91・はじめてのサバルナ
エルファリアとの会合の前日、俺達はサバルナ獣人国を訪れた。
一緒に来たシヴァルはその前日にアスリ市へ来て一泊した。昨夜はグライスと遅くまで呑んでいたらしく、いつまでも寝ていたので叩き起こして連れてきたのだが、俺達にとっては全く迷惑な話である。
「遠いとこすまねえなナスカ。宿は用意してあるからゆっくり休んでくれや」
「いや、移動自体は《亜空間移動》して来たから一瞬だよ。ここからガンモン大河の対岸にあるシモーセ街までは亜空間トンネルを使ってきたから距離的にも近くて疲労も殆どないしね」
「そうか、やっぱり亜空間トンネルって奴は便利だな、ガハハハ」
豪快に笑うライオルの前で、頭を抱えるシヴァル。
「でけえ声を出すなよライオル、頭に響く」
それだけ言うと、シヴァルは再び頭を抱えて蹲ってしまった。
「どうしたんだ、コイツ?」
ライオルが疑問符のついた顔を俺に向けた。
「ああ、移動が大変だろうと思ってさ、此処まで一緒に行こうと誘ったんだけどさ、カクカクシカジカで二日酔いなんだと」
「ガハハハ、二日酔いかよ、ダセエなあ、ガハハハ」
「だからデカイ声出すなって、頭痛え」
蹲ったままで文句を言うシヴァルへ、ライオルは呆れた顔を向けた。
「まあいい、馬鹿はほっといてこの国の案内をしてやるよ」
「ありがたい、けどちょっと待ってくれるかな、次いでだから移動してきた亜空間を亜空間トンネルに固定しちゃうからさ」
「おお、そいつは俺にとっても有り難いぜ。じゃあよ、うちの国には二人しかいねえけど《亜空間移動》を使える奴を連れてくるから、使い方を教えてやってくれねぇか?」
「使い方ならアスリ獣国民を3人出向として連れて来てるから、今すぐじゃなくても大丈夫だよ」
「そいつは重ね重ねすまねえな、でも今二人を連れてくるよ、顔合わせだけでも早い方がいいだろ」
ジベルト国で会った時にも亜空間トンネルを熱望していたライオルだ。余程嬉しかったと見えて、直ぐに《亜空間移動》を使える獣人国民を迎えに行ってしまった。
☆
亜空間トンネルを固定して、後の事は俺の連れてきた3人の出向組とライオルが連れてきた2人に任せた。
シヴァルを先に宿へと送り、俺、マリ姉、メソ、タツキの四人は其々の近衛達を影に潜ませたまま、ライオルに案内されてサバルナ獣人国の中心街を見学した。
獣人は本質的に人工的なものを好まない。
この国の街並みは自然を利用して、便利になる用に最低限に人の手を加えている。
多くの自然を残し、人工物もそれに合うように作られている落ち着いた街並みはとても美しいものだった。
サバルナ獣人国に散らばる獣人や魔物の街には名前は付けられていないらしい。
首都機能を備えているこの中心街にも名前はなく、ただ、中心街とだけ呼ばれている。
その他の街々も北街とか、南東街とか、方角で呼ばれているようだ。
中心街を粗方案内された後、俺達は宿へと案内された。
この宿も自然の岩山を利用して作られた建物で、岩山に穴を掘り、そこに最低限の出入り口や屋根付きの渡り廊下などを増築して繋ぎ、一つの建造物としての機能を持たせている。
岩山に穴を掘ったといっても決して原始的なものではなく、内部は人の街の部屋と遜色ない。綺麗に整備されていて、ベッドや家具も不足なく配置されていた。
夕食は宿で一番広い大広間を利用しての宴会となった。そして今。
「おお、ここの酒は相変わらず美味いなぁライオルよお」
「シヴァルさあ、お前って二日酔いで死んでたんじゃないのか?」
「先に宿入りしてから、しこたま寝てたからな、すっかり良くなったぜ」
俺達もライオルも、そのシヴァルの物言いにすっかりと呆れてしまった。
俺達の近衛達も、影から出て一緒に夕食を頂いていたが、同じように呆れている。
ラスリルなんかは軽蔑の眼差しすら浮かべていた。
「まあいいけどさ、明日はエルファリアとの会合なんだ、今日は飲み過ぎんなよ」
「わかってるよ、心配すんな。明日はあのクソ親父も来るんだ、下手打ったりしねえよ」
シヴァルの父親への反発は分かっている。まあ、信じても良さそうだな。
改めて俺はライオルへと向き直り明日の事を尋ねてみた。
「それでライオル、明日はどういう段取りになるんだ。、俺達はどんな役割をこなせばいい?」
「ああ、基本的には俺様とエレルスィリアとの話し合いだ。お前達はその場に居てくれているだけでいい。だが、俺とエレルスィリアとの間で、事前の話し合いは何もしてねえからな、どういった話になるかわからねえ。話しが拗れた場合には臨機応変に対応してもらう事になるな」
「つまりは出たとこ勝負って事じゃねえか、大丈夫なのかよ?」
「ガハハハ、まあ何とかなんだろ、気にすんな」
悪い奴じゃねえけど、結局ライオルは能天気な脳筋なんだよな、全く。
明日に備えて、この夜の宴会は早目にお開きとなった。シヴァルもゴネる事なく早目に就寝すると言って大広間を出た。
で、その後、女湯を覗こうとしたシヴァルが女性陣にボコられた。
シヴァルが女湯を覗いてマリ姉にボコられたのは、これで3度目となった。懲りない奴だなぁ、全く。
次の日の朝、タツキの姿を見たシヴァルがガタガタと震えていたけど、同情の余地なしだね。
いよいよ次回から、姉妹小説の[能力はチート・・・]と本格的にリンクします。お楽しみに。
誕生日投稿スペシャル8時台の投稿です。
この作品自体では本日3回目の投稿になります。
この回を予約投稿した時点で28日になってしまいました。新連載の[ユーウィル!]にはまだ少し書き溜めがあるけど、今日中にあと何回投稿出来るかな?
☆
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連載中[能力はチートだけど・・・]
この小説とリンクする作品です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




