サイド:不服そうな顔のワケ
シャールを助けたはずのルディが不機嫌なのは?
午後からの授業が終わり、シャールの教室まで向かったルディは、女装時の友人たちから、シャールは午後の授業に出ていないと聞かされる。
あのシャール様が授業をサボるわけはないし、急用や体調を崩して早退したなら自分の耳にその情報が入るはずだ。
一体何が――。
もしかすると行き違いになっているだけかもしれないと一縷の希望を持って一度、自分の教室に戻ろうと、難しい顔をして廊下を歩くルディを誰かが呼び止める。
「ルディ君、悩み事かい?」
呼ばれて、声のした方をむけばジョルジュが立っている。
相変わらず風もないのになびく髪はどうなっているのだろうという考えが浮かぶが、今はそれどころではない。
「ジョルジュ殿……」
元気なくルディは呟く。
「君の様子を見るに――シャーロット嬢に何かあったのかな」
ジョルジュの言葉にピクリと反応をするルディ。
「午後の授業に出席していなかったと、連絡がないなんてことあるはずもないのに」
混乱しているような不安そうな、今にも泣き出しそうな、年相応の表情のルディがそこにいた。
ルディの珍しい子供らしさに思わず笑みを浮かべたくなるが、ぐっと堪えジョルジュは言った。
「そういえば、ソフィア皇女も出席していなかったようだよ」
「え?」
ルディは驚いて目を丸くする。
そのあとで、ポツリと呟く。
「そうなると、2人に何かがあった?」
「ふむ、もし2人が一緒なら簡単には出られない場所にいる。と、いう考えが妥当かな」
「そう、ですね。だとしたら、どこに……」
ジョルジュが必死に思考中のルディに尋ね
る。
「ルディ君、君は学校の地図を完璧に把握できているかい」
「もちろんです。シャー――ロット様への対応に不備があっては困りますので」
ルディの言葉に頷くジョルジュは話を続ける。
「それなら、外側にしか鍵のない場所は――」
ジョルジュの言葉を理解したルディは、ジョルジュの言葉を遮る。
「学校裏の大倉庫と、各階の職員倉庫です。職員倉庫は個人的に持っている先生もいますので、そちらを調べた方が良さそうですね。鍵の借りる為の煩わしい手続きがないので」
「わかった。君の予想であやしい人はいるかい」
「そう、ですね。サミー先生の助手でしょうか、授業に遅れてきています」
シャール以外からすればいつも通りの、子供らしくない冷めきった顔のルディがいう。
サミー先生の部屋へ行き倉庫の鍵を借りに行けば、助手がまた返していないといわれ、サミー先生は予備の鍵を貸してくれる。
「ルディ君、君には姫たちのお迎えを頼む。僕は別の仕事ができたからね」
「そっちはお願いします」
お互い目を合わせて頷けば、それぞれの仕事に向かう。
サミー先生の個人倉庫へ走り、シャールとソフィア皇女を助けたルディは、なぜか不服そうな顔をしていて、シャールが理由を尋ねれば、しぶしぶと言った風に教えてくれた。
「シャール様の危機に気がつかなかったこと、それと、冷静な判断ができずジョルジュ殿の手を借りたことに自分が未熟すぎると感じまして」
「危機なんて思ってなかったけどな。ルディがすぐに来るだろうと思ってたし、ジョルジュはまあ、あれで頭は回るからな」
シャールがルディの頭を撫でれば、ルディは照れたように笑った。
ソフィア皇女を送った後、ジョルジュと合流し、今回の事件について陛下たちに報告するために城に向かった。
シャール以外が閉じ込められていたら、一人で救出まですぐにたどり着けていたはずのルディです。




