83・お母さんのアイデアで〜
【反逆の勇者】メテスがアスリ市に現れた。
まあ、来るとは聞いていたのでいいんだけど、何も突然来ることはないでしょうが。
一悶着あったけれど、兎に角も場所を変えてメテスの謝罪を聞く事になりました。
アスリ獣国中央都市庁舎。
アスリ獣国首都として国の方針を定める中央庁舎の機能と、アスリ市の市民の為の方針を定め、且つ、市民の為に運営されるあらゆる業務を執り行う市庁舎の機能も併せ持った、アスリ市内で最大の規模を誇る建物である。
この巨大な建物は、アスリ獣国独自の建設技術である鉄石造りという建造方法で作られている。
鉄石造りとは、ドワーフの鍛冶師達の作った柱や梁をナスカが生み出したオリジナル魔法である鉄魔法で接合して骨組みを造り、メソの新スキルである《鉱物融合操作EX》が編み出した、数種類の鉱石を独自の配合で混ぜ合わせたもので、鉄の骨組みを覆ったものである。
見た目は石造りだが、鉄の剛性と柔軟性を得た事により、高層の建造を可能としたのだ。
試験的に建てられた中央都市庁舎は10階建てであるが、この鉄石造ならば更なる高層の建物も建造する事が可能である。
その10階建ての中央都市庁舎の9階にある中央会議室に、俺達は集まっていた。
「当然の事だけれど、私達も話しに加わらせてもらうわよ、そうよねタツキ」
「当たり前なのだ。我とマリの居ない時に話しても意味ないのだ」
俺、メソ、ズライサラーマが、メテス、ウォルナット、ジュガイルを伴ってこの中央会議室に到着した時には、既にマリとタツキが着席して待ち構えていた。
セントラルチェン市のイスラン本部に居る筈のマリと、ドゥイルンドの王城に居る筈のタツキが、此処に居るということは。
『お前の仕業か? ナビ先生』
『正解です、マスター。マリとタツキにはメテスが現れたら報せる様に命じられていましたし、二人も同席するのは当然と判断致しました』
別に、わざわざ呼んでまで同席しなくてもいいと思うんだけどなあ。
「同席するのはいいけど、二人共落ち着いて話しを聞いてよね」
「大丈夫よナスカ、私は冷静よ」
「うむ、急に暴れたりはしないから大丈夫なのだ」
まあ、二人は俺達の中でも知性派だし、国の重鎮でもあるから同席した方が良いのかもしれないな。
そんな事を思いながら俺達は各々の席に座ると、思いがけない人物が入室してきた。
「まあまあ、皆んなが集まるのって久しぶりねぇ、マリもタツキも元気そうでなによりだわ」
現れたのはタマモ母さんだ。
ティーセットを持って入ってきた母さんは、片腕で器用にお茶を入れ始める。
「母さん、どうして此処に?」
「あらやだ、どうしてって事はないでしょナスカ。久しぶりに皆んなが来てるんだもの、お母さんだってお話ししたいわよ」
さっきまでの殺伐とした空気が、一気にホンワカとしものに変わっていく、母さんには敵わないなぁ。
「貴女がメテスちゃんね。私はナスカ達の母親代わりのタマモといいます。何かナスカと喧嘩したと聞いたのだけど、ごめんなさいね。女の子を殴るような子じゃないはずなんだけれど、全く」
「あ、いえ、息子さんに怪我までさせてしまって、僕の方こそごめんなさい」
「あら、素直そうな良い娘じゃない。今後はナスカ達と仲良くして下さいね」
「いえいえ、僕の方こそよろしくお願いします」
母さんの中ではお客さんという印象なのだろう。メテス達に先にお茶を入れながら挨拶を交わしていく。そして俺達にもお茶を入れてくれると、ズライサラーマのとなりにの席へと座った。
「久しぶりだなタマモ。今回は騒がせてすまないな」
「全然構いませんよ。そんな事よりも偶には私の所にも遊びに来て下さいねズライさん」
母さんに、完全に毒気を抜かれてしまい、俺達側もメテス側も、この場にいる全員の表情が複雑なものへと変わってしまった。
そんな空気の中、メテスが一番に立ち上がって謝罪を始めた。
「えっと、僕としては立場上、ナスカくんと闘ったのはしょうがなかったと思っているんだ。でもね、その闘いに竜族であるジュガイルが乱入したのはルール違反だと思う。本当に悪かったよ、ごめんなさい」
メテスは深々と頭を下げた。その行為は真に本心からのものであると見える。
闘っていた時にも思ったことだけど、このメテスという大魔王からは心の裏側が見えてこない。本当に裏表のない人物なのだと思う。
「ジュガイルよ、メテスは貴様の所為で頭を下げているのだ。貴様からも言う事があるんじゃないのか?」
「くっ!」
ズライの言葉にジュガイルが顔を顰める。それでもジュガイルも席から立った。
「ナスカといったか、メテスの言う通りだ。今回は全面的にあたいが悪かった。謝罪する」
頭を下げ続けるメテスの隣で、悔しそうか顔を浮かべながらも、ジュガイルも深々と頭を下げた。
「もういいですよ、頭を上げて下さい。メテスとギリス教のプロステート派との事は、エウデ様とズライから聞きました。俺も立場上からルタ総督を逃す訳にはいかなかったから、俺とメテスの闘いは避けられなかったものだし、メテスの助けに入ったジュガイルの行動も心情的に理解出来る。謝罪は受け取りましたので今後の事を話し合いましょう」
「皆んなもそれで良いよね?」
「そうね、私が怒っていたのは地上に干渉したジュガイルのルール違反に対してだから、謝罪してくれたのならばまあ納得するわよ」
「うむ、我もマリと同意見じゃ。まあ、竜族の血を引く我としては、そこの竜を一発殴りたい気持ちもあるがな」
「メソもいいよ。メソもちゃんとルールを守ってたエウデのお爺ちゃんやズライさんを見てたから怒ってたんで、メテスちゃんには怒ってなかったし」
「そういう事だ。皆、貴様に対して怒っていたのだ。よく聞いておけよジュガイル」
「く、くそ、だから謝ってるだろ。メテスとウォルナットにも散々怒られたよ、ちくしょう」
悪態をつきながらも、ジュガイルは頭を下げ続けている。基本的にはこの竜も良い奴なんだろうな。
「あら、良かったわ。これで皆んな仲直りね。仲が良いのが一番よね、ナスカ」
「そうだね、母さん」
母さんの一言で、また場の空気が弛緩する。結果的に母さんがこの場に居てくれて良かった。流石は母さんだ。
謝罪の件はこれで良いとしても、これからの事についてはメテスとちゃんと話し合っておく必要がある。
それについてはナアナアには出来ないし、寧ろこっちが本題だからな。
タマモ母さんが久しぶりに登場です。もっと出番を増やしたいと思っているタマモですが、中々そのチャンスがないんですよね。
今回、登場させることが出来て良かったです。
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