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緊急八大主町会議へ【前編】


「では、そろそろ行きましょうか」

「あ、あちらがイヅル様をお迎えする準備を整え終えているか、確認しますので……もう少々お待ち頂けますか」

「気にしなくていいんですけどね?」

「人間側……いえ、『神殿』にはそうもいかないのです」

「しかし、色々決めるのなら早い方がいいでしょう」

「それはそうなのですが」


 不安は残るものの、タニアがやる気満々なのでタニアの事は師匠に預ける事にした。

 不安は残るが。

 不安しかないが。

 というか不安で仕方ない。


「……八雲さん、ライズはタニアが心配で仕方ない様子。本当に、本当に無茶させないと約束してください」

「大丈夫じゃて。飲まず食わずで人間が生命維持出来るのは三日。なにも食わずで水があれば一週間じゃろ?」

「そうじゃないです!? そうじゃないですよ!?」

「そういうところですよ!?」


 あとタニアは子どもなので!

 割と食いしん坊なので、飲食をさせない系の修行は本当にやめて頂きたい。

 不安が頂点に達したので、タニアと生活していく上での注意点を紙にまとめて提出する事にした。

 事務仕事は『タージェ』の騎士団にいた頃、やっていたので最低限出来るぞ。


「うむむ……口頭で注意しても絶対儂が忘れると踏んで紙に書いておくとは……やりおる……」

「ではそろそろ行きましょうか、ライズ」

「はい、イヅル様。……では、タニア……俺はもう行く。会議が終わったらセレーナと一度様子を見に来るから、それまで頑張るんだぞ。辛くなったら魔王に俺を呼びに来るよう頼みなさい」

「うっ!」

『おい、我を使い魔みたいに使おうとするな』


 心配で堪らないが、イヅル様と共に泉議会室(ドル・アトル)に向かう事にした。

 この会議で、なにかが変わればいいのだが……。


「古龍イヅル様をお連れしました」


 真っ先に『神殿』に向かうと、神官たちに即会議室へと連れて行かれた。

 円卓の周りには八つの町の長たちが勢揃い。

 中央には神殿長。

 そして、横の観覧席にセレーナと一人の少女が座っていた。

 少し意外だが、召喚されたのはまた少女か……。


「ライズ様もこちらへ」

「いえ、俺はセレーナの隣に座りたいので」

「あ、ハイ」


 神官に円卓の席へ促されたがお断りした。

 そして観覧席にいたセレーナに近づくと、にこりと微笑まれる。ああ、癒し。

 しかし、すぐにタニアを師匠のところへ預けてきた事を思い出して胃痛。


「あれ、タニアは?」


 速攻!?

 ……軽い目眩を感じる。


「いや、その……ひとまず師匠のところへ預けてきた。これから回らなければならないのは推奨レベルの高いところも多いし」

「そう……。師匠のところなら安全だものね」


 安全、だろうか……?

 修行さえなければ、確かに師匠の側以上に安全な場所はこの世にないだろうな……。


「あ、それから……決闘の再放映観たわ。すっごくかっこよかった……」

「っ! ……そ、そうか……セレーナにそう言ってもらえると嬉しい。少々手こずってしまったけれど……」

「そうなの? 見せ場をちゃんと盛り上げてるのだと思ったけど……あなたにそんな事を言わせるなんて、ヨルドってばそんなに強くなってたのね……?」


 いや、あれ半分くらいセレーナの『封印の拳』のせいだ。

 言わないけどな、そんな事言うのはカッコ悪いから。


「ところで、そちらの少女が……?」

「あ……」

「ええ、樫宮愛夏かしみやあいか様。聖剣に選ばれた、勇者様よ。愛夏様、こちらはライズ・イース。私の婚約者で『剣聖』の称号を持つ魔法騎士です」

「は、初めまして。樫宮愛夏と申します」

「初めまして、アイカ様。ライズ・イースと申します」


 今回の勇者は出会い頭に抱き着いてきたり、わざとらしい上目遣いで媚びてきたり、猫撫で声でくねくねしたりしないんだな。

 もしかして、乙女ゲーム『アクリファリア・シエルド』の事は知らないのだろうか?

 セレーナを見ると、にこりと微笑む。

 可愛いが、どういう意味の笑顔だろう?

 ただ可愛く笑っただけなら、ただの俺得なのだが。


「勇者殿は今後どうするのかは決まったのか?」

「ええ、私たちの旅は今の勇者様には危険だから、ロニ様やサカズキ様、ヨルド様とともにまずはレベル上げを頑張って頂く事になっているわ。あと、例の聖魔法書をお渡ししたから……回復役も大丈夫だと思う」

「! ああ、あの聖魔法書か……」


 回復魔法士ルクニスを仲間にするアイテム、だったな。

 ふむ、確かに回復魔法士が仲間になれば、格段にレベリングはしやすくなるだろう。

 レベリング……修行…………あ、いっそタニアを勇者殿に預けた方が安全なのでは?


「では、会議を始めよう。議題は多嵐(デッド・タイフーン)について。コレに関して、まず古龍イヅル様よりお話を頂きたい」


 そう、神殿長が告げる。

 セレーナがハッとして「始まったわね」と顔を円卓会議場へ向けた。

 イヅル様が俺に教えてくれた、「地核の魔力量が大幅に変化して増幅している」事。

 それにより起こるであろう、災害の可能性を長たちに伝えてくれる。

 人間には感じ取れないが、人間に感じ取れるようになったらそれこそその災害がいつ起きてもおかしくない段階。

 そしてそれを指摘すると『神殿』は「そのような『神託』がない」とはっきり断言した。

 これには俺とセレーナも顔を見合わせる。

『神殿』に『神託』が、なかった。


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