ダンスの練習
ダンスの練習は二クラス合同で、王子やエメリのクラスと一緒の授業だ。
二年生で基礎を、三年生でペアを組んで。
やらなくても大抵習っているはずで、これは復習といった意味合いが強い。
くじ引きで男女のペアを決めるため、毎回相手が違う。今日は2回目だ。
先生曰くこの方が無駄な争いが起こらないからだそうだ。
ちなみに男で一番人気は王子だ。見た目の良さもあり、ペアになりたいと声が多い。爵位が低くてもこの時なら会話がしっかりとできることも大きい。
女性陣はソフィア皇女とイザベラだ。
儚げなソフィア皇女はもとより人気があるが内気すぎて声をかけるよりもみんな見守りに徹しているため。
イザベラは抜群のプロポーションに、なんだなんだ世話焼きでファンが多いのが理由だ。
結果は、王子はエメリと、ソフィア皇女は王子の従者と、イザベラはルイと、俺は露骨にがっかりしている野郎とだ。
幼い頃からかい半分で男女どちらも習わされたため、問題なくシャーロットとしても踊れる。
ただ、イザベラとペアになりかったと露骨にがっかりしてる野郎の足を踏んでやろうかとは考える。
あまりにも下手すぎて、リードすらできていないので踏まれても文句は言わないだろう。
イザベラとルイは、女性がリードする形になっているが、それなりに上手く踊れている。
よく見れば、踊りながらイザベラがアドバイスをしてるようだ。
ルイは踊ることに慣れていないからか、大変そうにしている。
いくらルディから簡単には習っていても、実践となると上手くいかないらしい。
イザベラのリードが上手いといってもあそこまでできればすごいことだ。
ソフィア皇女も王子の従者も踊ることは出来ているようだけど、互いに気を使いすぎてガチガチで上手く踊れていない。
ソフィア皇女は慣れない人相手で緊張もあるせいだが、王子の従者はよりにもよってソフィア皇女のファンだったらしい。
見ていて心配になるほどグダクダだ。
王子とエメリはというと、自称貧乏男爵家だけあって踊り方はあまりよくわかってないようだ。
王子のさりげないリードで出来てはいるが、何しろ素人同然で足を踏みまくっているせいで、エメリは恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。穴があったら入りたい状態だ。
扱いに困っている王子はチラチラと俺の方に視線が行く。
こっち見るなとは思う。今俺はシャールじゃなくてシャーロットだ。
授業が終わり、エメリに速攻で捕まった俺は一緒に昼食をとることに。
席に着いた瞬間、エメリに泣きつかれる。
「恥ずかしいすぎて王子にどんな顔して会えばいいのか分からないよ」
「きっと気にされないと思うけど」
エメリが俯く。
今は王子と隣の席とのことだ。
「うん。変わらない対応をされると分かってる、分かってるんだけど……ダンスの下手な子だって心の中で思われるんだわ」
そんなこと考えもしないだろうな王子は。
というよりエメリ、意外と意識してる?
「興味持たれたりして」
わざと茶化して言ってみると、エメリは照れたように耳まで真っ赤になる。
「そ、そんなことは、あるわけないじゃない!」
「アハハ、でも三年間エメリは一緒だし、他の子よりチャンスはあるんじゃない?」
「もう、シャーロット」
エメリもこの三年間で貴族の令嬢らしくなってきたし、成績も悪くない。
候補にしても問題はない。
最終決定は陛下たちだし、俺は可能性のありそうなご令嬢を見つけるだけだ。
もともとペアは違う予定でした。




