88・ナスカの実力
シヴァルの紹介で【獅子王】ライオルと会う事になり、ジベルト国へと赴いた。
ライオルは体育会系脳筋野郎で会って早々に、腕試しの喧嘩をする事になってしまった。勘弁して欲しいよね、全く。
ジベルトの王城の中庭へと到着した。
中庭と言ってもかなり広い運動場のような場所で、実際この場所で軍事教練も行なっているということだ。
「それでどうするんだ、本当に殺し合いする訳じゃないんだろう」
「そうだなあ、かといって本気じゃなければ意味ねえし。武具なしで素手の殴り合いしかねぇかな。俺もそうだが、お前も格闘タイプなんだろ、ナスカ」
「そうだけど、それでどっちか死んだ場合は?」
「まあしょうがねえと思うしかねぇかな、ガハハハ」
ガハハハじゃねえだろ、この脳筋は。
呆れた俺は「はあ〜」と一つ溜息をついた。
でもまあ、本気じゃないと意味がないということだから仕方ない。
相手は元四大魔王の幹部で獣人国の王。獣王とも言われている実力者なのだから、簡単に死ね事も殺される事もないだろうしね。
「んじゃあ闘ろうか、話してても仕方がないし」
「そうだな、シヴァルには見届けを頼むぜ」
「ああ、ヤバくなったら止めてやるよ」
俺とライオルはお互いに背中を向けて歩く。ある程度の距離を取って向かいあった。
俺が腰を落として構えを取る、それに応じる様にライオルも構えた。
「じゃあいくよ!」
「おう、来いや!」
ビッ
俺が先に踏み込んでライオルとの距離を0にする。長身のライオルの懐に潜り込み、右脇腹を狙って左拳を振るう。
ガシ!
ライオルが右手で手首を掴んでボディーブローを止めた。避けると思っていたので意外だったけど、それはちょっと舐め過ぎじゃないかな。
俺は右拳をライオルの鳩尾目掛けて突き上げる。さっきの攻撃よりも1段階力を入れての攻撃。
ゴン
ライオルが左腕でガードした。また手首を掴みにきたら、それを突き破って腹に一発食らわせてやるつもりだった。でもまあこれも予想通りだ。
俺は両脚に力を込める、その力を右拳へと移動していき、力付くでライオルをガードした左腕ごと押し上げる。
「ふん!」
ブワッ
ライオルの巨体が宙に浮く、俺の左手を掴んでいるライオルの右手の手首を右手で掴み、身体を回して一本背負いの形でライオルを投げる。
そのまま投げ捨てるようにして、ライオルの頭を地面に突き刺す。
「くっ!」
ガツ!
頭が地面へと落ちる直前で、ライオルは左手を突き出して衝突を回避した。
ドゴオオン!
「ぐふぅっ!」
片手逆立ち状態のライオルの無防備な腹に、俺は右の回し蹴りを蹴り込んだ。
ベギイィィン
「がはっ!」
蹴り飛ばされたライオルが宙を舞った。中庭の端まで飛ばされて、そこに生えていた太い杉の木に激突した。
杉の木の太い幹はへし折られ、その杉の木はゆっくりと倒れていった。
☆(ここよりライオル目線)
何だコイツは?
俺様の心に動揺が走っていて、その動揺を止めることが出来ない。
当然だが俺もナスカの奴もまだまだ本気ではない。たが、俺と奴では余力の度合いがまるで違う。違い過ぎる。
正直、奴の最初の攻撃を見てこんなもんかと思った。しかし、その後の一段上にシフトされた攻撃は桁違いだった。
しかも奴は軽く一段上げただけなのだ。まだまだ全然余裕がある。
その攻撃に対処した俺の方には、もう余り余裕はない。
俺は奴の本気を確認しなくてはならない。最低でも、シヴァルに聞いた奴の切り札であるスキル《根性》がどれ程のものなのか確認しなくてはならないのだ。
「ガハハハ、やるじゃねえか。今度は俺から行かせてもらうぜ!」
「ああ、期待してるよ」
クソが、余裕綽々な面しやがって。悪いが本気でやらせてもらうぜ!
「ぬりゃあぁぁ!」
俺様は飛び出しながら、四肢の爪を伸ばしてナスカへと迫る。
リーチの長さはこちらが上、奴の射程範囲外から攻撃を繰り返すしかない。
ビュン
俺様が振り払った右手の爪を奴が躱す。紙一重で無駄なく躱しやがる。
ビュン
続く右足の蹴りもいなされる。爪に引っ掛けられないように、掌を添えて丁寧に受け流された。
ビュン
更に続く左足の後ろ回し蹴りも、まるで会釈でもしているかの様に、軽く頭を下げて躱された。
そこからナスカが、踏み込んでくる。
クソ、また懐に入られた。
ビュン、ガシ
ナスカの右ストレートをギリギリで躱すと同時にその腕を掴んだ。その流れのままに掴んた腕へと牙を立てる。
グル、ズボッ
ナスカの右腕に噛み付いたと思った瞬間、目の前から右腕が消えた。ナスカが腕を捻り、強引に引き抜いていたのだ。
思い切り掴んでいた筈の腕が、簡単に引き抜かれ、唖然としていた俺の目の前に、ナスカの左足が大きく写る。
スダアァァン!
顔面を蹴り抜かれてバランスを崩した俺に向かって、ナスカの追撃の右足が迫る。
ビュン
身体ごと思い切り後ろに飛んで、辛うじて追撃を回避した。距離を取れたことで体制を立て直し、改めて構え直す。
「ちっこいのはちょこまかと素早いな」
「でっかいのは的が大きくてやりやすいよ」
クソ、舐めやがって!
「ガアァァァ!」
咆哮を上げながら、もう一度を俺から突進する。
ビュン、ガツ、ビッ、ビュン、ドガッ、ビュン、ビュン、ガシ、ビュン、ビュン、ドガン・・・・・・。
クソが、全然崩せねぇ!
「どうした、ナスカ。なんなら《根性》っての使ってもいいぜ!」
ビュン、ガツ、ビュン
「ん、これくらいなら使わないよ、あれって疲れるし」
ガツ、ビッ、ビュン
「ライオルこそ、もっと本気出してもいいよ」
ビュン、ビュン、ガシ
「ふん、ぬかすな、小僧が!」
とっくに本気だってんだよ、こっちは!
ビッ、ドゴオオン
「づうっ!」
ヤバイ、ナスカのローキックを内腿に食らって完全に体制を崩された! ナスカはもう次のモーションに入ってやがる。
ダメだ、真面に食らう、避けきれん!
「そこまでだ!」
シヴァルの制止の声がかかり、ナスカの動きがピタッと止まった。
シヴァルが俺の方を見てニヤついてやがる。アイツは俺と何度もやり合ってるからな、俺が本気だった事にも気がついているんだろう。
けっ、嫌な野郎だな。
「強えじゃねぇか、小僧。驚いたぜ!」
「ライオルも流石だね、本気では闘り合いたくない相手だよ」
くっそぉ、だから本気だったんだよ俺は。
悔しいが、俺じゃあコイツの本気を引き出す事は出来ない。コイツの強さは本物だ。
もしかしたらニーズヘイル様よりも強いかもしれないな。
ナスカVSライオルの模擬戦、如何だったでしょうか。
ナスカの戦闘力はメテス戦とそれに続くジュガイル戦を経て、大幅に強さを増しています。
これからのナスカの活躍に期待して下さいね。
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