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【反逆の勇者】メテス

 今回は番外編【反逆の勇者】メテスの過去話です。


 ナスカとメテスの戦いも最後まで書いたのですが、このタイミングが一番良いと判断して先に持ってきました。


 過去の説明なので箇条書きですが、作者的には気に入っている物語なので期待して下さい。

 メリゲン大陸。

 最大の面積を誇る中央のラシリア大陸からは、東の大陸などと呼ばれているが決して小さくはなく広大な面積を有している。

 通常、森は多くの魔物が支配する魔の土地だが、豊かな森林を数多く抱えるこの大陸に、強大な魔の勢力は存在していない。代わりに4つの人間の大国が覇権を競い合っていた。


 その内の一つがメルカリーナ教国。

 メリゲン大陸の北西部から中央部を抜け東部に至るメリゲン大陸の3分の1を支配する最大の大国だ。

 このメリゲン大陸最大の大国は、ラシリア大陸の多くの国でも国教として影響を与えているギリス教のメルカリーナ教会が直接治める教国である。


 メルカリーナ教国にも多くの森林が点在している。その森の一つに小さな女の子が迷い込んだ。

 当時の年齢は僅か2歳。この人間の少女が何処で生まれ、何故この森に迷い込んでしまったのかは定かではない。

 だが、僅か2歳の小さな少女が森へと迷い込んでしまった事実は、少女がこの森で短い生涯を終える事を意味していた。


 森で少女に興味を持った種族がいる。その種族とは幻獣エント族。植物系の幻獣で、その種族の持つ獣人化の能力は特別に樹人化と呼ばれている。

 エント族が少女に興味を持ったのも偶然である。少女の深緑色の髪の毛がエント族を庇護する精霊の髪の色と偶然同じ色であったからだった。


 エント族を庇護していたのは、森の精霊ウォルナット。

 地上の秩序を監視する役目を持つ、大神デアミタルの眷属にして、自らも神の一柱として森を監視する森の精霊である。


 エント族がこの少女を自分達で育てたいと申し出てきた時、ウォルナットは反対した。それが森の秩序を乱す行為になるかもしれないと思ったからだ。

 だが、エント族は食い下がった。

 始めは髪の色に興味を持ち、自分達の守護者と同じ髪を持つ少女が、自分達の森で朽ちる事を哀れに思っただけだったが、魔物である自分達に屈託ない笑顔で擦り寄ってくる人間の少女ことを、いつしか心の底から守りたいと思っていたからだ。


 エント族の熱意に押されたウォルナットは、成長したら人間の世界に返す事を条件に、その保護を認めた。そしてウォルナットはその様の監視を続けた。


 少女はよく笑う子供だった。エント族によく懐き、まるで本当の家族の様に接していた。その姿を見ていたウォルナットは、自分もその少女の成長に関わりたいと思うようになった。


 ある日ウォルナットは、自分の想像神であるデアミタルに、監視という神の役目を辞し、精霊であることを辞め、地上界に降りたいと願い出る。

 ウォルナットの願いを聞いたデアミタルは戸惑った。精霊を辞めるという事は不死ではなくなるという事だ。我が子同然の眷属がいずれは死ぬ存在になるという事だからだ。


 デアミタルには想いがあった。眷属である精霊達に寛大でありたいという事。精霊達の考えを尊重してあげたいという事。その自らの想いに従って、デアミタルはウォルナットの願いを聞き入れる事を決めたのだ。



 地上界に降りたウォルナットは新たな種族となった。その種族はエントと同じく植物系の獣。エントとは全く別の物だが、上位種とも言える種族、霊獣ドライアド となったのである。


 ネームドであり、力ある魔物となったウォルナットは少女に名前をつけた。メテスという名前を。


 メテスはスクスクと成長していった。

それと共に森で育つメナスの身体能力は人間とは思えない程に強く成長を遂げる。

 力をつけ、生物として上位の存在に成長していくメテスは、エント達にも名前をつけていった。自分の大好きな家族達に親しみと感謝を込めての名付けだった。



 強く可愛い娘に成長したメテスは14歳になった。ウォルナットが勧める、成人を前に森を出て人間の街で生活する事を、人化出来るウォルナットが共に行く事を条件に、渋々承諾したメテスは、家族の棲む森に別れを告げ、近くの街へと向かった。


 人間の街に住む事になったメテスとウォルナットは、ギリス教の孤児院を生活の拠点とする事になった。魔物を絶対の悪として認めないギリス教の孤児院に、霊獣であるウォルナットが住む事は危険ではあったが、人間の街に何のツテもない二人が住むには仕方ない選択だった。


 人間の街に住む以上、お金が必要になる。ウォルナットは冒険者となる決意をする。

 登録の為に冒険者ギルドへと向かったウォルナットにメテスもついていった。

 冒険者に登録する為には、適した職業を決める為に鑑定魔道具で適性鑑定を受ける必要がある。

 二人の暮らす街は小さく、冒険者ギルドの規模も小さい為に、それほど優れた鑑定魔道具が備わっているわけではないが、ウォルナットの人化がバレる危険もあった。

 二人の間に緊張が走ったが、この鑑定では事無きを得る。

 ホッとして、ウォルナットが登録事務を続けている時に、ギルドの受付嬢が戯れに「お嬢ちゃんもやってみる?」と言ってメテスに話しかけた。

 メテスが暇つぶしに受けた鑑定が驚愕の結果を表す。適性職業の中に勇者の文字が入っていたのだ。



 鑑定の結果はメルカリーナ教国の首都にも送られ、メテスは首都の冒険者ギルドで再鑑定を受けさせられた。だが、結果は同じものであった。


 メテスは特例として14歳で冒険者ギルドへと登録された。冒険者になる事は承諾したメテスだが、首都に住むようにとの要請は断り、小さい自分の街へと戻ってきた。

 メテスは家族達の棲む森から、遠く離れる事は嫌だったのだ。


 ウォルナットとたった二人のパーティーを組んだ【勇者】メテスは次々と功績を挙げていった。メテスとウォルナットの地位はグングンと上昇していく。それに比例するように、獲得する金額も上昇していく。

 メテスとウォルナットのパーティーは、そのお金の大半をお世話になっている孤児院に寄付していた。そして、その金額が更に増えれば、周辺の街の孤児院にも寄付を広げていく。

 メルカリーナ教国内の孤児院は、その殆どがギリス教によって運営されている。

 当然、メテスの地元周辺のギリス教教会にお金が集まる結果となった。



 2年後、【勇者】メテスは地元の英雄となっていた。

 これにはメテスの性格も大いに関係している。素直で明るい性格のメテスは、何処に行っても人気者だった。地元の教会の神官達からも絶大な人気を誇っていた。


 だが、この性格が仇となる事が起こってしまう。素直故に嘘の苦手なメテスは、魔物を嫌うギリス教の教えに反することを時折漏らしてしまう。良い魔物もいるのだと。

 ウォルナットからは、よく注意されていたが、自分を育ててくれた家族達が悪く言われる事に耐えられないのだ。


 ある日、メテスは仲の良い神官に家族達の事を漏らしてしまう。自分は幻獣エント達に育てて貰ったのだと。


 首都を治めるギリス教メルカリーナ教会本部の神官達は不満だった。その働きには満足しているが、教会本部の度重なる要請に従わず、地元に固執する【勇者】メテスの行動に対してである。

 教会本部の不満は募り、噂に聞くメテスの教義批判ともとれる発言に対しても問題にしていった。


 ある日、教会本部の送り込んでいた密偵が決定的とも言えるメテスの発言を掴んできた。それはメテスが魔物に育てられたという耳を疑う程の大問題だったのだ。


 ギリス教の教えを至上なものとするメルカリーナ教国の所属の勇者が魔物に育てられたなどと、認められる事ではない。

 もし仮に事実なら、いや事実でなかったとしても、それに繋がるようなものは痕跡も残す事など出来ないのだと。



 教会本部は、メルカリーナ教国の東部にある森の魔物が暴れているので、それを殲滅するように【勇者】メテスのパーティーに指令書を送った。

 メテスとウォルナットは指令書に従って、東部の森の魔物と戦ったが、数こそ多かったものの、飛び抜けて強い個体などはいなかった。自分達が名指しで送られる程の脅威とは感じなかったのだ。


 胸騒ぎがして、何とも言えない不安に襲われたメテスは急いで地元へと戻っていった。そしてその途中で有り得ない光景を目にしてしまう。



 遠くで森が燃えている。



 メテスは全力で走り始めた。段々と近づいていくうちに場所が特定されていく。

 燃えている森が自分のよく知る場所だという事が、自分の何より大切な場所だという事が。



 燃えているのは家族達だ。

 自分の育った森が燃えていた。



 メテスが到着した時には、もう炎は上がっていなかった。森からは煙だけがモウモウと立ち込めていた。

 近くでは地元の街の人や神官達が真っ黒な顔で茫然と立ち尽くしていた。

 必死に消そうとしてくれていたのだろう、手にはバケツやら柄杓やらの水を汲めそうな物を掴んでいた。


 メテスは一つの嫌な気配に気づいて、その方向に顔を向けた。

 一人の神官服を着た男がニヤついた顔で立っていた。その男の顔にメテスは見覚えがあった。教会本部で見た事のある男だ。

 その瞬間にメテスは全てを理解した。



〈ブチッ〉



 メテスの中で何かが切れた気がした。

 次の瞬間には【大魔王】メテスが誕生していた。


 メテスがその男を殺そうと思った時には、既に植物の蔦に巻かれて締め上げられていた。その蔦は隣に立つウォルナットの手から伸びていた。ウォルナットの目にも怒りが灯されている。



 メテスとウォルナットはメルカリーナ教国の首都へと飛んだ。


 虐殺。


 虐殺に注ぐ虐殺。動いている物は全て殺した。自らの生を懇願する物を踏みつけて動かぬ肉片へと変えた。


 首都を壊滅し、地元へと戻る途中にある全ての街を、村を壊滅した。

 皆殺し。全ての人間を許す気など無い。


 そして、メテス達は地元の街へと帰りついた。ここにいるのも人間、家族達を焼いたのと同じ人間だ。

 虐殺を開始しようとしたメテスの目に、一つの光景が飛び込んできた。

 街の中心にある広場に2本の樹の苗木を植えていた。メテスもよく知る苗木だった。


 その苗木はエントの魂を宿した苗木。

 ラワとスプリース。メテスの大事な妹達の魂を宿した苗木。

 街の人達が、魔物を認めない筈のギリス教の神官達までもが、その苗木を大事そうに植え替えていた。


 そこで初めてメテスとウォルナットの虐殺の手は止まったのだ。



 メリゲン大陸は新しく生まれ変わる事になった。

 大魔王となった【反逆の勇者】メテスは、その幹部の【堕天の樹人】ウォルナットと共にメリゲン大陸の全ての国を攻め滅ぼして大陸を統一した。

 統一した国を治めるのは新生メルカリーナ教国。その国教はギリス教プロステート派であり、総本山のメルカリーナ教会が国を治めている。


 ギリス教プロステート派とは、元はギリス教ではあるが全く別の宗教と言える。

 メテスに忠誠を誓った神官達が新たに興したプロステート派は魔物にも寛大であり、害がないと認めれば魔物に市民権を与える事もある。

 因みにプロステートとは、メテスの地元の言葉で「反抗する者達若しくは正す者達」という意味で使われる言葉だ。



 それから数年後、この地に竜の一団が訪れた。その竜族を率いていたのは【絶風竜】と呼ばれる緑色の竜だった。

 その緑の竜は、メルカリーナ教会の神官達に「想像神や古竜の考えが納得出来ないので家出して来た。暫くこの地に身を置く」と言ってきた。

 メリカーナ教会は「この地に迷惑をかけないのであれば、いつまで居ても構わない」と返答した。

 その返答に気を良くした緑の竜達は、メリゲン大陸の空を自由に飛び回っていた。


 ある日、緑の竜は魔物と楽しそうに遊ぶ一人の少女を目にした。

 その少女は人間にして超越した存在で、既に肉体の成長も止まっていた。

 小さな二人のエントの女の子と遊び少女の笑顔は本当に楽しそうで、それを見守っているドライアドの女も満面の笑顔で笑っていた。

 その光景は見ている緑の竜の心まで楽しませてくれている。


 緑の竜はその少女に話しかけてみる事にした。


「あたいは【絶風竜】ジュガイル。あんたは何者なんだ」


 少女は満面の笑顔のまま答えた。


「僕はメテス。大魔王だよ」

 過去話は[能力はチート・・・]では2回書いてますが[転生5回目・・・]では初めてですね。


 駆け足の箇条書きにしては異例の長さになってしまいました。作者がメテスのキャラを気に入ってしまったのが最大の要因ですね。すいません。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中[能力はチートだけど・・・]

 この小説とリンクする作品です。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n8548fz/


 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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