王子の思いは?
一応王子の考えも聞いておくべきだと判断して、学校の休みの今日は城に向かう。
念のために言っておくと、シャールとしてなので男の姿だ。決して女装姿じゃない。
王子の部屋に向かう廊下を歩いているとジョルジュに会う。
「シャールじゃないか」
「おう、ジョルジュ。久しぶりだな」
ジョルジュは学校の休みの日に、騎士団に混ざって訓練をしているため、こうしてたまに城にいる。
実力は申し分ないので練習試合に呼ばれることあるらしい。
「王子様にでも呼ばれたのかい?」
「聞いときたいことがあってな。そっちは騎士団に?」
「ああ。任務で人手不足らしくてね。新人の練習試合ができないと」
「大変そうだな」
俺がそう言うと、ジョルジュは首を横にふる。
「君ほどじゃないさ。単身任務を任せてもらえるほどの力は僕にはないし、それに目標があるからね」
「目標?」
「手加減されずに君と戦えるようになりたいと思っているよ。まだまだ僕は弱いと、この前思い知らされたばかりだ」
ジョルジュは清々しく笑った。
騎士団の練習場に向かったジョルジュと別れて、王子の部屋に向かいながら疑問と疑惑が頭をよぎる。
「いや、まさか、な……」
気のせいだと自分の中に押し込んで、王子に会いに行けば、すぐにお茶の準備がされる。
「授業でわからないものでもあった?」
冗談めかして王子が尋ねるが、王子はいつも教わる立場にいることが多い。
「いーや、お前の考える相手はどんなやつなのかと思ってな。陛下なんかが参考程度に知りたいって言ってたんだよ。俺の方が話しやすいだろうってな」
俺が女装して学校に通っているのは知っていても、どうしてなのかは知らされてないはずだし、何かしら嘘を教えられていると思う。
だから、俺が知りたいというていで聞かない方がいい。
「いくら振る舞いがふさわしくてもハリエットなんかが選ばれた日には、逃げ出したくなるもんな」
「そう、だね。僕はお飾りの妻は望まないよ。愛まで求める気はないけれど、国のために支え合えればいいと思っている」
水色の瞳はわずかに寂しげで、それでいてまっすぐな意思を宿している。
自分の思いよりも立場を優先した答え。
友人としてはやっぱり、相思相愛で幸せであって欲しいものだ。
王子とご令嬢――。
互いの意思を調べながら、候補者探しを引き続き頑張ろうと俺は決意を新たにしたのだった。
クレヴァン家がいれば護衛や侍女はつけなくてもいいようです。