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不幸続きで転生5回目、今回こそ生き延びてやる  作者: ubn
第3章 東南諸国編[東南諸国動乱]
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76・電撃作戦・後編

 ラース王国側の人間達は、ライブフィードの映像を見ながら硬直してしまっている。まだ終わりじゃないのだけどね。

 その中でただ一人だけ、教主国の【勇者】ゴドロワだけは画面を見ずに、私とジホムの【勇者】シカのことを睨みつけている。


 ゴドロワの左手は、シカに深く斬りつけられた右腕の傷を押さえるように添えられている。その傷から流れ出ていた血液は既に止まって、いや、傷自体が既になかった。


 おそらくは無詠唱の治癒魔法による効果だろう。聖騎士には治癒魔法の得意な者が多いと聞く。ゴドロワもそうなのだろう。


「クソ女ども、絶対にぶっ殺してやる!」


 ゴドロワが呻く様に呟く。その言葉にシカが反応する。


「なんやぁ、あんたさん男尊女卑主義かいなぁ。可哀想やけどぉ、あんたはんではうちやマリはんは勿論のことぉ、アスリさんとこのフェリはんやシザールはんにも敵いまへんと思いますよぉ」

「あんたさん、闘級って知ってはりますかぁ?」


「馬鹿にするんじゃねえよ、強さを表す指標のことだろが、それがどうした?」


「うちは《闘級鑑定》いうスキル持ちでしてなぁ、マリはんの話しの途中やから詳しくは言わんけどぉ、先程の女性4人とジベルトのシヴァルはんもあんたさんより格上ですぅ。闘級が全てやおまへんけどぉ、これだけの格上に囲まれて勝てると思ってはるん」


「チッ、クソが!」


 腐っても勇者だ。今、この場では勝ち目の無い事くらい、ゴドロワにもわかっているのだろう。ゴドロワは舌打ちすることしか出来なかった。


「ではライブフィードの説明を続けさせて頂きますね。ライブフィードの映像は、交信するだけの時と同じ様に、距離の制限を受けません。次に、長距離映像をご覧頂きましょう」


「何やっていたのだ、マリ。あんまり遅いから、我の方は終わってしまったぞ!」


ヴワオン


 映像を映す前に、タツキの声が本会議室に響き渡った。その直後に映像の方も映し出される。


「あ、あの城は我が国の・・・そ、そんな」


 ドゥイルンド王国の代表、バラサが落胆の言葉と共に膝から崩れ落ちる。

 映し出された映像は、ドゥイルンド王国王都の城が落城した様子であった。


「イルドが近いってことで、我がドゥイルンドに赴いたわけだが、過剰戦力だったんじゃないか? この程度の相手なら、キララだけで充分ではないか。全く、つまらん!」


「そう言わないで、まだ警戒していてよタツキ」


「わかってるのだ、が、何かあったら直ぐに呼ぶのだぞ」


 不満を漏らすタツキを宥めて、私は続ける。


「では、ここで、アスリ獣国の国王である私の弟にも皆様に挨拶してもらいましょう。ナスカ、よろしく」


パッ


 ドゥイルンド王国を写していた画面が切り替わり、先程の城とは別の城が落城している様子が映し出される。


「そ、そんな、我の・・・我のベダム城までが・・・」


 天を仰ぐホミン=ベダム女王を無視して、画面に映るナスカが話し始める。


「本日は野暮用で、大事な定例会議に出席出来ず申し訳ありません。アスリ獣国国王としてお詫び申し上げます。しかしながら、姉のマリに全権を委任しておりますので、会議の進行に問題はないと考えています」


「ナスカ、そっちはどんな感じ?」


「ああ、大体終わったよマリ姉。城の方はロロに任せて、俺はこれからプロステート派のベダム教会を落としに向かうよ。マリ姉も引き続きよろしくね」



「マリ様、ザリです。帝国兵2万がブルジ山北西の森に現れました。迎撃の許可をお願いします」


 ナスカとの通信直後にザリより、緊急入電が入ってきた。ザリの声は落ち着いている。


「やれそう?」


「帝国は、ブルジ北側にアスリ獣国が街を建設中だという事を知らない様子です。今なら自分の部隊だけで、楽に殲滅出来ます」


「ブルジの北側に街だと? そんな話は聞いていないぞ?」


 帝国のガリン大使が非難の声を上げる。そんな事は帝国の調査不足であって、私達の知った事ではない。


「じゃあお願いね、ザリ。援軍はいる?」


「了解しました。援軍は必要ありません。では御免」


パッ


 映像をブルジ山北西の森に切り替える。ザリの奇襲が見事に成功して、帝国兵が次々と倒れていく。問題はなさそうだね。


「他の警戒中の部隊、報告をお願いします」


「西ファスルトのオーリンです。帝国と真ニスリーン王国の連合軍が現れましたが、敵の先陣部隊を私とゴブークの隊で撃破しました。現在は私達とマルサン公国の連合軍との間で睨み合いの状態で動きはありません」


「西セコードのカンプです。こちらには敵部隊は現れておりません」


「ドルベ公国のヴァルグ。こちらも動きはなし」


「ヌドゥリウル公国のググです〜。真ニスリーン王国軍が現れましたが、初戦で引っ掻き回してきました〜。現在も小競り合いは続いてますが〜、自分達も〜ヌドゥリウル公国軍も〜損害は出ていません〜。まあ楽勝ですね〜」


「ガリア王国のキラミです。アナデリ族長国連邦の軍が来ましたけど、うち達が空から、ガリア王国の将士隊が陸からで散々叩きましたさかい、アナデリは退却を始めてはりますよ」


 予想通りに多方面から攻めてきたみたいだけど、どうやら問題はないみたいね。これなら心置きなく本題のラース王国に移れるわね。



「アスリ獣国のライブフィードの機能についてはご理解いただけましたか? 最後に近場の映像をご覧頂きたいと思います」

「グライス、始めてくれる」


「了解したよ、マリ。イスランの本部棟は放置で本当に問題ないのだな?」


「問題ないわ、グライスは王城に集中して」


「ああ、任せろ!」


ヴオオン


 新たな映像が浮かび上がる。写っているのは私達のいるイスラン本部棟の隣の建物。ラース王国の王城である。


「な、僕らの王城に何をする気だ!」


 慌てて大声を上げるカール王子に、私は冷静に答える。


「今から、攻め滅ぼしますよ」


「何を馬鹿な、そんなこと出来るわけがない・・・な!」


 虚空に映るラース王城の周りに、次々とアスリの獣達が転移して現れる。


「な、なんだ。一体何処から?」


「私達、アスリの国民は転移が得意なんですよ。一瞬で城を囲む事など、簡単な事ですよ」


 慌てたカール王子は、本会議室のカーテンを開き、窓を開け放って、肉眼でもって王城を確認する。


 その時にはもう既に、王城を取り囲んだアスリの獣達は、王城に攻撃を開始していた。


「ラースの王兵達よ! こっちはいい、城を、俺の城の救援に向かえ!」


 この建物を囲む兵達に大声で指示を出したカール王子は、こちらに向き直って私を睨む。


「貴様ら! 貴様らなんぞに俺の国で勝手な真似はさせんぞ!」


「あら? 貴方の一人称は僕ではありませんでしたか、カール王子」


 口調はおろか、あの嘘臭い笑顔も消えて、カール王子の目は吊り上がっている。


「やかましいわ、貴様! 貴様の様な女郎如きに俺の国で好き勝手されてたまるか!」


「救援なんかさせませんよ。何故、私がグライス達にこの建物を囲む貴方の兵を攻撃させなかったと思っているんですか? 必要ないからですよ。ねえ、フェリ!」


「ほい、お任せを、マリ様!」


 フェリが3階の窓から、颯爽と飛び降りる。そのフェリの影からは、たくさんの獣達が現れ始めた。瞬く間に増えていくフェリの部隊は、この建物を囲む兵達に攻撃を開始する。


「かっかっか、このままではアスリさんにいいところを全部持っていかれてしまいますねえ。シカさん、勇者さんは頼みましたよ」


「この場はわたくし達に任せる様に、ナスカさんに言った手前、何もせずではガリアの沽券に関わります。ミャンボ、貴方もついてきなさい」


「俺はゴドロワをやる。ブラドショーとレイナは外の奴らを殺れ! 行け!」


 ジホムのケヤス将軍、ガリアのキヨナ女王とミャンボ将士、ジベルトのブラドショーとレイナが、次々と窓から飛び降りて参戦する。

 ラースの軍勢は為す術なく、見る見るうちに瓦解していく。


「クネクモ、この場にいるラース、ベダム、ドゥイルンドの代表団と、教主国、帝国の大使を拘束しなさい。シザールとキヒ姉さんはジャルメ騎士隊長と共に、ミィージョ公王とこちらの理事達の護衛をお願い」

「ゴドロワは私達で取り抑えます」


「おいおい、ゴドロワは俺にやらせろよ、マリ」


「あちらさんは、うちと闘りたがってはるように見えますけど」


「俺にも少しは楽しませろ」


 シヴァルが爪を伸ばしながら、ゴドロワへと詰め寄っていく。


 私はゴドロワへの最後通告を行う。


「どうですかゴドロワ聖騎士長、この場は大人しく私達に従って頂けませんか? 決して悪い様にはしませんよ」


 口から血を流す程に歯をくいしばり、こちらを睨み続けるゴドロワだが、私の提案に答えることが出来ずにいる。



「それは駄目です。私が困りますから」


『マリ、後ろ!』


フシュンッ、カインッガキィン、


 突然のアクラさんの声に、私は反射的に横へと飛んだ。

 私の後ろに唐突に現れた影からの一撃を辛うじて躱したが、影は直ぐに二の太刀を放つ。

 シカが刀を抜き、影の二の太刀を私の顔面スレスレで止めた。直後、シヴァルが影に向かって爪を振るうが、影はもう1本の剣を抜いて楽々と止めてみせた。


「うわあ、反応早いですね。斬ったと思ったんですけど」


 影は私達の間を悠然と通り抜けて、ゴドロワの元に向かう。


「大丈夫ですかゴドロワ先輩?」


「クソ、手前、何しに来やがった」


「助けに来たのに酷いなあ先輩。シモンアデレ大司教の命令で、先輩とラースの王子を助けて来いって言われたんですよ」


 ゴドロワの元に着いた160センチに満たない身長の小柄な影は、私達の方へと振り向いた。

 黒髪のショートカットが、銀製の軽鎧に映える。ボーイッシュな雰囲気ではあるが、翡翠色の瞳と薄いピンクの唇が可愛いらしい。

 両手には純聖銀製のミスリルレイピアを1本づつ下げている。噂通り二刀流なのだろう。


「私が来たからには、これ以上好きにはさせませんよ。覚悟して下さいね」


 イルド皇制教主国、いや、ギリス教カソリーク派の総本山であるイルド教会の最高戦力、【勇者】シャルカール聖騎士長がそこに立ちはだかっていた。

 う〜ん、マリ視点の話が終わらないなあ。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中[能力はチートだけど・・・]

 この小説とリンクする作品です。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n8548fz/


 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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