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一目惚れ

 今年は何の騒ぎもなく順調な滑り出しかと思えた。


 それは違った。


 ジルベール・ラマール。


 伯爵家の令息で新一年生だ。


 シャーロット姿の俺に一目惚れをしたと、赤を基調とした花束を手に目の前に立っている。


 幸い人のいない場所だ。目立つことはない。


「ひ、一目惚れしました。どうか、この思い受け取っていただけませんか」


 顔を真っ赤にしたジルベールが一息で言い切る。


 天井からガタっと小さな音がした。


 どう見ても愛らしい女の子にしか見えないことは重々承知。

 まして、女装時はカツラとはいえど、しっかりと整えられている。いつものボサボサじゃない。


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど受け取れないわ」


 断れば、ジルベールががっかりと肩を落とす。


 去り際、ジルベールは首を横にふってこちらを振り返る。


「婚約者はいないと聞いています。決まるまでに射抜いてみせますから、覚悟していてくださいね」


 これはまた厄介なやつだな。


 ジョルジュと違って真っ直ぐな偽りのない思いすぎて、対処に困る。

 というかまあ、ジョルジュはあれだし。


 家に帰ると、ロッドが一番に迎えにきて、唐突に言ってくる。


「3日、3日だけください。ジルベール・ラマールのことしっかりと調べ上げてみせますので!」

「やっぱりお前か」

「もちろんです。兄さんの今の環境も自分で把握しておかなければ、万全な支えはできないかと」


 なんかもうやる気に満ち溢れるし、止めんのも面倒だ。やって貰おう。


「わかりました。それでは行ってまいります」


 敬礼をしたロッドはすぐさま調べるために家を出た。


 そんなに急いでないんだけどな。


 ロッドが調べている間の3日間、ジルベールが近づいてくることはなかった。挨拶はしたが、ルディが常に俺のそばにいるから近づくのは至難の技だ。


「ジルベール・ラマールはいたって普通でした。兄さんの素晴らしさを見抜いた慧眼以外はあまりにも平凡すぎでした」

「そうでしょうね。高い能力があればボクが名を知らないわけがないですし」


 休日、ロッドとルディが俺の部屋に集まり、調べた情報を持ち寄り話し合っていた。


「本人に知らされてないようですけど、婚約の話があるとか……」


 ルディが頷く。


「ウィルム伯爵家とは昔から交流があるようですから、おそらくその家でしょう」


 正解を確かめるようにロッドとルディが俺の方を向く。


「ああ。ウィルム伯爵の一人娘とジルベールは仲が良かったそうだから、昔から話はあったみたいだ」

「ふむふむ。確か同じ年だったはずですし」

「一考の余地ありだ」


 二人が目を合わせて何度も頷く。


 俺としても丸く収まるなら、ありがたい。


「そうと決まれば、ウィルム伯爵令嬢の調査です!」

「僕は外回りを調べてくる。ルディは学校の方をよろしく」

「もちろんです」


 三人だと行き詰まりそうだし、助っ人でも呼んでおくか。

今まではジョルジュがいたからなんだかんだ誰も近寄って来ませんでした。

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