勘違いの好意ほど面倒なものはない
誤字脱字のご指摘、ありがとうございます。
「良かったら今度の休みに一緒に出掛けないかい?」
「一番高いランチをおごるから一緒にたべないか」
嫌がらせの一環でヤローどもから、声をかけられるのが多くなった。
そんなことをしてくるのは、イザベラの信奉者どもだ。
王子に俺が近づかないようにすればいいと、自分に出来そうなことを彼らはやっているわけで――。
イザベラの取り巻きたちは、ある者は自分を餌に、またある者は使えそうな駒を唆してとか、とにかくまあ、シャーロットを(恋に)落とせと言うわけだ。
王妃候補にすらならないと考える相手でも、いられると邪魔なのだ。万が一を考えて消しておきたいらしい。
鳥肌は立って寒気がするが、クラスメイトも追い返すのを手伝ってくれるので比較的面倒にはなっていない。
なんでも、言い寄られた初日、あくびによって潤んだ瞳がどうにも怖がっているように見えたらしく、庇護欲が掻き立てられたとか。
そう考えるとこの容姿も悪くはない。こんな時には役に立つ。
おかげでクラスメイトと仲良くなったので、ありがたいのはありがたいが。
ただ、それで一定数は減ったものの幾人かは残っている。
餌にひどく釣られた奴とひどく自分がモテると思っている奴。
前者は別の餌を現在用意中で、ご令嬢に本気で恋をしていなければ、時間をかければ片付く。
問題なのは後者の方だ。ナルシストも度を越すと迷惑にしかならない。
今、俺がやるべきことはそのナルシストの頭に眼中にないと理解させることだ。
手を貸してくれるクラスメイトも、こいつにだけは諦めなのか放置しているので、俺が自分で対処するしかない。
ジョルジュ・ペテウス
うちと同じ侯爵家の次男で、学年は一つ上の二年生、同じ武に秀でた家なので他のやつらと比べると交流はある。実力は申し分なく、鍛錬時は真面目だがそれ以外のときの性格があれなので鬱陶しがられている。
数少ない友人の1人ではあるが、この状態の扱い方は知らない。まあ、ここまでやるのは何か思惑があるんだろうけど。
意外と気の利くやつだし。
「シャーロット嬢、今日も美しいね」
風なんかふいていないのに、なぜか靡く金の髪は王子よりわずかに彩度が低く、緑の瞳はカナブンのごとく輝きを放っている。
「ジョルジュ様。待ち伏せされるのはご迷惑だと先日申したはずですが」
しっかりと言い聞かせたはずなんだが、理解してないのか、今日も教室の前で待ち構えていた。
「照れ隠しの怒った顔も魅力的だ」
こいつのおかげで付きまとう人間がさらに減ったのはたしかだが、ジョルジュらしくないというかなんというか。
どうしたものかと考えている間も流し目を送ってくる。
いい案がすぐに浮かぶわけもなく、ひとまず今日も後回しにすることに決める。
今日はこの後、知り合いに会いに行く予定があるので、こいつに時間を割く余裕はないのだ。
普段はそこまでしつこくないジョルジュです。