87・頭痛にノーキン
第4章スタートです。
ラシリア大陸の東南部の勢力図が書き換えられて、早くも9カ月の時が過ぎた。
その間、大きな混乱もなく、新たに自治区として再スタートを切ったベダム、ドゥイルンドとも良好な関係を築けてきている。
新体制となったイスランもシカ連盟総長を軸に纏まりを見せており、正に順風満帆といったところだ。
もうすぐ俺は15歳の誕生日を迎えて成人する。
成人して創造神ゼースの制限から解き放たれれば、俺の能力は格段に向上すると予想され、そうなれば敵対している帝国や教主国への備えも今より容易になるだろう。
あと少し、あと少し頑張れば、大切な家族や仲間達と平和に暮らしていける筈なのである。
「おう、悪いなナスカ、わざわざ来てもらっちまって。奴ももうすぐ来る筈だからよ、もうちょい待っててくれや」
ノックもせず、唐突に扉を開けて入ってきたのはシヴァルだ。彼は不躾に俺の肩を叩いて笑顔を見せる。
「別に構わないけどさ、俺に用って何なのかな? シヴァルは何も聞いてないの?」
「ああ、聞いてねえよ。まあ、来ればわかんだろ」
そう言ってシヴァルは俺の座っているソワァーの隣の席に深々と腰を下ろした。
此処はシヴァルが王様を務めるジベルト国の首都、ジベルトシティーのシヴァルの自宅の応接間である。
ジベルトシティーには迎賓館のような施設はない。王城はあるし、そこ王城内に賓客を迎える設備もあるのだが、シヴァルはそこが好きじゃないらしく、親しい客を迎える時には自宅を使っているらしい。
俺は前々からシヴァルに頼まれてはいたが、色々あってのびのびとなっていた要件を果たす為に、此処へとやって来たのだ。
「ところでシヴァル、ドゥイルンドの方はどうなの、上手くやってる?」
「おう、上々だぜ。元々アイツらはラースの王族にくっ付いてただけだからな。ラースの奴らがいなくなってかえって清々したみたいだぜ、お前らアスリの新技術も使い放題になって喜んでるよ」
「そのラースの王族だけど、教主国に亡命政府を作ってからの動きはどう?」
「色々と言ってきちゃいるがな、実力行使を伴うような大きな動きはねえよ。多分だが、教主国にも煙たがられてるみたいだぜ」
「ならいいけどさ、油断は禁物だよ。タツキやマリの話しだと、教主国の【勇者】シャルカールは相当厄介な奴らしいから」
「おいおい、俺もその場にいたんだぜ。あれの厄介さは身に沁みてるからな、まあ何かあったらお前らにも連絡するし、上手くやるから心配すんな」
コンコン
「旦那様、お客様がお見えになられました」
ノックと共に嗄れた声が聞こえる。さっき俺を案内してくれたワーウルフの老執事だろう。
「おう、空いてっから入って貰えよ」
「かしこまりました」
ガチャ
ドアが開くが顔は見えない。
ジベルト国は魔物の多い国で、シヴァル自体も長身の吸血鬼なので、当然この応接間のドアも通常よりも遥かに高さがある。だがその来客の頭は高いドアの鴨居よりも更に上にあった。
頭を下げてその来客がドアの鴨居をくぐる。全体的に太く逞しい身体がドアを通ると決して狭くはない、寧ろ普通よりも広いドアの巾が狭く感じてしまう。
太いと言っても太っている訳ではない。筋肉が隆起したその身体に体脂肪など殆どないだろう。
鴨居を潜り抜けた頭が上に上がる。ボサっとして無造作にも一応は整えた跡の伺える髪は光輝くような金色の光を放つ。
太い金色の眉に鋭い眼、鼻も口も大きく厳つくも精悍な顔立ち。そして特徴的な金色の鬣。
まるで力の権化かのような百獣の王。巨大な獅子の獣人がそこに立っていた。
「おう、久しぶりだなシヴァルよお、元気か?」
「ああ、まあ元気だけどよ、今日、お前が会いに来たのは俺じゃねえだろ」
「まあそうなんだけどよ、ガハハハ」
大きくギョロっとした眼がこちらを向く。
「お前がナスカかあ、思ってた通り小せえなあ、ガハハハ」
大きな手が差し出され、俺はその手を掴む。一瞬手が握り潰されたかと思う程の力が加えられる。
その手から悪意や俺を試そうという意図も感じられない。この男からすればさして力を入れている訳じゃないのだろう。
「俺がライオルだ、よろしくな、ガハハハ」
【獅子王】ライオル。
獣王とも呼ばれるサバルナ獣人国の国王にして、かつては四大魔王の1体【黒怒竜】ニーズヘイルの幹部だった男だ。
「アスリ獣国の王、ナスカと申します。中々お会いする機会を作れずに申し訳ありませんでした。よろしくお願いしますライオル王」
「ガハハハ、よせよせ、お前も敬語は苦手だって聞いてるぜ、ライオルで構わねえよ」
シヴァルに聞いていた通りの性格みたいだな。俺としてもこの方が話しやすいけど。
「じゃあ遠慮なく。それでライオル、話しってのはどんな話しなんだ?」
「いやな、話しってかよお、お前にお願いしたいことがあるんだけどな、その前によ、俺様と喧嘩しようぜ!」
「はあ?」
突然何を言ってんだ、こいつ。
「いやいや、何も国同士で戦争しようってんじゃねえよ。俺とお前で個人的に喧嘩してえんだよ」
「だから、何で突然喧嘩なんだよ、意味わかんね〜し」
「俺がお前に頼みたい事にも関係してんだって、お前が強えってのは聞いてんだけど、どれくれえ強えのか確認したいんだよ」
駄目だ、薄々気づいてはいたけど、コイツは完璧な脳筋だ。
「まあいいか、俺様が始めればお前もやらねぇわけにはいかねえもんな、勝手に始めさせてもらうぜ」
ヤバイ、ライオルが闘気を練り始めた。マジでやる気だよこのおっさん。
「待て待てライオル、俺ん家潰す気か馬鹿野郎。城の中庭を貸してやるからそこでやれ!」
「悪いけどナスカ、相手してやってくれ。こうなるとコイツはやるまで止まんねえよ」
俺は「はあ〜」と深く溜息を吐いて項垂れた。
「仕方ねえなぁ、やればいいんだろ、やれば」
「ガハハハ、話しがわかるじゃねえか。お前良い奴だなあナスカよお」
結局ライオルと喧嘩することになり、三人連れ立って城の中庭へと移動することとなった。
俺は止まらない溜息をつき、トボトボと歩きながらシヴァルへと質問する。
「なあシヴァル、ライオルっていつもこんな感じなのか?」
「そうだな、大体いつもこんなだぜ。俺が初めて会った時も「力を見せろ」って喧嘩になったしな」
「ガハハハ、あん時は負けて泣きそうな顔してたもんな、シヴァルはよお、ガハハハ」
「あんだと、テメエ、俺が勝った事もあるだろがぁ!」
「10回戦って1度だけなあ、ガハハハ」
結局いつも喧嘩してるってことじゃねえか、厄介な脳筋どもめ、頭痛くなってきたよったく。
文句を言い続けているシヴァルと、どこまでも機嫌の良いライオルの後ろを、面倒くさい奴に関わってしまった後悔の抜けない俺が続いて歩く。
シヴァルの自宅は王城の脇に建てられているので、あっという間に王城の正門へと到着してしまった。
しょうがない、覚悟を決めて喧嘩するとしますか!
28日の誕生日SPについての活動報告を上げました。詳細はまだなので大した情報はありませんが、良かったら見てみてください。
次回は26日に投稿します。
その次の28日は複数回の投稿となるのですが、何話分になるかはまだ未定です。
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連載中[能力はチートだけど・・・]
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




