アリア
出会った頃のアリアはソフィア皇女ほどではないにしろ、大人しい子だった。
一般人、素人より強くと言っても武術の家柄からすれば劣等生で、自身の才能のなさが控えめな性格をつくっていた。
知り合った頃のアリアはそのせいか弱い自分がクレヴァン家に嫁ぐことへなったことを会う度によく俺たち家族に謝っていた。
王家をお守りする家にみっともない血を入れるなんてと。
父上も母上も才能なんて気にしちゃいなかったし、俺もロッドはそんなことみじんも考えたことがなかった。
もうすでに1人で戦うことに限界はあるとも知っていたし、なにより殴る蹴るだけが戦い方ってわけじゃない。
その日もアリアはいつものように謝罪の言葉を口にして、申し訳なさそうに俯いた。
膝を抱えて座り込むアリアの隣に寝転がった俺は、アリアに1つ問いかけをする。
「なぁ、アリア。クレヴァン家で1番強いのは誰だと思う?」
「それはオリバー様では」
顔にわずかに上げたアリアが答える。
まぁ間違っちゃいないけど、正確には違う。
「違うぞ」
「え?」
予想と違うことでアリアは戸惑いを隠せず俺の方をじっと見る。
二っと笑った俺はアリアを連れて母上の元へ行くと、1つの爆弾を落とすことにする。先週、陛下と父上は仕事場から逃げ出したあげく、宰相にイタズラを仕掛けたと。言っておくがでっち上げじゃなく事実だ。
そろそろ父上が帰ってくる頃だし、誰が我が家で1番強いかアリアもすぐに分かるだろう。
予測通り、父上は帰ってきた直後に母上に捕まった。
俺は父上と一緒に帰ってきたロッドにじゃれつかれるのをなんとか宥めながら、その様子をアリアと共に隠れて観察する。声は聞こえないが問題ないだろう。
母上がふんわりとした笑みを浮かべて何かを父上に伝えると、父上はすぐさま頭と手を床につけて母上に謝罪をする。言い訳をすることもなく即謝罪だ。
それを見ながら、俺はさっきの質問の答えを口にする。
「うちで1番強いのは母上だ。使用人も母上には絶対に逆らわない。ピンキーくらいしか勝てる相手もいないのに」
そう、純粋な戦闘であれば母上もアリアと同じように弱い。だけど、母上には人心掌握とでも言うか、俺たちが逆らえない何かがあった。
それは社交の場で大いに役立つ能力だった。
「少なくとも母上の武器は武力じゃない。母上はよく私の戦場は社交場だって言ってる」
「ナーシャ様が……」
相手の土俵で戦わずに自分の得意に持ち込むこと。
戦いにおいてそれは重要で、それはつまり――。
「戦い方は1つじゃないからな」
いくら家同士の取り決めとは言え、あの父上がなにもなしに次期当主の婚約者を決めるわけがない。
アリアにも何かがあるんだろう。
この日を境に明るい社交的なアリアになっていったわけだが、それと同時にアリアと距離が出来たような気がしてならない。
ま、ロッドと仲良くなったからいいんだけどな。




