サイドストーリー:もう一つの仕事
入学式当日の朝――。
着たくもない制服に身を包み、王妃様が直々にご指導下さった(高貴すぎる)立ち居振る舞いを確認してしていると、何の前触れもなく部屋の扉が開かれる。
「シャール、昨日忘れてたから今言っとく」
ノックもせずに来たのは父上だった。
スカート姿の俺をみて俯いて身体を震わせる。
「………………」
イラっとしたが何もせずに様子を窺っているとやがて、堪えきれずに吹き出した。
手近なものを父上を向かって全力投球したのだが、簡単にキャッチされてますます苛立ちが募る。
「あ〜、やっぱ違和感なさすぎて笑えるわ」
ひとしきり笑って、笑いすぎて溜まった涙拭って、落ち着いたらしくやっと会話のキャッチボールが始まる。
「で、何の用だ?笑いに来たってわけじゃないだろ」
「さすがナーシャに似て――睨むなって」
母上に似てるのは重々承知。この容姿なのは他にも理由はあるが今は関係ないので置いておくことにして、父上に似ていれば少なくとも戦える人間くらいに見えたんだろうけど。
話が進まなそうなので殺気を放って黙らせる。全く効果がないが、話が進みそうだから良しとする。
「えーとなんだっけ、ちょっと待ってな。すぐ思い出すから」
怒りたくなるのをグッと堪えて、思い出してくれるの待つ。
しばらくして声を上げたので思い出したみたいだ。
「そうそう、お前の女装を知ってる協力者が学校に通ってるんだ。困ったら頼ればいいと思うぞ」
「……………」
「……………」
互いの沈黙が続いて、続きを促してみる。
「それは誰?」
「自分で探してみろ。もし、全員見つけられたら――」
「見つけられたら?」
「一つだけ願いを叶えてやるよ」
イタズラするみたいに父上は笑って、一つだけヒントを残して、がんばれよーとヒラヒラと手を振って去っていった。
一つだけ願いを、か。
やるしかないな。
出されたヒントは、『王妃候補の女の子の中に協力者はいない』だ。
婚約者がいる令嬢は協力者の可能性があるわけか。
何人いるのかわからないけど、全員見つけてみせる!
入学式の翌日、学校の下駄箱に手紙が一通。
差出人は同い年の王子の従者見習いからで、内容は自分は協力者だから何かあったら頼れということだ。
協力者にもルールがあるそうで、いくつか手紙に書かれていた。
俺のことは他言無用。
協力者だと俺に名乗り出てもいいが、他の協力者を教えるのは禁止。
協力者同士の連携は可能。
名乗り出てくれるとありがたいが、父上の独断と偏見で選んだのであれば、名乗り出てくれる可能性は限りなくゼロに近いだろう。
困ってるのをみて楽しむような人だからな。
ま、 面倒だけど、願いのために頑張るかな。
シャールの父親は筋肉質ですが、人をからかうのが趣味みたいなところがあるのでギャップがあります。