プログラム7
とても気分が良い私、魔王カースだ!聞きたいか?何故こんなに嬉しそうなのか。聞きたくないと言っても話させてもらう!自慢したいからな!あれはこの前の戦いでプレイヤー達が、話していた内容が私に幸せをもたらしたのだ。その時のことを話そう!
クソ!こいつら攻撃しても全然効いてないぞ?どうなっている。何故一方的に攻撃を受けなきゃいけないのだ!
「今日もマールちゃんとの戦闘楽しかったわ」
「それな。でもその後のコイツとの戦闘が面倒だわ」
「たしかにな……。でもよ? こいつにファンがいるの知ってるか?」
「はぁ? カスにファン? 嘘だろ」
「本当、本当。なんかファンクラブできてるし」
「カスにファンとか……。マールちゃんだろ普通」
「いや、マールちゃんもあるけど?」
「それは納得できる」
こいつらはなんの話をしているんだ?ファンってなんだ?というよりも、こいつら私をカスと言ったな!どいつもこいつも……。バカにしやがって。しかし、私には何もできない。悔しい……。
「俺もマールちゃんのファンクラブに入ろうかな?」
「俺はもうシアのファンクラブに入ってるから無理だな」
「あの美人魔王か。ん? あのクラブ古くね?」
「俺は新人レベルだけど、クラブはたしかに古いな。あ、もういい加減に倒そうぜ」
「忘れてた。ダメ入らないから永遠に雑談するとこだった」
クラブやらなんやら意味のわからんことを!このふざけたプレイヤー達め!
俺は怒って倒そうとしたが、普通に倒された。おのれ、やっぱり勝てない。それに意味不明な会話をずっとしながら、てきとうに勝負しやがって。ファンだっけか?なんなんだそれは。他にもクラブがあるとか言っていて、私のクラブがあると。マールのもあるらしいが、いったいどんなものだ?私達になにをするのか……。そうか、1人はマールのクラブに入ろうとしていたな。そう考えると、強い者と戦いたいクラブということか!マールは強い。さらに、もう1人いた奴は私以外の魔王とやらのクラブに入っている。そう、このファンとかクラブは自分が強いと認めた者達の集いなのか!そして、ここで大切なのは私のクラブやファンもあることだ!えーー。照れるな、私のことを強いと思ってくれてるなんてそんなちゃんとしたプレイヤー達が居たなんてな。
こんな感じで現在の私は何回倒されても気にならないくらいに、機嫌が良くて幸せである。凄いだろう?多くのプレイヤー達が私にカスというふざけた呼び名をするなか、しっかりと私を魔王として強者と見ているプレイヤー達が居たのだ。
ギィ。
はいはい。何人目だっけかな今日は?頑張って戦うか!なんて言っても、私も強者だからな。
「居たよ! あの奥に居るのが魔王カースだよ」
「へぇ、かっこいい鎧だな」
「そうでしょう? あ、マール戦があるんだった」
「何だこの美人は!」
「この人は魔王カースの側近マールっていうの。結構な人気だよ」
「そりゃこんな美人ならな。俺もこのマールっての好きだわ」
「ちょっと、今日はカースの魅力を教えに来たんだからさっさと倒しちゃうからね」
「俺はこっちが気に入ったんだけどなぁ」
な、なんだ?この2人は?戦いに来たと思ったが、今私の魅力と言ったか?何を言っているんだ?
「マール戦終了! ほら、凄いでしょこの自分の側近を自分の手で葬る感じ。これこそ魔王って雰囲気」
「えげつねぇ。あんな一生懸命に戦ってたのに」
「でもね、魔王カース自体は弱いんだよ」
「は?」
「戦えばわかるよ! いくよ」
なんだこの女プレイヤーは。褒めたり貶したり……。意味がわからん。そして、やはり強いな。男プレイヤーの方はそうでもないか?こんな時、自由に動けたら男プレイヤーから狙えたのだがな。何故こんなランダムに攻撃していく体なのか。
「もうそろそろ終わりだよ」
「さっきのより弱いじゃねぇかよ。こんなんが魔王って嘘だろ」
「わかってないなぁ。この雰囲気と最初のなんか弱い感じがいいんじゃん! ここが好きで私もファンになったんだよ?」
は?今なんて言った?
「弱いのがいい感じね……。わからん。雰囲気はたしかに魔王感あるんだけどな。鎧姿も好きだし。でもここまで弱いと好きになれないな。さっきの側近の方が好きだわ」
「やっぱり男はそっちにいくか……。残念魔王いいと思うんだけどなぁ」
その言葉とともに私は一撃を受けてリセットされた。改めて考えようか。ファンとは強さを認めたんじゃなくて、ただ見た目などを好きになった者か?ならば、クラブはその集まりなのだから……。そして、私が残念魔王と呼ばれていたから……。
考えれば考えるだけ悲しくなり、もしも自由に体を動かせたら私は……。泣いていただろう。