曼珠沙華
短いです。そして、大方台詞です。
拙いですが、好きなジャンルで書いてみました。
彼に
好きだといった。愛してるといった。その夜、私の部屋に彼は訪れた。
彼に乞われて唇を重ねると、何かの花の香りが強く残った。
そうして、二人で少し過ごした後、何故か体が重くなって、彼に身を預けた。
彼の腕の中で、暗くなる視界を不思議に思っていると、何かが口から垂れた。
気だるい体に鞭打って手で拭うと、それは、赤黒い液体だった。
彼の顔を仰ぐと、いつものように笑みが返ってきた。
僕は、幸せなまま君とずっとに居たいから、君が僕から離れる前に、僕だけのモノにしてしまわないと。そうだろう。だってぼくがこわいといってにげてしまうだろう。あんしんして。ぼくもすぐそちらにいくから。ぼくがきみをみつけてあげる。だいじょうぶ、きみをみうしなうなんてことはけしてないから。ほら。めからみずがたれているよ。かなしいの。しんぱいしないでせかいがこわいならぼくがそのめをあずかっておいてあげる。だから、もうすこしだけまっていて。
彼は壊れた詩人だった。
感情を言葉に翻訳し続ける人形みたい。そして、
狂ってる。それが私の感想。
ぼくはきみのなにかのはじめてをもらうとしたら、きみのしをえらぼうとずっとおもっていたんだ。だって。きみがしんでしまえばだれもそれをうわがきはできない。きみのなかからぼくはきえない。どんなかたちでも、きみのおくそこにふかく、ふかくのこっていたいんだ。だから、ぼくのことをあいしているなら、このわがままをうけいれて。
しょうがないなあ。
愛しているから、許すよ。
閉幕の合図はいつものやりとりで。
そうして体が焼けるように痛んで。
ごぽっ
口から鉄臭い赤の液体が流れてきて、
私の視界は暗転した。
どうしてかれはこないの。
わたしをみつけるといった。
すぐおいつくといった。
じぶんでわたしをたおっておいて、しおれてしまったといってはすてるの。
それなら、このくらいみぞからぬけだして、わたしのそこにきざまれたかれとともにわたしのいちぶをけずってしまいたい。
そうしてわすれられたなら、かれはじぶんのおこないをくいて、わたしのところへきてくれる。そうでしょう。
そうでないと、かれによって幕をおろされたわたしのぶたいはもう取り返しがつかないのに、どうやってこれをせいさんしようというの。
ばか、しんじゃえ。そうして、わたしのところへ。
はやく。
あー殺したい。殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい。
どうしてそんなに君は可愛いの?
どうしてそんなに君は優しいの?
どうしてそんなに君は奇麗なの?
どうしてこんなに惹かれるんだろう?
そうして、早く僕のものにして、僕だけのモノに。
好き、愛してる。
その言葉を聞いた後、少しは正気を保っていられたんだ。
だけど、あの男が君を攫おうとしていると聞いたから。
先を越されたくない。その一心で、怖がる君を僕のものにした。
前に言ったことがあったかもね。
君に何かをプレゼントしてもらうんだとしたら。
それは、初めてのキスでも体の関係でもない。
君を殺す権利が欲しい。
君の「死」の、初体験はぜひ僕に任せてよ。
怖くない。大丈夫。すぐ、僕も向かうよ。
殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい
そう。殺してしまえば僕の君を奪おうとする者たちも手出しはできないから。
もう手遅れだと知った彼らの顔ときたら、君も可愛らしい笑い声を立てたことだろう。
本当に、ばかなやつら。
僕が狂ってるだって、可笑しなことを言うやつらだ。
そんなの、知っているに決まってる。
生まれた、そう5年後には、未だ見ぬ君へのこの執着を抱いていて。
この気持ちは異常なんだと、恐れられるものなんだと知った。
思い出にはない、未だ見ぬ君は、それでも色褪せず残っているよ。
彼らを片付けなくちゃ。
そうだ、すべてが終わったら。冷たい君の寝床へ、毎晩訪れよう。
君の好きな白いバラと、僕の好きな赤白黄の曼珠沙華をもって。
だから、それまでの辛抱だよ。