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進級前の春休み

  今日は父上も休みってことで、手合わせをしていると、使用人の一人が駆けてくる。


「ロッド様がお戻りなりました」

「ロッドが?」

「免許皆伝をしたと――」

「わかった。すぐ行く」


 ロッドは三つ下の弟で、11歳になる頃から外国で修行をしていた。

 手紙のやり取りはあったが、会うのは久しぶりだ。


 あいつの得意な戦い方を伸ばすには、教えられる人がいなかったために外国にいっていた。


 確か、皆伝には二十歳くらいまでかかるって聞いた気がしたが。

 それなりに優秀だから、早く達成したんだろう。


 ということで、久しぶりに家族が揃う。


 部屋に集まるとチラチラとロッドと目が合う。

 ロッドは何か言いたそうにしながら、深呼吸を一つ、父上に向き合う。


「おっかえりー、ロッド。随分と早いな」

「はい。こちらが皆伝の旨を記したものです」


 手に持っていた封筒を父上に渡したロッドは、母上と話し始める。


「お帰りなさい、ロッド。元気な顔を見れて安心したわ」

「ただいま帰りました。母上もお元気そうで嬉しいです」

「こんなに早く帰ってくるなんて、すごいわ、ロッド」

「早くみんなに会いたくて頑張りました」


 和やかに話しをするロッド。

 母上との会話もひと段落して、さて、俺の番だ。


「おかえ――のわっ」


 ロッドが抱きついてくる。それも目に涙をためて。


「ずっとずっとずぅっと、兄さんに会いたくて……やっとお会いできました」


 父上と母上の髪色を足して割ったような灰色の逆立ったロッドのを髪を撫でてやる。


 数年間、知り合いのいない土地で一人頑張ってたわけだもんな。


「頑張ったな。お帰り、ロッド」

「ただいまです。兄さん」


 はにかみながらロッドが言って、俺から離れる。そこに父上が割り込んでくる。


「ロッド〜、父上に冷たくない?お父様寂しいな〜」


 おもしろがってロッドの頰をつつく父上。

 絶対零度の凍てつく視線を父上に向けたロッドは、同じくらい冷えた声音で言い放った。


「兄さんが大変な苦労をしているは誰のせいだと?」

「うーん、陛下かな〜」

陛下(あれ)と父上、重鎮(アホ)どものせいですよね」


 殺気を放つロッドを、母上が諌める。

  陛下をあれ呼ばわりは否定しない。


「ロッド、やめなさい。今は、ルディ君がシャールを手伝ってくれてるから、ロッドが考えてるより負担はないのよ」

「けど、母上……。兄さんが、兄さんにとってそれは」


 殺気は霧散して、泣き出しそうな顔をするロッド。

 俺が自分の容姿をコンプレックスに思っていたから、気にしているのだろう。


「そうね。私もその場にいたら止められたのに」


 母上も気にする必要はないってのに。父上(あれ)にはめられた俺が馬鹿だっただけだし。


「母上、それにロッドも、そんな顔しないでください。始めにしっかり話を聞かずに返事をした俺が馬鹿だったんです」

「――そう。話をね」


 そっと呟いた母上は俺の頭を撫でて、優しく微笑んだ。


「辛かったわねシャール。今からオリバーさんと話があるから、しばらくこの部屋に近づかないように、使用人(みんな)に伝えといてくれる?」

「わ、わかった」


 母上らしい穏やかな笑みをしているが声には怒気がこもっている。


 触らぬ神に祟りなし!

 ロッドを連れてさっさと部屋を出て行く。


 近くにいた使用人に、部屋に近づかないよう伝えておく。


「わっかりました。見にいってこよう」


 他の連中にも伝えるっていってたし、放っておこう。いつものことだし。


「僕にもっと才能があれば良かったのに……」


 自分たちで入れたお茶を飲んでいるとロッドがつぶやく。


「ロッドが頑張ってるから俺も頑張れる。それに、俺が任された任務を失敗したことあったか」


 正体がバレるとまずい人たちにバレてないから失敗はしてない。していないはずだ。


 首を強く横にふるロッド。


「ない、です」

「だろ」


 ロッドを安心させるように俺は笑う。

 そんな俺にロッドは目を合わせずにいう。


「無理だけはしないでください。兄さんはなんでもできるから、無理難題をいつも押し付けられて心配なんです」


 昔は押し付けられた仕事で怪我して帰ってくることも多かったせいかロッドは、父上や陛下からの仕事を俺がやるのを極端に嫌う。

 無茶振りが多いからな。


「怪我するような仕事じゃないから大丈夫。普段と比べれば随分と楽だから、な」


 命のやり取りがないだけでも楽なのは確かだ。


 それから俺は、ロッドの気がすむまで修行先での話を聞いていた。

ロッドはルディよりはわきまえて行動する模様。

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