだ敵が、同じく横薙ぎにキアラの首を狙うが、バク宙する要領でクルッと跳ぶと、敵の肩に足を乗せて「行っくよー!」と言いながら、ストンと肩車するのように座り、そのまま足で敵の首をロックし、身体を勢い良く後ろに反らして、そのまま敵の頭を地面に叩きつける。
ヒョイっと立ち上がると、向かってくる敵二人の横薙ぎによる上下二段攻撃ををジャンプして交わす。そして敵の頭を片手で掴むと、そのままお互いの顔をぶつけて気絶させる。
大体片付いたのでキアラは振り向いて笑顔でピースする。
圧倒的な身体捌きに、ラリィもニコレットも苦笑いしながらピースを返す。相変わらず本人の見た目と技の豪快さが似合わないキアラであった。
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こちらは獣が攻めてきた橋の上、中央にグリーンメイルが近付く獣を片っ端から殴り飛ばしている。辛うじて通り抜けた獣達も四人の騎士達が連携を取り、一匹ずつ確実に始末していく。騎士達でも手に負えない、獣が出た場合はさらに後方に控えるヴァルによって仕留められる。
ダァン! ダダァン!
「あの者め、あんな物を持ち込むなど……」
騎士達は正直に喜べないでいた。何故ならヴァルの使う武器、銃はロンダーク王国においては持ち込みすら許可されない代物であったからだ。
「んだよォ、今はそんな事言ってる場合かァ? ちゃっちゃか倒さねぇと次が来るぞ?」
ヴァルの使う銃は回転式拳銃で、いわゆるリボルバーと呼ばれ、弾を回転するチャンバーで装填する事で素早く撃つことが出来る。ヴァルの扱うリボルバーは対魔獣用の大型回転式拳銃で、片手では撃つ事が難しいほどの反動が生じる。それにより、バレルも一般的な物よりも長く太い。弾は特注品で、魔力を注ぐ事で魔法弾のような効果も持たせることが出来る。
しかし、今は通常弾で十分なので魔力弾は使わない。
ダァン!
「弾は無限じゃないんだぜェ! 無駄撃ちさせるなよォ?」
「くっ、ここを無事に出ることが出来たら覚えておけっ!」
「おおォー、こっわ! まァ出れるといいな」
憎まれ口を叩きつつも確実に敵を減らすヴァル。その射撃はかなりの精度で一匹に一発で確実に仕留めている。殺傷能力の高さは桁違いに高い武器ではあるが、なかなか出来ない芸当であった。
「ファーーッハハハ! どうしたどうした! 温いぞお前達! もっと全力でかかってきなさい! ハーハッハッハッハー!」
それに加え、グリーンメイルは一体で何十匹も相手にしているので、地味であるが評価してあげたい。その無駄に洗練されたポージングを……。
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「少しの間、付き合ってもらうぞ?」
「………………」
レッドと魔王がぶつかり合う。剣と剣は互いに反発し合い、衝撃波が辺りに発生する。二人は小手調べとばかりに、剣を無造作に振り、武器の性能がどちらが上か競う。
バチバチっ、バウッボウ
迸る稲妻が魔王の剣を伝い、全身を痺れさせるが、燃え盛る炎がレッドの剣を侵食し、全身も燃やし尽くそうと襲ってくる。
互いに離れては稲妻や炎をレジストして消し飛ばす。
「さすが……魔王と言った所か」
「貴様……何者だ」
魔王が初めて声を掛ける。
「その力……一体……」
「貴様が知る必要は……ないっ」
レッドが真紅の稲妻を槍の形状で投げつけるが、魔王は左腕で軽く弾き飛ばし、後方に受け流す。しかし、レッドの姿を見失う魔王。
左右を見渡す魔王であったが、真下から殺気を感じて全身バリアを咄嗟に張る。すると強烈な極大の稲妻が魔王の飲み込んだ。
レッドと魔王の戦いを見ていたリヴィアは、その極大の稲妻で魔王が殺られる事を祈る。
(お願い、これで倒れて!)
祈るように見ていると、エレノアが声を掛けてくる。
「あのお方はお強いです。……しかし、魔王はさらに強大です」
「! そ、それは……」
リヴィアは弱体化してしまったのは自分のせいであり、もしそれがなければと悔やむ。そしてエレノアの言う通り、極大の稲妻の中から紫と黒の炎が溢れ出す。
徐々に真紅の稲妻を押し退けていく魔の炎は、まるでブラックホールのように、稲妻を吸収し始める。分が悪いと悟ったのか、レッドが稲妻を止めて緊急回避する。稲妻を止めたことで、一気に巨大な炎がまるで隕石のように迫ってくる。
「れ、レッドォォォ!」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
それぞれの戦いが始まります。リヴィア達の運命とは一体……
次回もお楽しみにです。




