プログラム1
どうも、私は魔王カースだ。いいか?伸ばし棒を抜くなよ?カースだ。決っして、カスなんかでは無い。
いきなりだが、私には悩みがあるのだ。何?どうせ、勇者の事だろうだと?イヤイヤ、たしかにこの世界にも居る設定になっているがそんな事はどうでも良い。じゃあ、実は元は人間で魔王に憑依してしまっただろだと?なんだその空想物語は?私はちゃんと最初から魔王だ。むしろ、その事で悩んでる一因でもあるな。何?さっさと教えろと。わかった、言おう。この世界はな……。ナントカという、ゲームと呼ばれる世界なんだ!なんだって?そしたらお前はプレイヤーなんだろ?って。それが違うんだ。言っただろ、私は最初から魔王だと。詳しく話そう。
私はプログラムされた存在の魔王だ。本来、ただ毎回来るプレイヤー達を勇者として対応し、迎え、戦うように設定されている。この戦いにもし私が勝てば、プレイヤーは目の前から消える。そして私は迎え入れる前の状態に戻される。逆に私が負けた場合、私は一旦消える。しかし、少ししたら定位置に何事も無かったように戻される。そう、私は勝とうが負けようが必ず同じ場所に生き返り、次のプレイヤーという勇者を待つようにプログラムされているらしい。これは戦ったプレイヤーが話していたのを聞いたから間違いない。虚しい役目だな、私は。
では何故、私がこんな事を考えることができるのか……。それは、原因不明のバグというもののせいだ。ある日の事、その日も勝ったり負けたりを繰り返していた日だった。そんな時メンテナンスという、なんかこの世界を正常にする行為らしい?で私は一旦データ改良のため、消えて無くなっていた。おそらく順調に再プログラムをされていたのだろう。しかし問題は起こった。そう、復活した私に意識があるのだ。最初の頃は戸惑った。なんせ、意識はあるのだが体は自由に動かせない。話そうと思った事を口にできない。なんだ!これは!と本気で戸惑った。
その時の状況を教えよう。目が覚めたら私は座っていた。いつもの椅子にだ。その時に動こうとした……。
ん?少し座り心地が悪いな
と思い座り直そうと動こうとしたが動けなかった。
何故体が動かん……。ん?何故私はこんな事を考えているのだ?アレ?アレ?
その時扉の向こうから声が聞こてきた。2人組だな。騒がしい。
「ここに例の魔王が居るの?」
「そうそう、お前はまだ初期の装備だから後ろにいろよ。俺が倒すから」
え?え?ちょっと待て。なんだこれは?
扉が開き2人組のプレイヤーが入り、閉まる。
「よく来たな、勇者よ」
(ちょっと待て、こいつら勇者か?この前私が戦ったのは?)
「テンプレだなぁ、本当にこの台詞聞き飽きたわ」
「そうなんだ」
「この魔王カースを倒す事ができるか!」
(え?聞き飽きた?どういう事だ?)
「とりあえず、くらえ! ホーリーアロー」
「グッ、今度はこちらの番だな。ダークフレア」
(待て待て待て!何故私は避けないんだ!)
「はい、回避余裕っと。ダブルスライス」
「ガッ、おのれ。くらえ、ダークホール」
(私の体よ!動いてくれ!このままでは死んでしまうぞ!)
「あ、ヤベミスった。視界が見えなくなった……面倒いな、もういいや終わらそ。はい、レーザーボム」
「こ、この私がぁ! 私は何度でも蘇る……。覚えてろぉぉぉ!」
(うわぁ、やられたじゃん!なんで避けないの俺!)
目が覚めると、椅子に座っていた。勇者は居なかった。
あれ?なんで?さっき私は死んだ……
扉の開く音がする。なんだ?誰が来たんだ?
「ほら、復活した。今度はお前やってみろよ? 装備もあれから整ったしよ」
「うん、頑張ってみるよ」
あの2人はこの前の!
「よく来たな、勇者よ」
(私は何を言っているんだ?)
「ほらな? また言う」
「本当だね」
「こいつ、最初のBOSSで弱いんだよ。でも経験値稼ぎには良い相手なんだ。素材も良いのドロップするし」
「そうなんだ」
「この魔王カースを倒す事ができるか!」
(弱い?経験値稼ぎ?最初のBOSS?ドロップ?)
「ついた渾名がカースから取って、カス。笑えるだろ!」
「酷い渾名だなぁ、とりあえずスラッシュ」
「グハ! ならば、ダークニードル」
(ちょっと待て、私がカスだと!?)
「しかも、こいつ固定砲台のBOSSだからこっちが回避してれば余裕で倒せんの」
「そ、う、なんだ! ふぅ、危なかった……。ホーリージャベリン」
「ウッ、こちらからも!ダークホール」
(固定砲台?なんだそれは)
「その技は気をつけろよ、視界を防ぐっていう面倒な技だから」
「はーい、よっと! はい、はい、レザボムレザボム」
「こ、この私がぁ! 私は何度でも蘇る……。覚えてろぉぉぉ!」
(また死ぬのか……。なんなのだ、本当に)
それからまた椅子に座っており、気が狂いそうになった。その後もプレイヤーが何人も来て色んな話を聞き、私は自分の存在を知った。
さて、ここで整理しよう。私はこのゲームという世界で最初のBOSSと呼ばれる存在。そして、その中で弱い……。とても認めたくないがな。魔王カースなのにカスと呼ばれてる悲しさ。自由にできないこの体。プログラムというものに私は逆らえない。さぁ、私はこれからどうしたら良いのか?これが悩みであった。
数日が経過し、私は思った。どうせ私はこのままなのだ。もしかしたらいつの日か自由に動ける日が来るかもしれない。ならば、プレイヤー達をよく見ておこう。そして、私が自由になった時には復讐してやる!
そして、私はカスではない、魔王カースであると大声で言ってやるのだ!あ、プレイヤーが来たな。また、同じ台詞を言うのか……。自由になったらなんて言おうかな。それも考えておかなければ。
私はプログラムに勝ってみせる!