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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第一章 プロローグ
3/216

3 お姫様は無双したい

ちょっと短くなってしまったので2話分繋げてみました。

 お姫様の名はリヴィア・セラ・ルジュ・レーベン。

 レーベン王家の跡継ぎにしてバルド王の一人娘である。

 髪は白く薄いピンク色のように輝き、腰に届くような緩くカールされた長髪が特徴で、頭部の両脇には短くまとめたツインテールが動くたびにピコピコと揺れるのがチャームポイントである。

 かわいらしい瞳は鮮やかな翡翠(ひすい)の中に混じるようにピンクの瞳孔(どうこう)が愛しさを醸し出し、 容姿端麗で華奢(きゃしゃ)な身体はまるで等身大のお人形さんのようであった。

 ほのかに香る桃のような匂いと容姿は、あらゆる男性の心を鷲掴(わしづか)みにしてしまう魅力を持っていた。


 しかし、今鷲掴みにされているは。



「あだだだだだ、もげ、、もげる、、もげちゃぅううう!」



 王の頭だった。



「で? 何か用なの? くだらない事だったら王冠なんて外さなくてもいいように錬金してあげるけど? 物理的に」


 20歳を迎える女性とは思えないような目の光を放ちながら、右手の指に力を込める。

 手に万力でも仕込んでるのでは? と錯覚させるようなギリギリと音を立て、時折メキッといけない音まで聞こえてくる。



 宝物庫での一件の後、蒼岩石の魔法阻害によって聴覚回復が出来ず、仕方なく王の間へと戻ってきた一行は、神官のグレイトフルなヒール力で完全復活し、ホッとした矢先にリヴィア姫が王の顔面にアイアンクローをかまして優しく尋問しているという流れである。


「あだだだだ! だ、だめっ! もっと優しくぅ! (メキッ)--ーーっあああ!」


 ダイエットを始めたとは言え、大の大人である王は身長はそれなりに高く一般人から見たら近寄りがたい体格をしているのだが、そんな王の身体が浮いて見えるのはきっと錯覚である。きっと。


「バルド王ぉぉぉぉおおおおお!」


 正義感の塊である騎士団団長のロスは王の姿を見て叫ばずにはいられない。

 が、相手がリヴィア姫な上に今アクションを起こそうものなら、自分が物理的に錬金されかねないと危惧し、動こうにも動けない状態となっていた。

 必死に手を伸ばすが、その距離は王の姿が霞んでしまうほど遠い。実際には2m程であるが、涙で霞んでいるのだと信じたい。


 そんな茶番を横目に神官はいそいそと離れた場所から魔石を通して王と姫のやり取りを覗き込んでいる。

 この神官が持っている魔石は術者が覗いているものを記録する魔法が付与されており、動画として保存できるいわばビデオカメラのような機能を持っている。

 耳を澄ますと小声で「あーもうちょっと、こう、、、苦悶(くもん)の表情がうまく撮れないのぉ」などと不満の声が聞こえてくるのは聞き違いであるとラリィは開き直る。



 いまだに王の頭を鷲掴みして離さない罪な乙女リヴィアは「あ? やっちまうぞ?」とドスの効いた低めな声で()()()語り掛けている。

 すでに王の戦意というか生気は失われ、糸の切れたマリオネットと化していた。その時。


「リヴィア姫様、お止めください! どうか、バルド王をお許しください!」


 この中でも一番近くで姫様を見守り続けてきたラリィだからこその行動。

 まさに地獄に垂れる一本の蜘蛛の糸がそこにはあった。

 青年は姫様の前で(ひざまず)き、誠心誠意(せいしんせいい)を込めて許しを()う。その表情には確かな決意を感じさせ、副団長の名に相応しい男がそこにはいた。団長? それうまいの?

 リヴィア姫もラリィの瞳の奥にある鋼の意志を感じ取ったのか


「……わかったわよ」


 遂に解放され涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった王様らしき人物が、べしゃりと音を立てながら地面に横たわる。

 リヴィア姫は「ふぅ……」と息を吐きつつ笑顔でラリィへと振り返る。

 その笑顔は歳相応の澄んだ笑顔であり、その笑顔に一瞬ラリィの呼吸が止まる。

 顔が熱い……。ラリィはそう感じ、これはまさか……。と心に秘めた想いが膨らむ。





「じゃあ選手交代ね」(ニコッ)


 顔が熱かったのはただアイアンクローされているからであった。「あばばばばば!!」とのたうち回る哀れな青年がそこにはいた。知ってる? 蜘蛛の糸って切れるんだよ?


 騎士団団長ロスは王の成れの果てに膝をついて号泣し、フェア神官はいまだに角度の調整に奮闘しているのだった。



 ______________________



「それで? 結局何しに来たのよ?」


 真っ黒なショート丈のジャケットに半袖の部分には白いラインが走っている。さらにインナーには身体のラインがはっきりわかるようなオレンジ色のシャツを着ており、外側にひざ丈くらいの真っ黒で裾のふわふわ部分がインナーに合ったオレンジ色のスカートに、内側にはやや丈の短い薄い赤色のスカートが正面からは見えるようになっており、黒のニーハイソックスとヒールというカッコ可愛い服を着た王の……娘が玉座に座っていた。


「だ、だから、、、そのぉ」


 なぜかバルド王が玉座の前で大量の汗を噴き出しながらしどろもどろになっていた。「え? 言っても大丈夫?」といった視線を後ろに傅いている臣下とその騎士たちへと向ける。

 なぜか満足げな表情の臣下とすでに満身創痍(まんしんそうい)な青年騎士、床に大量の涙のたまり池を生み出した歴戦の騎士がそこにはいた。

 王に視線を合わせることが出来ずに各々視線を逸らしている。


 誰もが発言に躊躇(ちゅうちょ)している中、リヴィア姫はその白くスラッとした足を見せながら優雅に足を組む。


「なんで黙るのよ~! 言いたいことがあるなら言いなさいよ」


 腰に手を当て、小ぶりながらも存在感のある胸を張りながら、可愛らしく頬を膨らませている姿は(はた)から見ればすごく微笑ましく、麗しい……のだが。「「「無茶言わないでくれよ!」」」全員の心の声が一致した瞬間だった。


「明日は私の誕生日なのよ? なら盛大に行うのが筋ってもんでしょ?」


 急に何を言い出すんだ? とラリィ以外の全員が思った。重いため息がラリィの口から洩れたのは気のせいである。


「だからね、私が手伝おうと思ったのよ! 内緒でね!」

「「「ん?」」」


 つまり要約すると自分の誕生日を自分が盛大にするために、宝物庫から自分の誕生日に相応しい品物がないかを見極めに行ったということだった。

 もちろんラリィは完全なるとばっちりであった。

 側近であるラリィが姫様の傍にいなければ他の人に怪しまれバレる可能性があると考えたリヴィアは、ラリィを拉致軟禁(らちなんきん)する行動に(いた)ったのだという。

 結局めぼしいモノはなかったため、目についた手ごろなペンダントを持ち出したところで扉の外が騒がしいことに気付き、収穫の悪さへの苛立ちからついでに発散させてもらったということだった。



「えっと、つまり八つ当たりというやつじゃろうか……?」

「そうよ!」(ニコッ)


 人間はその気になれば血だって目から流せるんだぜ?

 王の目から大量の血涙(けつるい)が溢れ出す。


「なぜじゃ~~~! 悪い事なんてしていないのにぃぃぃぃ!」


 大の大人が床に手を付き、その腕に顔を埋めたまま泣き散らかしていた。

 一国の王様? 娘の前では一人のパパだよん。


「して、その宝物庫から持ち出したというペンダントとはどういったものですじゃ?」


 フェア神官は床の汚いシミから視線を外しリヴィア姫に尋ねる。

 シミの元凶である王はついに泣きついている腕とは反対の手で床を叩き始める。


「コレよ?」


 すでに首にペンダントを吊るしていたようで、胸元からペンダントの宝石を見せる。



 その宝石はピンポン玉のような大きさと形をしており、ブラックダイヤモンドのように黒く透き通るような宝石であったが、なぜか中心は黒く揺らめいているようで、鈍く輝き放っており神秘的な雰囲気を漂わせている。

 宝石の周りには銀色の小さな十字架が八個あり、宝石の半分より下から螺旋状にぐるっと宝石を取り囲んでまるでアイスクリームのような形をしていた。

 宝石をずっと覗き込んでいるとまるで吸い込まれそうな錯覚を覚える不思議なペンダントであった。



「ふむ、なかなか見事な意匠ですなぁ、それにこの宝石にはとても不思議な力を感じますなぁ」


 フェア神官は初めて見る意匠の施されたペンダントを手の上で転がすように眺め、宝石を興味深そうに覗き込んでいる。

 満身創痍からやっと立ち直ったのか、ラリィもペンダントに興味がわき、神官の後ろから覗き込んでいる。

 そんな中、床に放置された置物はロス騎士団長によって静かにかつ迅速的に端っこの方へと追いやられていた。時折置物から「ワシは……悪くない……」と掠れるような声が聞こえてくるが気のせいである。


「せっかく内緒で盛り上げようと思ってたのになぁ、これじゃ意味ないじゃない」

「だ、大丈夫ですよ姫様! 姫様がこのペンダトを付けてドレスを着るだけで、皆の者は驚き拍手喝采の渦が巻き起こること間違いありません!」

「そ、そうですじゃとも! のぉ? 騎士団長殿!」

「ハッ! 間違いございません。姫様は我々の宝。決して迷惑だなんて思う輩なんぞ……」


 少し不満げといった表情のリヴィア姫をラリィがすかさずフォローを入れ、神官の見事なキラーパスで騎士団長は自ら地雷原に走り始めた。


「ふーん、迷惑なんだ?」

「「「!!!!!」」」


 前髪から覗く翡翠のような瞳と美しいピンク色の瞳孔が騎士団長ロスをロックオンする。

 示し合わせたかのようにラリィと神官が、リヴィア姫と騎士団長との射線を通す。

 その見事な動きにロスは二人を交互見ながら、突き刺さる視線に汗が大量に噴き出す。


「で? その話興味があるんだけど、当然話してくれるのよね? 王国騎士団、団、長、サ、マ」

「ハッ、こ、これはその、わ、我が忠誠は、ひ、姫様のもので、その、、、」


 先ほどまで覗いていた瞳は前髪に隠れ、代わりに目があるであろう場所からは赤い光が煌々(こうこう)と輝き、口は裂けたように吊り上がり笑っているようにさえ見える。

 いつの間にか玉座から立ち上がっていたリヴィア姫は、顔が不自然な角度で固定されたままユラユラと上半身を揺らしながら騎士団長との距離を縮めていく。

 ロスの黒い瞳に映るのは、この世の終わりの権化(ごんげ)か、地獄への直通トンネルか……。





 後に城内ではその日、この世の者が発したとは思えないような悲鳴が聞こえてくるとかこないとかで噂が流れ、城中の者に恐怖を植え付けたとか付けなかったとか……。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

引き続き読んで頂けると喜びますのでよろしくお願いいたします。


補足ですが

王はバルド・ゼラ・ルジュ・レーベン

姫はリヴィア・セラ・ルジュ・レーベン


ゼラは男性に、セラは女性に付け、ルジュは王位を表します。

なので一番前が名前でレーベンが苗字であるとお考え下さい。


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