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第5章~激情のK~

 サンガンピュールは養父の突然の提案に驚愕した。

 「…あ、あたしを…あのテロリストの元に!?おじさん、正気なの!?」

 「正気だから提案してんだよ!土浦・・・いや、日本の未来がかかってんだ。この危機から救うことができずに、何がスーパーヒロインだ!何が魔法少女だ!お前の拳銃やライトセーバーは、誰を守るためにあるんだよ!?」

 Kは突然スイッチが入ったように熱弁した。これに対し養子は、

 「確かにそうだけどさ…」

 と主張についていくことに精いっぱいだった。

 「ほんとに大丈夫なんですか、それは!相手は、何をしでかすか分からないテロリストですよ!」

 朝霧が言った。彼女の言う通り、相手は男を殺人ウィルスで滅ぼそうと企む女科学者である。だが一刻も早い解決のために悠長に考える暇はなかった。彼女なら男は確実に殺せるだろう。そうしたら男が偵察するのは危険だ。そのため、Kは女であるサンガンピュールをスパイとして送り込むことを提案したのだ。

 「K君、君みたいな素人が考えるほど、現実は甘くないぞ!ここは俺らに任せて・・・」

 茂木がKの提案を却下し、警察に全てを任せるよう伝えた。だが、

 「待て、茂木君。この男性の考えを聞こう。時には外部の斬新なアイデアもヒントになるだろう」

 茂木の発言を遮ったのは署長だった。

 「・・・ありがとうございます」

 Kは一通り、自分のアイデアや意見を署長室にいる全員に伝えた。


 説明が一通り終わった後、

 「本当にそれでいいのか?」

 茂木が念を押した。

 「大丈夫だと思います。サンガンピュールならやってくれると信じています」

 Kは魔法少女のことを信じるしかない。ここで署長が

 「では、本人の気持ちはどうでしょうか」

 と確認が必要だと示唆した。これを受けて、

 「サンガンピュール、どうだ?」

 Kが質問した。しかし当人は、


 「本当に大丈夫かなあ…。おじさんを裏切らずにできるかなあ…」


 と珍しく心配の顔を見せていた。するとKは、


 「そこで弱気になってどうすんだよ!この国の平和がかかってんだぞ!お前は人間を1人殺したこともあるじゃねえか!そのくらいの強い気の持ち主だろ!?」


 Kは彼女が、その年のゴールデンウイークに土浦駅西口のマンションで起きた立てこもり事件で、加害者の青葉聖(あおば・さとし)を殺害したことを引き合いに出した。彼女にとってはトラウマが蘇ってしまう事件だ。青葉を殺したことで、助けたはずの被害者・田井中梓からは加害者に対して以上に強い恐怖心を抱かれ、「あんたの方がよっぽど怖いよ!」と言われた。Kや警察には厳しく叱責され、後日市議会に呼ばれて謝罪したこともある。

 「でもあたしが人を殺したとき、おじさんはとても怒ったよね?でも…」

 忌々しい記憶を思い出してしまったサンガンピュール。だがKは

 「そんなこと、今はどうでもいい!今回はやむを得ないんだ。協力してくれ。頼む」

 と、提案を撤回しようとしなかった。少女は、Kのあきらめの悪さに気色悪さを感じ始めた。

 市長秘書の朝霧も

 「お願いします。テロリストが力をつける前に!」

 と協力を請うた。外堀が埋まりつつある。サンガンピュールは自分の視線を茂木に向けた。まるで助けを求めているかのようだった。茂木も署長の方を見る。ここは、最高責任者である署長の判断を仰ぐしかないのか。


 「よし、警察はその女テロリストのアジトを確認する。グループは大体何人なのかだとか、様々な特徴を確認する必要がある。警察はサンガンピュール君のサポートを惜しまない」


 「・・・署長、それでよろしいのですか?」

 茂木が驚きながらも確認した。

 「うむ、これで良いのだ」

 署長からゴーサインが出た。遂に内堀も埋まってしまったサンガンピュール。背に腹は変えられない。

 「分かりました。やってみます」

 「おおっ!」

 と室内がどよめいた。

 「ありがとう…」

 Kはお礼を言った。遂に女科学者の偵察&掃討作戦、開始である。

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