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01話 もしかして...?

 目が覚めると、そこは森だった。


 いや、森なのかもわからない。

 動けないからだ。

 声も上手く発することが出来ない。

 おぇーだとかうーだとか訳の分からない言葉しか出てこない。

 一体俺はどうしてしまったんだろう。

 こんな障害は無かったはずだぞ。俺は。


 しかも微かに揺れを感じる。

 どうやら森の中を歩いているみたいだ。

 いや、正確には誰かに運ばれていると言った方が正しいのだろうか。

 多分、病院に運ばれているんだろう。重症だったみたいだし。

 だけどこの調子じゃあ余生には期待できそうにもないな。

 何せ俺は声も発せず、まともに腕も上げられない上に身内がいない一文無しだ。

 こんなの生き地獄じゃあないか。あの時死んでしまった方がまだマシだったな。

 ほんと不幸ばっかだよ。



 そんなことを考えていると、自分を抱えているおっさんが目に映った。誰だこいつ。

 この歳になって知らないおっさんにお姫様抱っこされるとか気持ち悪いしそんな趣味はこれっぽっちもないぞ。性癖は普通だよ普通。多分。

 それにしてもこのおっさんやけに貫禄があるな。

 筋肉モリモリのマッチョで白い髭を生やしている人なんてこのご時世そうそういるもんじゃない。

 しかも背中に斧まで背負ってやがる。一体どこの誰なんだよ。

 まぁ病院に連れてってくれるってんならあんま文句も言うもんじゃないか。


 「ったく俺にこの坊主を育てろってか。冗談じゃねぇぞ。」


 おっさんが喋った。なになに?育てる?おいおい何言ってんだお前は。俺は病院に連れてかれるんだろ?

 まぁ、身寄りのない俺のことを育ててくれるならそれはそれでありがたいのだが。

 にしてももっと可愛いお姉さんとかにして欲しかったもんだなほんと。


 なんかこれから生活費を稼ぐためにバイトしなくていいって思うとやけに素直になるな。

 そうそう、俺なんて真面目な優等生なんかじゃないんだ元々。自分のことが一番優先なんだよ。

 だってそうだろ?誰しもそんなもんなんだよ結局な。


 「おいこら坊主、今日からここで生活するんだ。俺の言うことは絶対だからな。」


 そう言って俺の目の前に映ったものは木造建築の家だった。

 一階しかなさそうだし何より電気もガスも水道もなさそうだ。

 すぐそばに斧で割られたのであろう木が大量に積まれている。

 何だこの文明レベルは。こんなとこに住むなんて冗談じゃない。流石の俺でも正気じゃいられない。

 俺は必死に抵抗した。


 「あーー。うーー。」


 だけど俺の口から出てきたのは鳴き声みたいな声だった。

 そうか、俺は言葉を発せない体になってしまったんだ。

 てことは俺はこのまま何の抵抗もできずにこのままここで暮らす羽目になるのか?ありえない。

 絶対に嫌だ。俺は何とか必死に体を動かして暴れた。


 「あっこら暴れるんじゃない!ばか!おい!!」


 おっさんがなんか言っているがそんなことには構っていられない。

 俺は絶対に逃げてみせる。


 「あっ!落ちる!」


 瞬間、俺と地面の距離が一瞬にして縮んだ。いや、落ちたのか。着地点は水溜りだ。

 濡れはするが頭から落っこっても多少痛いだけだろう。

 その時、信じられないものが目に映った。それは、金髪の赤ん坊だ。

 俺は黒髪の純粋な日本人だし、そもそも歳は17歳だ。こんなに若いはずがない。

 俺が唖然としていると


 「ったくだから言わんこっちゃない。風呂に入れなきゃなんねぇじゃねぇか。」


 俺は何が何だかわからないまま風呂に連行されていくのであった。

 風呂に連行されていってわかったが、どうやら俺は本当に赤ん坊になってしまったらしい。

 手足も短く顔もまんまるだ。


 このおっさんはこっちの世界での俺の親父に該当するのかもしれないが、それにしては歳増な気もする。

 いや、人を見た目で判断するのはいかんね。失敬失敬。


 おっさんが俺のことを風呂に入れてくれた時に気づいたが、この家はあまりに狭い。

 こんなところは田舎者の中でもかなり貧乏じゃないと住まないだろう。

 どうやら俺はこっちでも貧乏らしい。


 風呂から上げられると部屋に女の人がいた。

 かなりの美人さんだ。金髪でしなやかな髪に何だかいい匂いもする。

 こんな人が俺の母親だなんて感激だ。


 生前は女の人と縁がなかったからこの機会に堪能したいと思ったが、彼女の母乳を吸っても何も感じなかった。ていうか、味薄いしぬるくてまずい。


 こんなの飲んでらんないよまったく。



ーーー



 そんな感じで2週間の月日が流れた。


 俺はこのニート生活を満喫しているし、特に不自由もない。


 ここ最近になってわかったのだが、この世界は剣と魔法の世界らしい。


 と言うのも、おっさんが所有してる本にその類がたくさんあるからだ。

 ライトノベルみたいな物ではなく、魔法の術式など妙に具体的な表紙だったからおっさんの厨二病が書いたものというわけでもないだろう。


 本には魔法のことしかなさそうだったが、おっさんが狩りから帰ってくる時はいつも剣を背中に背負っていることから、多分剣も地球とは比べ物にならない威力が出るんだろう。


 おっさんがいつも狩ってくる猪みたいなヤツが解体されるのを見ながら、今日も母乳を飲む。



ーーー



 さらに一ヶ月が過ぎた。


 おっさんの名前はアルベルトというらしい。

 家にあった手紙の宛先にアルベルトと書いてあったからだ。

 これが妙に気品のある字と装飾だったのでこのおっさんは割と大物なのかもしれない。

 まぁ、これがこの世界のスタンダードなのかもしれないが。


 あと、この前おっさんとお姉さんが出払っている間に世界地図らしき本を読んでみたが、どうやらこの世界は本当に地球と作りが異なるらしい。

 魔大陸だのいかにも危険そうな大陸から、亜人の森とかいう夢の溢れるところまでさまざまだった。

 この後本を元に戻せなくておっさんに見つかったのは言うまでもない。だって身長小さいんだもの。





 ここは剣と魔法の世界だ。

 地球にいた頃は夢見ていたが、まさか現実になるなんて...何の取り柄も無かった俺でも、この世界でなら強くなれるかもしれない。

 いや、絶対に強くなってやる。

 絶対に。

2日に一回のペースで投稿していきたいとおもいます!

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