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サイド:ロッドと精霊

 ロッドが他国での修行を終えて帰ってきてから数日――。


 修行先からロッドが送った荷物が届いた。


 客間が一部屋埋まるほどの量である。


 もちろんロッド自身の私物もあるが、ほぼ十割が土産だという。


 母上には、装飾品と人気だと言うオルゴール。


 使用人たちは名物の菓子詰め合わせを数箱渡す。我先にと争って食べる。


 父上には、酒瓶が一本。


 俺への土産は、服に装飾品、小物に食べ物と多岐にわたり、まるで現地で生活でもしていたように見えるほどだ。


「あいにく、日持ちするものしか持って帰れませんので、こんなに少なく……」

「いや、嬉しいよ。精霊に分けてもいいか、ロッドからの土産」

「精霊様には用意があります。兄さんが渡したい方がいればその方に」


 精霊に持って行くなら、王子のことに行かないといけないし、王子に渡しとくか。


 陛下、王妃、王子への土産の品も持って城に向かう。


 それらは王子にまとめて渡し、扉を開けてもらう。


 王子はロッドを見て話したそうにしていたが、精霊の後でといいと言った。


「我が同士、修行を終えて帰ってきました。ロッドです」


 なぜかロッドは昔から精霊のことを同士と呼ぶ。

 時折、ルディのこともそう呼ぶときがあるようで、手紙に消したあとが残っていた。


「ロッド、久しぶり。予定よりはやかったね」

「はい。兄さんのことをあなたから聞きましたから」


 精霊はクスクスと笑う。


「思いの力は偉大だね」

「それはもう」


 満足気に頷いたロッドは、精霊にお菓子の箱が大量に入ったカゴを差し出す。


「こちら、修行先でのお土産です」

「そう、嬉しい」


 カゴを宙に浮かせて自分の元に運んだ精霊は、中を見る。


「ありがと」


 ご機嫌になった精霊がパチンと指を鳴らせば、たちまち大きな切り株の上にティーセットとわずかなお菓子が用意される。


「はなし、聞かせて」

「修行先での鍛練ばかりで面白い話はありませんが……」

「いいの」


 精霊がキャタキャタと笑う。

 久しぶりに会えたロッドの話を聞きたいだけらしい。


「休みの日は家族や精霊様へのお土産探しと、他の武術の腕が鈍らないように色々な場所にお邪魔させて頂いてました」

「そうなの」

「はい。それに同じ武術でも流派が違えば学ぶことは多くありますので」


 流派が違えば、教えてはもらえない気はするがロッドの意思の強さはすごいからな、多分相手が根負けしたのだろう。


 武術に長けた国だけあって、探せば学んだ武術を扱ってる家もあったようだ。


 クレヴァン家はあらゆる戦い方に精通している。腕が鈍らないようするのも大変だっただろうに。


 表情を読んだロッドが首を横に振る。


「兄さんに比べれば、大したことはありません。精霊様から聞いています」


 俺の言ってないことを知ってると思えば、精霊が教えてたのか。


「王子のことや男爵令嬢のこと。なので、学校はルディに任せて、僕は外から兄さんの支えになろうと思います」

「いや、ロッドがやりたいことをすればいいと――」

「なら、兄さんの力になることです」


 せっかく自由な時間があるってのに、休めるときは休んでいてもらいたいんだけどな。

 まあ、大人にいいように使われるよりはマシか。


「そん時は頼むな」


 そういうと、ロッドは力強く頷いた。

 精霊がロッドに手を伸ばす。


「ロッドに特別サービス。ちょっとだけ力を貸してあげる」


 ロッドの左腕が一瞬強い光を放って、それはブレスレットになる。


 精霊は満足気に笑って説明をしてくれる。


「それがあれば、精霊の加護がすこーしだけロッドにつくの。きっと、役に立つよ」

「ありがとうございます。精霊様、いえ、同士」

「えへへ」


 和やかに進んだお茶会も、日が沈み始めてお開きになった。



ロッドにとっての父親は、尊敬するシャールに無理難題を押し付けてばかりの人です。

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