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最後の協力者

 夏休み明け、マノン先生から相談があった。


 一年生の双子がイタズラ好きで、多くの教師が手を焼いていて、何か対策はないかしらとのことだ。


 ジレッティ子爵の男女の双子。

 令息がケビン、令嬢がアナベルだ。


 入学当時、話題になっていた。


 怒ったところでしゅんとするのは数分で、一時間もあれば怒られたことすら忘れてるくらいだとか。

 両親もほとほと困っているようで、同じように頭を悩ませてるそうだ。


「さすがに放置ってわけにもいかないじゃない?」


 他の教師は半ば諦めているが、マノン先生はそうもいかないと考えているようだ。

 おおかた庶民のマノン先生に体良く押し付けたのだろう。


 先生はきっと、反省させるためというよりも双子のしっかり怒られた顔が見たくて引き受けた気はする。


「そうですね。入れ替わってることもあるようですから」


 マノン先生が驚く。


「入れ替わってる?」

「一週間に一度くらいか」

「そうだったのね」


 あの双子は本当にそっくりで、大抵は制服で見分けられてる。男女の双子だから出来るが、入れ替わったのを見抜くのはごくわずかだ。


 見分けられるのは、本当にわずかだ。


「そういや、イタズラって?」


 イタズラの被害にあうのは同じ一年生と、ときおり二年生で、なぜか三年生は被害が一度もない。


「そうね。例えば、花のブローチが虫のブローチに変えられていたり、筆箱の中身が変えられているそうよ」

「手の込んだことを……」

「怪我をする子がいないのは助かるけれど、授業を始めるのに時間がかかって困るのよ」


 頰を手を当ててため息をつくマノン先生。


「せめて弱点が分かればね」

「そうですね」


 それとなく双子を俺も観察するということでお開きになった。


 放課後、ルディと合流して帰るのだが、ルディの機嫌が悪かった。


「あのクソガキども――」


 怒りに満ちた声をだすルディは猫じゃらしを持つ手に力を込める。


「どうもこうもあのジレッティのガキどもです」


 双子にイタズラされたわけか。

 この口の悪さは俺のせいだなと思いながら、ルディの方が年下のはずだと心の中で突っ込んでおく。


「何されたんだ?」

「普段用の筆箱の中身をこれに変えられていたんです!」


 そう言ってしおれ始めた猫じゃらしを俺に見せる。


「中身はどうなってた?」

「ご丁寧に僕の下駄箱の中に飾られていました」


 本当にイタズラをしたいだけって感じだな。迷惑なのは変わらないが。


 そこに声がかけられる。


「えっらい不機嫌なんがおるなぁ」

「ルディ君が怒るなんて珍しい。――そばにいるのに」


 変わり者で有名な伯爵家のご令嬢レナ・ペルヴィス(三年生)と正真正銘俺の親戚のアルベール・メナール(二年生)だ。


 レナはなんとなく猫を彷彿とさせる容姿をしている。性格も割と猫っぽい。


 アルベールは灰色の髪をした特徴のないやつだが、こっちはうちの家系では珍しい文官に適した性格をしている。


 あまり知られていないが二人は婚約者だ。


「お姉さんに聞かせてごらん」


 レナが自分の胸を叩く。


「こう見えても頼りになるんよ」

「ところで、なぜルディ君はそんなものを手にしてるのでしょう」


 淡々とアルベールが疑問を声を出す。

 ルディは話す気がないようなので俺が説明をする。ついでにマノン先生から聞いた話も。


「ほう」


 レナが目を細める。


「明日、専用サロンにおびき寄せてもらってもええ?時間は放課後で」

「ルディ君には申し訳ないですが、協力を頼みます」

「囮になれと……」


 一瞬、悩んだあと一泡吹かせられるならとルディは了承した。


 翌日の放課後。

 少し遅れて、指定されたサロンに足を運ぶと――。


「いってーー!」


 恐ろしい顔をしたレナがスカートをはいたケビンの尻を叩いていた。

 その横ではアナベルが恐怖で涙を流し座り込んでいる。


「お姉ちゃん、アナベルにはやらないよね?」

「二人とも共犯やろ」


 ケビンから手を離すとアナベルをアルベールの手を借りて立たせると、レナはアナベルにも百叩きを開始する。


 双子とレナが親戚なのかと考えていると、アルベールが教えてくれる。


「あの三人は血の繋がった姉弟です」

「そうか」

「ケビンだけがおじのもとに養子に行く予定だったようですが双子は離れたくないというので二人とも養子に」


 お仕置きを終えたレナは俺たちに謝った後、また被害があれば教えて欲しいといった。


 それから、大人しくしている双子に向くと意地の悪い笑みを向ける。


「安心しい。お姉ちゃん、来年からここで見習いさせてもらうんよ」


 どうやら、この学校の教師になるつもりらしい。

 青ざめる双子を放置し、レナは俺をみて笑う。


「お茶会の時はたのしませてもろうたわ」

「もしかして……」


 一年生の時のお茶会でぶつかってきたのは、こいつか。


「そういうこっちゃ。また機会があれば」


 双子のイタズラ騒ぎもこの一件以来、なくなり先生たちも助かったとか。


 それと、アルベールも協力者だったらしい。

 俺の知らないところで情報操作とかをして協力してくれていたようだ。




アルベールは全く戦えません。

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