89・会合のお誘い
ライオルと喧嘩、いや、模擬戦かな、はシヴァルがいいタイミングで止めてくれたおかげで白熱することなく終わることが出来た。
後はライオルの話を聞くだけなんだけど。
俺達はシヴァルの自宅の応接間へと戻った。
最初に訪れた時に案内してくれた老執事が、お茶の用意を済ませてくれていたので、俺達は席についてそれを頂きながら、話しを始めた。
「ナスカはシヴァルから俺のことをどのくらい聞いてるんだ?」
「300年前にライオルが【黒怒竜】ニーズヘイルの幹部だったって事くらいかな」
「俺がエレンスィリアって陰険エルフと揉めてるって事は?」
「ライオルと同じようにニーズヘイルの幹部だったっていう【エルフ女王】だね、聞いてるよ」
「だったら話しは早い、今も俺様と陰険女の間で、もうすぐ完全覚醒するニーズヘイル様を、俺のサバルナ獣人国と陰険エルフのエルファリアのどちらに迎えるかで、争っている最中なんだよ」
ライオルの話を要約すると、南の大陸で復活した【黒怒竜】ニーズヘイルは、覚醒とは程遠い状態で復活した。
そのニーズヘイルがもうすぐ完全に覚醒する。覚醒後には300年前に治めていたラシリア大陸中央部に戻って来る予定なのだが、迎え入れる地をライオルのサバルナ獣人国にするのか、エルフの国エルファリアにするのかで揉めているらしい。
そもそも300年前にニーズヘイルが拠点としていた場所は、サバルナでも、エルファリアでもなく、その2国の間に聳える霊山エーレストだったそうだ。
しかしそのエーレスト山は神聖化されていて、300年の間入山を禁止していた。かつての拠点も今では朽ち果てていて遺跡化が進んでいる。
そのような場所にニーズヘイルを迎える訳にはいかないので、自らの築いた国へと迎え入れたいライオルとエレンスィリアとが争っているのだ。
「そもそも、何でニーズヘイルは自らの拠点ではなく、南の大陸で復活したのかな?」
俺が思っていた疑問を口にすると、ライオルが忌々しげに答えた。
「ポドセインだよ、海を統べる大神ポドセインの野郎がちょっかいかけやがったんだ」
「どういう事?」
「ポドセインって野郎は狡猾な野心家でな、冥界神バルデスのように明確に創造神ゼースと対立しているわけじゃねえが、ゼースの事を良くは思ってねえんだよ。裏ではゼースを追い落とし、自分が地上界の全てを治める神となる為に画策してやがんのさ」
「南の大陸は、海の大神ポドセインが唯一干渉している地上だ。ニーズヘイル様を自分の陣営へと引き込む為にその地へと復活空間をズラしたんだろうぜ。300年前と言わずそれ以前から何度も、ポドセインに誘いを受けていたとニーズヘイル様から聞いているからな」
また神の地上界への干渉の話になっちゃうのか。エウデ様から、天界は地上界に干渉はしないと聞いているけど実情は大分違うみたいだな。
「話はわかったけどさ、結局のところ俺に何をして欲しいのかが、イマイチよくわからないんだけど」
「順を追って説明するからちょっと待てよ。それでな、近々俺とエレンスィリアとの間で話し合いが行われる事になったんだが、その会合に向けて、陰険女が厄介な奴等に声を掛けやがったんだ」
「厄介な奴等って?」
「シヴァル、テメエの両親だよ」
「なんだとお!」
シヴァルが驚きに目を見開いた。
そういえばシヴァルの母親も元ニーズヘイルの幹部だったって言ってたな。名前は確か【麗美なる吸血姫】ヴィア。
それにシヴァルの父親は300年前に四大魔王を倒したっていうかつての英雄。【討魔の英雄】ランスロード。
「ちょっと待てよライオル。あの物臭野郎がそんな面倒そうな話に首を突っ込むとは思えねえよ」
「父親の方はな、だけど母親の方、ヴィアは計算高い女だ。国を起こした以上は動くと俺は見てる。ヴィアが動けばランスロードも動くと思わねえか?」
「く、アイツはお袋には頭が上がらねえからな、引っ張り出されるだろうな」
「だろ。それでな、こちらもランスロード達に対抗出来る勢力を準備する必要があるんだ」
「ナスカ、お前にもこちら側の一員として会合に参加してもらいてえんだよ」
うえっ、なんか大事になってきちゃったよ。
「ちょっと聞いてもいい?」
「なんだよ改まって」
「ニーズヘイルが戻ってきたら、ライオルもエルフの女王もニーズヘイルの元に帰参するんでしょ」
「ああ、そうなるだろうな」
「だったらさ、どっちの国にニーズヘイルが入国したとしても別に良くね」
「ば、馬鹿かテメエ! い、良いわけね〜だろがよ! テメエ、コラ!」
図星だったみたいだな、しどろもどろになってるぞライオル!
「も、もしもニーズヘイル様をエルファリアが迎え入れることにでもなったら、お、俺様があの陰険エルフよりも下って事になるんだぞ、そんなこと認められる訳がねえだろがよ!」
「だからさ、それって只の勢力争いでしょ、俺達には関係ね〜じゃん」
勝手にやってくれとしか思えないんだけど。
「ば、馬鹿、どっちにしろ大陸中央部がニーズヘイル様の拠点として確立するんだぜ、隣国となるテメエらに関係ねえわけねえだろ」
「まあ、それはそうかもしれないけど、俺達は確立した後にニーズヘイルと交渉すれば済む話だし」
「ち、違うって、馬鹿だなテメエは。西側の隣国であるランスロード達の尽力でだな、ニーズヘイル様の勢力が整った場合には、当然西側に寄った勢力となるんだぞ。そうなったら東側の隣国のお前らは不利になるだろが」
「う〜ん、まあ可能性としてはそうなるかもしれないけど」
「だろ! ただでさえニーズヘイル様とランスロードは300年前からの知り合いだし、嫁のヴィアは元幹部だぞ。お前達は出発時点から不利なんだから、勢力確立前からアピールが必要なんだって、な、だろナスカ!」
「う〜ん、そうなのかなぁ?」
「そうなんだって! お前は別に戦争したいわけじゃねえんだろ、平和に暮らしたいなら隣国にアピールして、良好な関係を築いておくに越した事はねえよ!」
強引に丸め込まれてる気がしいでもないけど。
「その会合がその場で揉め事に発展する可能性は?」
「ない、ないよ、いや絶対ないとは言い切れねえけど、可能性は低い、大丈夫だって」
まあ良いか、中央部、延いては西側諸国とも繋がりを持って良好な関係を築きたいとは思っていた事だしな。この機会に動いてみるのも良いかもしれない。
必死そうなライオルをこれ以上困らせても可哀想だしな。
「わかった、会合には参加するよ」
「おお、すまんなナスカ、恩にきるぜ」
「ところでさ、会合はいつになりそうなの。10日後が俺の誕生日で人間社会でいう15歳の成人を迎えるんだ、出来ればそれよりも後が良いんだけど」
俺に掛けられている創造神ゼースのリミッターについては話せないが、何があるかわからないので、制限から解放された万全の状態で挑みたいとは思う。
「う〜ん、正確な日時はまだ決まってないんだが、10日後か、微妙なとこだな。それ以降になるように交渉はしてみる」
「頼むよ、じゃあ正確な日時が決まったら連絡してくれ」
それにしても、四大魔王を倒した英雄ランスロードか、どんな人なのかな?
☆
ナスカが帰った後にも、まだライオルはシヴァルの家に残っていた。
シヴァルも会合に参加する事になったし、ナスカへの直接の連絡方法を持っていないライオルが、今後の事をシヴァルに相談する為である。
その相談の途中でシヴァルが一つの質問を、ライオルに投げかけた。
「それでどうだったよ、ナスカと闘ってみて?」
「お前の言ってた通り、いやそれ以上だったよ。アイツは俺より強い。それも圧倒的にな」
「クソ親父よりもか?」
「それはわからねぇよ。俺の知ってるランスロードは300年前の奴だからな」
「ナスカにも言ったが、今度の会合が揉め事になる可能性は低いと思う。だが、もし揉め事に発展したとしたら、俺ではランスロードは止められない。勿論お前にもな」
「その時にはナスカに止めて貰う事になるだろうな」
まあ、そんな事にはならないだろうけどな。
誕生日スペシャル投稿3回目、2時台投稿分です。いやあ、一所懸命書いているんですが、厳しいっすね。
24回は無理かなあ
本日1回目、0時台に投稿した新連載[ユーウィル!]もよろしくお願いします。
こちらが新連載[ユーウィル!]です。
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一話完結方式でお送りする、女の子キャラばかりのほのぼの日常系小説です。力を抜いて読んで頂きたい作品となっております。よろしくお願いします。
☆
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連載中[能力はチートだけど・・・]
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




