85・それぞれの思惑
俺達の話し合いの中に突然現れたエウデモル様とドーマルマン。
どーなるんだろうか、この状況。
ドーマルマンの突然の乱入で、どうなるのか心配したけど、エウデモル様の「竜族だけで話し合いをする」という一言で、エウデモル、ズライサラーマ、ドーマルマン、ジュガイルの四柱は、ブルジ山の山頂へと場所を移した。
後でエウデ様が説明してくれるとは言っていたけど、遠慮するように言われたタツキは不服そうな顔をしていた。だがそれも母さんのお茶のおかわり攻撃で機嫌を直さざるを得なかった。
「メテスはドーマルマンと会ったことあったの?」
「ううん、僕も今日初めて会ったよ。僕は他の四大魔王とも会った事ないしね」
「ズライサラーマさんともこないだが初めて、といってもナスカくんに殴られ過ぎて覚えてないけど。エウデモル様にも今日初めて会ったよ」
「あ、うん、ごめん。でもそっか、メテスも初めて会ったんだ。タツキは?」
「我も会ったことなどないのだ。我はナスカと会うまでブルジ山から出た事もないしな」
「そう言えばそうだったな」
基本的に昔の事に関する俺達の知識は、エウデ様に教えてもらった事だけだもんな、この機会にメテスに、知ってる事を教えてもらった方がいいかもしれないな。
「ウォルナットさんって元は精霊だったんでしょ、会った事はないの?」
流石はマリ姉、ナイスな質問だ。
「知ってはいたけど会った事はないわね。精霊はデアミタル様に創られたデアミタル様個人の眷属で、地上の秩序の監視の役目を担っているのだけど、それぞれに担当は決まっていて、自分の担当以外の事は余り知らないのよ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
何かお役所的になってるんだな。
「メテスちゃんってさ、シヴァルくんのお父さんと300年前に闘ったんでしょ。シヴァルくんのお父さんってどんな人なの?」
お、この質問も中々ナイスだな、メソ。
「シヴァルくんのお父さん?」
「確かランスロードって名前だったのだ。【勇者】アイザーって奴のパーティーにいたらしいのだ」
「ああ、ランスロードくんかぁ。ランスロードくんというか、アイザーのパーティーってギリス教の本流、今でいうカソリーク派みたいな信仰をしてた人達だったから、僕とは立場的に相容れない存在だったんだ。だからお互いに闘いは避けられなかったけど、ランスロードくんはいい子だったよ」
「こないだの僕とナスカくんとの闘いみたいに、お互いに仕方なく闘ったみたいな感じだったね。ランスロードくんは凄く強くて僕は負けちゃったけど、別に恨みとかはないなあ」
「今のランスロードくんの立場は知らないけど、前と違う立場だったら友達になれると思うな」
へえ、エウデ様の話しだと、今のランスロードって人は吸血鬼らしいから、前の立場とは違う筈だよな。
「メテス、エウデ様に聞いたんだけど、今のランスロードって人は・・・」
それからも暫くの間、俺達は雑談を続けた。その雑談の中で俺達は打ち解けていって、マリ、メソ、タツキの顔にも笑顔が多くなっていった。
「メテスちゃんて素直な良い娘ね、可愛いし。ウォルナットさんもしっかり者の美人さんだし、二人とも母さん気に入っちゃったわ」
俺の耳元で母さんが囁く。
「いや、俺達がこんなに早く打ち解けられたのは母さんのおかげだよ」
俺も母さんの耳元に囁きを返した。
母さんは優しい満面の笑顔で「任せなさい」とばかりにガッツポーズを作って、俺に見せ付けてきたのだった。
☆
「始祖様は今の創造神ゼースの事をどう見られているのですか?」
「どうとはどういう事じゃ、ドーマルよ」
「正直に言って、俺は昔からゼースを良く思ってはおりません。しかし、その事を度外視したとしても、今のゼースからは野心のようなもの強く感じます。始祖様はそれを感じた事はありませんか?」
「ドーマルマンは嫌いだけど、ゼースの事はあたいも大嫌いだよ。ゼースは爺ちゃんに隠れて地上に干渉してきている。特に最近はその干渉が酷くなってきてると思うよ」
「古竜様、失礼ながら私もそれは感じております。かのゼースめは古竜様を蔑ろにしている節があると思っております」
「うむ、ズライもそのように感じておるのか」
【古竜】エウデモルは眉間に皺を寄せて考え込む。それはエウデモルにも思い当たる節があるという事であろうが、古き友であるゼースを疑いたくはないという思いがエウデモルには強くあるのだ。
エウデモルは視線を右上へと上げる。一見するとその視線の先には何も見当たらないが。
「ティルベルよ、貴様の意見も聞かせては貰えないか。其処に居るのであろう、精霊ティルベル」
「うちに意見なんかないわよ、うちはデアミタル様の指示に従っているだけやからね」
ぼやっと小さな精霊の輪郭が浮かび上がり、次第にそれがしっかりとその姿を現した。蜻蛉の様な羽根を生やした緑色の小さな自由の精霊ティルベルの姿を。
「デアミタルからは何も聞かされてはおらんのか?」
「デアミタル様はご自分の意見をうちらに伝えたりはしないわよ。でもね、うちらがデアミタル様に報告した事の全てをゼース様に伝えていないみたいよ。デアミタル様も少しはゼース様を疑っているのかもしれないわね」
「うちの意見という程のものでもないんやけど、いつもうちや古竜の様子を伺っている天使達が、四柱の竜族が揃った今は、隠れる様にこの場を離れているっていうのは面白くないと思うな」
「そうか、そうかもしれんな」
エウデモルは何かに納得したのか、或いは自分を納得させようとしているのか、真相はわからないが、深く大きな頷きを繰り返す。
「繰り返しになりますが、始祖様はどう考えておられるのですか? 教えては頂けませんか?」
「うむ、いや、わしからは何も言う事は出来んよ。わしもゼースも同じ、創造神ウラース様より生み出された兄弟の様な存在だ。わしが未だにウラース様へ忠誠を誓っておるのだ、ゼースも同じである筈じゃ。ただな」
エウデモルは一度言葉を切って目を瞑る。そのまま大きく息を吐き出して、ゆっくりと目を開いてから言葉を続けた。
「ただ、ナスカ達には注意するように警告しておかなければなるまい。ドーマル、ジュガイルも、お前達の大切にしている者達には警告しておくと良い」
「今の世界の動きは確かに異常じゃ、これだけの異常な動きは地上界だけの影響で引き起こされているとは考え辛い。天界や冥界からも影響を受けていると見て間違いは無いじゃろうな」
そう言ってエウデモルは、視線をゆっくりと上へと上げていく。まるで天界の様子を覗き見るかのように。
そんなエウデモルの瞳には、少しの不安の色が浮かんでいた。
東南諸国編も残すはエピローグだけとなりました。次章は隠す必要もないので最初から章タイトルを付けます。まあ今章の東南諸国編という章タイトルも隠す必要もなかったんですけどね。
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