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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第二章 旅立ち
48/216

26 アンダーグラウンド

 暗闇を複数の影が通り過ぎる。最小限の音と高速で駆け抜けるそれは、リヴィア達が住宅区画で出会った忍者達であった。


 しばらく駆け抜けていくと、突然壁の影から手が伸びて、近くを通った忍者の背後から口を塞ぎ、闇の中へと引きずり込む。


 仲間の一人が消えた事に気付いて、足を止める忍者達。即座に警戒体勢を取り、来た道をゆっくりと戻る。暗闇で全く見えない中、忍者達は研ぎ澄まされた感覚で索敵をする。


 すると奥で何かが動いた気がした。即座に二人の忍者が闇に向かって手裏剣を投げ込む。手裏剣が何かに刺さる音がする。


 ゆっくりと進む忍者達、後ろの仲間が一人闇に消えるが誰も気が付かない。手裏剣を投げ込んだ所に二人の忍者が小刀で斬りかかると、確かな感触と、血らしき生暖かいものが飛び散る。


 倒れるその人物の顔を持ち上げると、それは最初にいなくなっていた仲間だった。驚き、再度警戒体勢に入ると、既に二人仲間がいなくなっている事に気が付く。


 残りは三人となる忍者達。ゴクリと誰かの生唾を呑む音がした後、闇の中から何かが投げ込まれて、一人が倒れる。よく見るといなくなった仲間の一人だった。残りの二人が闇に向かって手裏剣を投げるが、最後の一人の仲間を盾に、その人物は突っ込んでくる。


「くたばりなァ!」


 倒した忍者から取り上げた小刀で二人の喉元を断ち切る。血飛沫を上げて倒れる二人の忍者。残る一人は、投げつけられた仲間を退かして、起き上がろうとするが、首元に小刀の刃を当てられる。


「よォ、動くと、死んじまうぜぇ?」


 やる気のない瞳には殺気だけが宿っている。喉に当たる冷たい刃に、生き残った忍者が助からないと諦める。


「お前達は何もんだァ? 何の目的でここまで来た」


 忍者は口を覆う布の下でパクパクと口だけを動かしている。耳を近付けてみるが空気の掠れるような音しか聞こえない。どうやら既に喋れないように舌を抜かれていたようだ。


 タメ息を一つして小刀をシュッと引く。忍者は噴水のように血を噴き出し倒れる。


「つまんねェ事させやがって……」


 ポイっと小刀を捨てると、その人物は先を急ぐ事にする。


 どうもおかしい。南から侵入して東側を経由して北へと大分進んだ筈なのに、今度はまた南に進んで行く。


「このまま進みャあ、城の真下に向かう事になるなぁ……」


 そんな風に現在地から向かう先を予想していると、後方から向かってくる集団の気配を感じる。


「チッ……もう嗅ぎつけやがったか」


 先程の忍者達の死体を見て敵が潜んでいると分かり、集団で迫ってきていたのだった。数は気配からさっきよりも大勢であると、ヴァルはその鋭い感覚から察知する。


 ヴァルは舌打ちを一つして進むスピードを一層上げる。


 すると少し広い空間に出る。所々が崩れており、物陰が多い場所であった。ここで迎え撃つか悩むヴァルだが、先を急ぐために疾走する。


 しかしーーーー。


 カカッ、カンッ


「チッ……」


 ヴァルのすぐ横を何かが通り抜け、壁に突き刺さったり、壁に弾かれる。ヴァルはすぐにそれが敵の投げてきた手裏剣であると把握し、傍の物陰に隠れる。


 物陰から入り口をチラッと見ると、既に二十人近い人影が物陰などに忍び込んでいくのが分かる。


 出口までは数メートルの距離だが、あの数に一斉に攻撃されたら一溜りも無い。嫌な汗がヴァルの頬を流れる。


 しかし、次の瞬間、天井が盛大に崩れたのだ。運の良いことに、崩れたのは入り口側が大半で、ヴァルの隠れる物陰はその範囲外であった。


 ガゴッガラガラガラガーン


「な、何がっ!」


 大量の瓦礫に忍者達は一人残らず下敷きとなる。崩れた天井には大きな穴が空き、薄らと外の光が見える。ここは地下四階程の場所なので、その大穴は十数メートルもある。


 驚愕し、何が起きたのか分からないでいるヴァルだったが、地上から何やら叫び声が聞こえてくる。なんて言っているかまでは聞き取れないヴァルであったが、やがて轟音と紫の光が大穴から溢れてくる。


「派手にやってやがるなァ、ちきしょう……」


 何となく、地上の激しさを想像して独り言ちるヴァルに、今度は大穴から近付いてくる叫び声が聞こえる。その声をどこかで聞いた覚えのあるヴァルだったが、いまいちピンと来ない。


 すると天井の穴から一頭のワンゴが降りてきた。


「! ワンゴっ! 何故こんな所にっ!」


 身構えるヴァルであったが、紫の光の中、照らされるワンゴにしがみつく人物と、抱えられている人物に目がいく。


「お前達!」


 それはリヴィア達であった。リヴィアもキアラも地上に向けて、何やら泣き叫んでいた。


「ブランガっ! ブランガァァァ!」

「うわぁぁぁん、いやだよぉう! いやだぁぁ!」

「くっ……くそう……」


 ラリィはやり切れない気持ちを拳に込めて、歯を食いしばっていた。


 何が何だか分からないヴァル。


「おいっ! 坊主! 嬢ちゃんっ! それに獣耳っ娘も、一体何があったんだっ?」


 ヴァルの呼び掛けで三人がヴァルを見る。


「ヴ、ヴァル?」

「うう、ううう!」

「ヴァルさんっ!」


 三人共涙ながらにヴァルに反応する。するとワンゴが動き出す。


 キキーっ(行くぞっ)


 三人を抱え、ワンゴはヴァルの後ろにある出口へと向かう。あっ! コラっ! っと言うようにヴァルも咄嗟にワンゴの背中に飛び付く。


 何とか背中に乗り込んだヴァルが状況を確認するように尋ねる。


「な、何だってんだコイツァ? お前ら何してやがる!」

「っく、魔王が……魔王が現れたんですよっ」

「魔王だとォ?」

「「…………」」


 ラリィが苦しげに告げ、リヴィアとキアラは悔しい想いで目をつぶっている。ヴァルは何となくだが、最悪な展開が迫っていると勘づく。


「するってぇと、おめェさん方はその魔王ってのに襲われて逃げてる最中ってことか?」

「はいっ……」


 ワンゴは暗い道を素早く進み続ける。


「それにしても、ここは一体何ですか? 王国の地下にこれ程の物があるなんて……」


 ラリィが周りを見渡しながらヴァルに聞く。


「ああァ、ここはァこの王国が秘密裏に進めていた施設らしくてな。俺ァその調査にやってきたってわけだ」


 ハットが飛ばされないように押さえながらヴァルが答える。


「調査……?」

「そうだ、だからお前らにャあ、悪い事をしたが、この国に侵入するお手伝いをしてもらった訳だ」


 相変わらず悪びれる様子もないヴァルであったが、リヴィア達はそんな事は既にどうでもよかった。今は託されたこの命を、必死に守ることがブランガへの手向けになると信じて。


「これは何処へ続くのでしょうか?」

「さァな。だが、このまま進めば城の真下に出るはずだァ」

「城に……?」


 そんな事を話していると地震のように、地面が揺れ、天井からはパラパラと砂のようなものが落ちてくる。地上で相当の威力の衝撃が起きた証拠だ。


「おいおィ、こんな深ぇ地下まで衝撃が来るなんざ只事じゃねぇぞ?」

「「「……」」」


 天井を見上げ苦笑いするヴァルだが、三人は魔王の力を目の当たりにしていたので、その表情は重くなる一方だった。


 こうして四人と一頭は迷宮のような地下を真っ直ぐ城目指して進んで行くのであった。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

ウエスタン風カウボーイのヴァルさんがムクリと立ち上がり

勝手についてきた!


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