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本当の思いは?

 ロッドとルディが調査を終えたのは、あの会議から五日後で、学年も違うジルベールとはあまり会うことはなかった。


 けれど、会えば顔を真っ赤にしながらも笑みを向けてくる。


 今回も俺の部屋で会議中だ。


 ロッドの持ち帰った情報は、昔はジルベールとブリジットはとても仲が良かったが、いつしか家族同士の交流は続けど、二人が会うことはほとんどなくなったらしいということだ。


「妙な話ですね」

「仲が悪いってわけじゃないみたいだけど」

「急に疎遠になることもあるにはありますが、両家の交流を考えるとおかしなところです」


 ロッドの報告が終わり、ルディが集めた話を聞く。


 ジルベールとブリジットは同じクラスで、クラスメイトとして会話することはあるが、それ以上でもそれ以下でもないらしい。


「お二人のクラスメイトは大抵このように言っていましたが、ウィルム伯爵令嬢の友人の一人は違うこと言っていました」

「どんな?」


 ロッドがルディに尋ねる。


 ルディがその友人のを真似て喋る。


「ブリジット、ジルベール君と喋るとき妙にそよそよしいっていうのかな、トゲがあるっていうのかな。ジルベール君もそれは同じで……」

「互いに嫌ってる?でも、きっかけがなさそうなんだけど」


 腕を組んで唸るロッド。ルディはため息をつく。


「どうにもシャール様以外の機微に関しては難しいですね」

「僕もしっかりと汲み取れるわけじゃないし、戦いなら別だけどさ」

「嘘がどうかはなんとなく見抜けるが……」


 嘘を見抜くのは出来ても、感情まで汲み取れといわれると苦手な分野だ。


 と、そこへ部屋がノックされる。


「坊っちゃま、ご友人がいらっしゃいましたよ」

「そのまま通してくれ」


 俺は部屋の扉を開ける。

 立っていたのは執事のアルバンだ。


「ホッホッ、そうだと思いましてお連れいたしました」

「さすがだな」

「お褒めいただき光栄ですな」


 一礼して去っていく。


 残ったのは、アルバンが連れてきた客人ジョルジュだ。


 俺らと違ってジョルジュは人の心を読むのが上手い。

 社交場での情報もよく知っている。

 だから会議が行き詰まると思い呼んでおいたのだ。


「頼みとはなんだい、シャール」


 ジョルジュを部屋に招き入れ、久々の再会の挨拶もそこそこにロッドが説明をしていく。


「なるほど……」


 説明を聞いたジョルジュは呆れたように大きなため息をつく。


「彼はまだ自覚していなかったのか。これではブリジット嬢も気が気じゃないだろうね」

「どういうことです?」


 ジョルジュのいうことがわからないと、ルディが尋ね、ロッドが顔をしかめてつぶやきを零す。


「もしかして………」


 ロッドのつぶやきが聞こえていたらしいジョルジュが正解だと頷く。


「ブリジット嬢は照れ隠し、ジルベールに至っては気づいていない無自覚の恋なんだ」

「無自覚……」

「それでシャール様(シャーロット)に、告白ですか」


 ジョルジュは笑う。


「二人には昔から婚約の話はあるんだ。だけど、ジルベールが気付くまで婚約は絶対にしないとブリジット嬢が言ったんだ。これは本人から聞いた話だ」


 ブリジットを好きなのを気付かず、シャーロット姿の俺に一目惚れして告白か――。


 なんとも、困る話だな。


 でも、そういうことならジルベールに自覚させれば丸く収まるってことだ。


「この際だ、ジルベールには自覚してもらおう。両家のご両親も見守るだけはそろそろ限界だとこぼしていたよ」


 そしてジョルジュ曰くちょっとしたキッカケがあればジルベールは気付くだろうということで、ジルベールとデートをすることになった。


 ルディはそれでジルベールがまとわりつかなくなるのならと納得していたが、ロッドは最後まで反対していた。


 ジョルジュが上手いことジルベールを誘導したようで、噛みながら(シャーロット)をデートに誘ってきた。


 さすがに1日見てれば、俺でも分かった。


 ジルベールの心にはブリジットがいることが――。


 そんなこんなで別れ際、ジルベールが渡してきた花束を突き返す。


「渡す相手、間違えてんだろ」


 今は、シャーロットとしているのも忘れて、シャールとして言ってしまった。


 言ったことは消せないし、心の中だけでため息をついて、さっさと次の言葉を紡ぐ。


 ただし、シャーロットとしてだ。


「他の女性のことをずっと考えてる方なんて、お断りね」

「そんなこと――」


 帰るためにジルベールに背を向ける直前、俺は薄く笑う。


「誰のこと考えてたのかしらね」


 のちに、あの2人は社交界きってのおしどり夫婦と呼ばれるのだが、それはまた別の話。


後で陛下と父親の耳に入り大笑いされます。

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