03話魔法の鍛錬
そして、俺は7歳の誕生日を迎えていた。
筋肉はこの年にしてはついている方だと思う。
そろそろ魔力が増えていてもいいんじゃないだろうか。
不思議な力で覚醒してくれてもいいぞ。お約束だろ?こういうの
そんなことを考えながらアルベルトがとってきた肉を頬張っていた。
ーーー
あれから2週間が過ぎた昼下がりのこと。
アルベルトが俺を庭に連れ出してきた。
いつもはこの時間は狩りに行っているのだが、なぜだか今日は家にいる。
まぁ俺は毎日いるので文句は言わないが。
「おいアーク、お前、魔法が使いたいのか?」
一瞬誰のことかわからなかったが、俺はアークというらしい。
俺たちは三人暮らしだし、同年代の友達もいないものだから知る必要もなかったのだ。
「もちろんです。父さん。」
そう言うとアルベルトは一瞬きょとんとした顔をしていたが、すぐに
「わかった。今日から俺が教えてやろう。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
どうやら俺が魔法を使えるようになるのはそう遠い未来じゃないらしい。
そうして、俺の魔法の鍛錬が始まった。
ーーー
「いいかアーク。魔法っていうのは詠唱で発動させることがほとんどだ。だがな、イメージさえできていれば詠唱を簡略化したり無詠唱で発動できたりできるんだ。」
「そうなんですか。」
「例えばな、天の恵みよ、我に力を与え給え。ヒール」
そうアルベルトが唱えると、たちまち地面の草花が生い茂っていった。
「これは対象に生命力を与える魔法だ。だがこう唱えるとな、天の恵みよ、ヒール」
草花がさらに成長した。なるほど、イメージ次第で詠唱の節を短くできるのか。
「すごいですね。無詠唱もできるんですか?」
「いや、流石に無詠唱は無理だ。無詠唱で魔法が使えるものなど宮廷魔法師団でも少ないだろうな。でも魔法のイメージをしっかりできるとこんなこともできるぞ。癒しを、ヒール」
おお、もう詠唱文の面影がないな。こんなので発動するのか。
「魔法のイメージができるなら大体何でも発動する。だが、イメージが弱いと効果は落ちるし強いと効果が上がったりするから安定して使いたいなら詠唱がおすすめだな。」
「勉強になります。それで、俺はどんな鍛錬を積めば魔法が使えるようになるんですか?」
「そうだな。適性属性ってのは遺伝だったり、その人が育った環境だったりが大きく影響するもんだ。だから自分が使いたい属性を身近に感じ続けるのが手っ取り早いな。もちろん、幼少期から魔法が使える奴もいることにはいるが稀だな。何せ自分の属性がわかるまで片っ端から詠唱していかなくちゃならないんだからな。」
「なるほど...。使いたい属性か...。」
「まぁ焦って決めるようなものでもないからな。ゆっくり考えな。」
そう言ってアルベルトは森に入っていってしまった。
(使いたい属性か...やっぱり火だな。強そうだし。)
俺は早速火を起こすべく薪を拾いに森へ入った。
ーーー
俺は森に入って薪を集めていた。
だいぶ深く入ってしまったようでもう夕刻だ。
正直、帰れるかどうかわからない。泣いちゃいそうだぜ。
「だ、誰かいませんか!助けてください!」
急に女性の声がした。俺は確認のため声の方向に走った。
すると、俺の目に飛び込んできたのは石造りの建物と銀髪の女の子、その子の膝でうずくまっている金髪の女の子だった。
後ろで一つ結びをしている髪、青くて住んだ瞳、きめ細かくて白い肌、綺麗な女の子だった。
だけど、若い。若すぎる。10歳ぐらいだ。
うずくまっている子も同じくらいだろう。
ここはかなり深い森だしこんなところに女の子が二人だけでいるなんてあまりにも不自然だ。
俺が声をかけようか迷っていると、
「おい、どうした?」
アルベルトの声がした。俺は急いで身を隠す。森には入ってはいけないと常々言われていたからだ。
「クリスが魔物の毒に侵されてしまったのです!解毒剤も持っていないので手の施しようが...」
「どんな魔物だ?」
「Aランクのポイズンサーペントです..」
「うちに来なさい。解毒薬を調合してあげよう。あと、回復魔法もかけてあげよう。少し見せなさい。大いなる恵みよ、汝に癒しを。ハイヒール!」
「治癒属性上級魔法...?こんなに早く発動させるなんて......」
「その子は運んであげるから君も着いてきなさい。さぁ早く!」
そう言って、アルベルトと女の子は家の方に走っていった。