勉強嫌いの覚醒1
六歳ともなれば、王族貴族問わず勉強に忙しくなり遊ぶ時間、好きなことをする時間は減っていく。
それはクレヴァンでもそうなのだが、いかんせん勉強が苦手すぎる上に戦いに重きをおく家にいるせいか俺は必要性を感じていなかった俺は割と逃げていた。
まぁ、鍛錬の方が楽しいというのも理由の一つではあったのだが。
「お前なぁ、 また逃げ出してナーシャに知られたら俺まで説教されんだぞ」
俺の首根っこを捕まえた父上はそういって、面倒そうな顔をする。
母上に毎回一緒に怒られるが父上は勉強しろとは言うことはなかった。
「は、母上が怒るのは怖いけど、マナーとか俺には必要ない。だってクレヴァンは無礼だって許されてるって――」
「最低限のマナーは必要だが、それを言われちまうとな」
困ったように笑って父上は俺を馬に乗せると、俺を抱えるよう自分もその馬に乗って走り出した。
どこに連れていかれるのかと身構えたが、通る道は見慣れた城に行く道だった。
城に着くと一緒に廊下を歩く。
「なんか言いたそうだなぁ、シャール」
「……いいの、勉強?」
母上はいつも勉強から逃げて戦う練習ばかりの俺を叱っては父上と使用人に小言を言う。
だと言うのに父上は怒るわけでもなく、勉強しろと言うわけでもなくこうして俺をいろんな場所に連れ出すのだ。
「いいか悪いかってんなら悪い」
はっきりと言い切った父上は俺の頭を手を置くとニッと笑った。
「ま、鉄は熱いうちに打てってな。やる気がねぇんじゃ、時間はかかるわすぐ記憶がすぐ飛ぶわで仕方ねぇや」
理想ができりゃそのうちなと父上は言って、宰相の執務室の前で止まった。
「俺は仕事の話してくっから適当に見てまわっとけ」
「分かった」
やることもない俺はひとまずフレッドの元に向かう。
城の中なら大体の地図は頭に入っているので迷うこともない。
「あ、シャール。ごめんね、これから勉強なんだ」
「ふーん。そうか、頑張れよ」
本を抱きかかえて急ぐ様子のフレッドはこれから先生の授業があると申し訳なさそうに謝ってきた。
俺は大変そうだと思いながら手を振ってフレッドと別れた。
フレッドと遊べないとなると騎士のところにでも行くか。
同じようには出来なくても訓練に混ぜてもらうのは楽しいし、そうしよう。
そう決めて俺は城にある騎士の訓練所に向かう。
「あら、シャールさん」
「よう、イザベラ」
途中、侍女に付き添われたイザベラと会う。
「今日は一人なのね」
「フレッドは勉強だって」
「そうでしたの。必要ですものね」
俺の疑うような視線を感じたのかイザベラは大きくため息をついた。
「少ない人数でも策があれば戦いに勝てるものなのよ」
「はぁ?そんなの全員が強ければ勝てるだろ」
イザベラは一人の騎士の指示の下戦ったのは農民で、相手はその何倍も多い人数だったのだと言う。
「それでもお勉強が必要ないと思いますの?」
「そ、れは……」
たじろぐ俺にイザベラは続けた。
「その騎士はクレヴァンだったと聞いていますわ。なぜシャールさんが知らないのでしょう」
小首を傾げたイザベラはお祖母様に呼ばれいるのでと侍女とともに去って行った。
「なんだよあいつ」
俺はイザベラの後ろ姿を見送ると切り替えるように首を振って俺は再び騎士の訓練所を目指した。




