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願いごとは叶わない

  入学式から一週間。


  浮き足立つ雰囲気も少しずつなくなり始めた。


  俺もわずかだけど令嬢たちの輪の中に入っての会話も慣れてきた。


  今のところエメリと一緒にいることが多く、 エメリを見て、作戦を思いついた。


  自称貧乏男爵家のエメリは、いうだけあって貴族らしい立ち居振る舞いはあまりできていない。平民と大してかわらないのだ。


  それなら、それを理由に声をかけることは出来ると思う。教えを請うって形でなら。

  ただ、相手が男爵家の令嬢だと、平民に近い相手を嫌っていなければの話になるが――。


  無知でお馬鹿な怖いもの知らずでもいいけど、さすがにやる気にはならない。

 

  とまあ、今後の作戦の方向性を決めつつ友人たち(ご令嬢)と昼食を食べるために食堂に向かう。

 

  大体は同じ家柄の子供同士で固まるから、ほぼ男爵家の子供だ。時折子爵家なんかもいる。


  今日は天気がいいから、外のテラス席で食べることになった。

  外は人が少ないので賛成はした。


  気候がいいせいでウトウトしていたのが悪かった。いや、予想出来たはずの行動をするわけもないと油断していた。

  だから、あいつの存在に気づかなかった。


「あれ、あの人。迷ったのかな?」


  エメリが言った。

 

  無駄に広いこの学校は、自分のクラスと食堂くらいはみんなすぐに覚えているが、特別教室となるとまだまだ迷子になる人が多い。


  エメリの視線の先、教科書を抱えた令息が1人。キョロキョロと辺りを見回している。


  明るい金髪に、爽やかに見えなくもないあの顔面、王族と公爵家だけが着られる白を基調した制服。


  気のせい、だよな。間違いであって欲しい。

 たとえ今、在学中の王族たちが王子ともう1人しかいないとしてもだ。


  心の中で強く願う。


  何かを発見したらしいそいつはこっち向かってくる。にこやかにと付け足しておく。


  空のような水色の瞳。

  間違いなく王子だ。


「シャー―――」

「――これは、王子様。どうかされたのですか」


  名前を呼ばれる前にわざとセリフをかぶせて、視線で訴える。


  無礼だとしても知るもんか。張本人が作戦ぶち壊してどうするんだ!それにこっちは不名誉なレッテルを貼られることになるんだぞ。


  王子も視線の意味を理解してくれたようで、表向きの顔に切り替える。


「探してた人に似ていたもので、人違いだったみたいだ」

「そうでしたか」


  ご令嬢たちは王子の突然の登場でガチガチに緊張して固まっている。

  なので、俺だけが会話をする。


「そうだ、サミー先生の部屋を知っていたら教えてもらいたい」


  俺はご令嬢たちを見るが、彼女たちは全員首を横に振った。

  まあ、知っていても恐れ多くてできないよな。


「僭越ながらご案内します」


  ここから王子を退場させた方がいいと判断した俺は、エメリたちに食器の片付けを頼むと王子を引き連れてサミー先生の部屋に向かうことにした。


  人のいない廊下を並んで歩いていると、王子が話しかけてくる。


「シャール、ごめん、ね」


  迂闊に声をかけたことを言ってるのだろう。

  普段なら、王子と護衛みたいな立ち位置で問題はないが、今の俺は男爵家の令嬢だ。

  あまり、いい行為とはいえない。


「王子が気軽に謝ってはいけませんわ。それと、(わたくし)はシャールではなくシャーロットです」


  一応、どこで誰が聞いているかわからないので、シャーロットを演じておく。

 言葉自体は俺の言葉ではあるが。


「そう、だね。あまりにも変わらないから、つい――」


  いや、この姿ですぐに気付けるのは異常だと思うが。


  中性的な容姿は確かだが、いつもは高位貴族らしからぬ、短髪でボサボサの髪と乱暴な言葉使いで、ヒゲのおっさんたちにゃ同一人物には見えないってお墨付きもらったんだけど。


  同じなのは銀の髪色と紫の瞳くらいだろうにな。それでも髪の長さとは全く違うんだけど。


「そろそろ、サミー先生の部屋に着きます」

「ありがとう、助かったよ」


  俺はニッコリと微笑んで、去り際に王子に言う。


「次からは、誰かお供をつけてくださいね」


  姿勢を正した王子に失礼いたしますと声をかけて、俺は自分のクラスに戻る。


  その途中、俺の事情を知る王子の侍従を見つけたので迎えに行くよう伝えておいた。


  また、迷子になっても困るからな。

 

声をかけた従者は、手紙をくれた人です。

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