プログラム48
「魔王様ってなんで私って言うんですか?」
「おかしいか?」
「おかしいって言うよりも、なんかカッコよくないんですよ」
「カッコよくない? 私と使うだけで?」
「偏見になるのかもしれません。しかし、はっきりと言わせてもらいますとなんか圧がない」
「は?」
「強くもない魔王様が普通の声で私って言っているとなんか……。なんかですね、なんでわからないんですか?」
「わかるか!」
こいつとうとう一人称にケチつけてきやがったぞ。正気を疑っても良いよな?なんで一人称に文句をつけてんだよ、そんなに嫌いなのか私が。
「強かったらなぁ。私ってその声にも威厳? そんなのが出るんでしょうね。でも無いんだもんなぁ。あ! だからこんなに話しやすいんですかね?」
「お前、自分の今言った事もう一回確認してみ? 明らか上司に言う言葉じゃないからね? もう暴言の嵐だよ? これで動ける状態だったら拳骨もんだよ?」
「拳骨って……。そういうところですよ、怖くないところ。普通はこういう時は動けたらお前を消滅させてやるのに! くらい言わないと。言葉からもうなんか弱々しいですよ」
「あーー。どうしたらこの生意気な配下は黙るんだろ」
「と、に、か、く。一人称を変えてみましょう! そしたら少しは威厳のある魔王として見えるかもしれませんし」
やっぱり見下していたんかい……。ハァ。
「どんな一人称にしろと?」
「そうですね、やっぱり俺とか?」
「俺か。俺は魔王カース! どうだ?」
「なんか安っぽい感じが、違うのにしましょう」
「安っぽいって……」
「我ってどうですか? 偉そうな感じしませんか?」
「よし。我は」
「あーー。無し無し。そういえば魔王様は弱かったんですよ、なのに我とか使われても身の程を知れって感じですよね」
「お前は改めて自分の立場を思い出して、身の振り方を考えろって感じだな」
未来を閉ざしてやろうかな?こいつに嫌がらせするプレイヤー来ないかな?もう泣きまくっていたほうが私の精神的には良いよ。
「こんなに上司思いの配下にそんな事言いますか?」
「こんなに上司の精神にダメージを与える配下だってそろそろ自覚しろ?」
「そんな事よりも、次は僕……は無いですし。自分は余計に違和感出そう。難しい」
「待て待て、僕ってありなんじゃないか?」
「正気ですか? その姿で僕って、キモ」
「僕って言い方を工夫すれば良いだろうが! 純粋そうではなく、こう悪い感じで僕って言えば」
「ならやってみてください」
「……僕ぅは、魔王カースだぁ」
「……」
「無言はやめろ。何か言え」
「何してるんですか」
「お前が始めた事だろう!」
「いや、僕案件に関しては違うって言いましたよ? なのに」
「すみませんね! なんか変な感じで!」
「いえ変な感じじゃなくて、これは吐き気です」
「そこまで言うか!」
「なんか私というのがなんだかんだで合っているのかもしれませんね」
「これまでの時間は何だったのだ」
「弱くて、情けなくて、なんかもうダメダメな魔王様には一般的な一人称である私が無難なんですかね」
「私は弱いだけだ! しかも、自由に動けなくて弱いだけ。情けなくもなければ、ダメでもない!」
私の怒号が部屋いっぱいに鳴り響く。
もうここ最近冷静でクールな魔王カースってイメージはなくなってしまった気がするよ、このマールのせいで。




