〜転生〜
俺はただの自称進学校に通う高校生、上原慎也だ。
強いて違う点を挙げるとするならば、11歳の時に親が離婚して母さんが女手一つで育ててくれた事だろうか。あと、アニメが趣味のいわゆるオタクってことぐらいだ。友達は少ないけれど何一つ不自由なく育ててくれた母さんには感謝している。そのせいか母は体調を崩し、一年近く入院している。正直大学にはお金がなくて行けそうに無いが、母さんの治療費を払うためにも高校を卒業したら働こうと思う。
そんなことを考えていたら、
「上原ー!カラオケいこーぜ!!」
友達の幸助が遊びに誘ってきやがった。放課後はバイトが入ってるっていつも言ってるだろうに。
「カラオケまでは一緒に帰ってやるよ。」
「ったくいつもブレねぇなぁお前は。少しは息抜きしたらどうなんだ?」
「そんなことやってる暇ないんだよ。金ないし。」
そう言い合うのがいつもの日課だ。今日も何一つ変わり映えのしない日々。そう思っていた。
トゥルルル。電話だ。俺の電話番号を知ってる奴なんかそうそういない。このご時世に安いからって理由でガラケーだからだ。知ってるのは精々母親と幸助ぐらいなものだ。
「ん?なんだこの番号?」
見た事の無い番号だった。不穏な空気だ。嫌な予感がする。
「もしもし、上原ですが、どちら様でしょうか?」
そう言うと、
「はい、こちらは都立病院です。上原直美様のご親族の方にお間違いはないでしょうか?」
動悸が激しくなっていくのを感じた。
「ただ今、上原直美様はお亡くなりになられました。」
「は?え?嘘だろ、、、?」
うまく呼吸ができない。めまいがする。隣で幸助が何か言ってるが、うまく聞き取れない。
どう言うことだ。母さんが死んだ、、、?足がふらつく。うまく立てない。意識が保てない。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。死ぬわけがない。これは悪い夢なんだ。もし母さんが死んだら、俺は一人だ。
何のために生きればいいんだ。生きる意味がない。こんなクソみたいな世界。俺が何をしたっていうんだ。人一倍努力してきたつもりだ。なのになんで、、、、もう、死にたい。
絶望に臥している中、微かに悲鳴が聞こえる。幸助がなんか叫んでやがる。騒音が耳に入り込む。うっさいなくそが。
突如、全身に衝撃。痛い。全身の皮膚が焼けたように痛みが走る。なんだこれ、、?
幸助が泣いている。あったかい。なぜか左半分が見えないが、心地がいい。俺は今地面に倒れ込んでいるようだ。自分のそばで幸助が泣きじゃくっている。周りが騒がしい。おっさんがトラックから降りて俺の方に駆け寄ってくる。トラックの前方は血まみれだった。
???、、、なんだあれ?事故が起きたようだ。少し起き上がってみる。しかし、立てない。腰から下の感覚がない。、、、え?何で立てないんだ?そう思って自分の下半身に目を向けると、無かった。本来そこにあるべきものがなかった。足だ。足がない。
そうして意識が覚醒する。俺は自分の血に浸かっていた。ああ、これは助からない。俺は死ぬというのにひどく冷静だった。ごめんな、幸助、母さん。泣かないでくれよ。最後くらい笑ってくれよ、、。めまいがひどい。俺以外の全てが回っているみたいだ。幸助の泣きじゃくる声が徐々に聴こえなってくる。
ああ、本当に死ぬのか。俺。やり残したことなんてごまんとある。可愛い彼女とデートしたり、キスもしたかった。嫌だ。死にたくない。まだ、生きてたい。やっぱり本当に死ぬなんて嫌だ。
「あなたには二つの選択肢があります。ここで死んでこの世界で新たな人生を0からするか、記憶を引き継いで異世界で転生するか。あなたはどちらを選びますか?」
ひどく無機質な声だ。何言ってるんだ。俺はいよよだめらしい。幻聴まで聞こえてくるなんて。
「幻聴ではありませんよ。あなたには選択肢があるのです。」
「はっ、、、記憶があった方がいいに決まってんだろうが、、くそ、、、」
「では、そのように致します。それでは、新たな人生に向けて頑張ってください。上原慎也さん。」
何なんだあの幻聴は。人が死ぬ時にはいつもあんなクソみたいなもんが聞こえんのか?もっと色々あんだろ、今までの思い出とかよ。
そう思いながら、意識が暗転した。