75・電撃作戦・前編
章タイトル付けました。第3章は東南諸国編です。
マリ視点、3連発です。
☆
ラース王国側からの宣戦布告は引き出した。
この後に、イルド皇制教主国が誰を出してくるのかによって、ギリス教イルド教会の本気度が見えてくる。
「おい、魔物の分際で人間社会に入り込む輩と、それと行動を共にしている不届き者達は此奴らか、ユタ大使」
イスラン本部棟3階の本会議室の扉が乱暴に開かれ、入室してくる影がある。
やたらと大きな声だが、その影もそれに見合う様に大きい。その大きな影は2つの別の影を引き連れて入ってきた。
「ええ、この者達こそがギリス教の教義を理解しない不心得者達ですよ、ゴドロワ聖騎士長」
【勇者】ゴドロワ聖騎士長。
ギリス教カソリーク派の総本山であるイルド教会の最高戦力である二人の勇者の内の一人。
2メートルを超える筋骨隆々の大男が、白銀の鎧に身を包んで颯爽と現れた。だが。
「なんだ、勇者って言ってもシャルカールじゃない方か。私達の戦力を見誤っているのか、それともイルド教会は本気じゃないってことなの?」
「ああん、なんだと、おい女! まるで俺の事など眼中にない様な言い草だな」
ゴドロワ聖騎士長は口髭まみれの口を開いてマリを恫喝する。
「まあ、少しお待ち下さい、聖騎士長。部隊の方は?」
「おう、言われた通りに展開させたぜ。今頃は終わってる筈だ」
私とゴドロワの間に割って入ってきたユタ大使が、ゴドロワとの会話の後に、私に嫌な笑みを浮かべてきた。
「マリ副国王。ゴドロワ聖騎士長の連れて来られた聖騎士隊の2千名は、既にアスリ獣国大使館とクライムフォール商会セントラルチェン支店への攻撃を開始しております。今頃は制圧している頃でしょう。そして、この建物もラース王国の軍勢に包囲されています」
「貴女がいくらか騒ごうとも、既に体制は決しているのですよ」
ユタ大使の顔が歪んでいる、本当に嫌な笑顔だな。
「では、私の方からも一人、紹介しますよ」
『ハチ、お願い』
『承知しました。マリお嬢様』
フェリの影から、大きな昆虫が飛び出して、私の横に浮かんだ。体長180センチの巨大な蜂は、何故か改造されたメイド服を着ている。
メイド服に意味はなく、ただの趣味らしいのだけど。
「紹介します。アスリ獣国の情報官を務めている、魔獣キラービー族の女王蜂のハチです」
ハチはその蟲の頭をペコリと下げる。
「彼女は特殊なスキルを持っていまして、配下の蜂達の視覚を共有出来るんですよ」
「それともう一つ、ライブフィードには一般に公開していない機能がいくつかあります。その機能は、私達、アスリ獣国民にしか使えない、アスリ専用ライブフィードの中にあるのですが、ご覧頂きましょう」
「ハチ、お願いね」
『はい、お嬢様』
ブオウンッ
「おい、何だこれは?」
「何だ? 空に絵が浮かんでるぞ!」
「どうなってるんだ。一体?」
空に映像が映し出される。途端にラース王国側の人間が騒ぎ始めた。
まあ、初めて見た人は驚くよね。
「今観て頂いているのは、此処にいるハチが今見ているものです。では視点を別の蜂に切り替えてみましょう」
パッ
「なんだこれは、あり得ない!」
「ば、馬鹿な、俺の部下だぞ、巨象聖騎士団の精鋭だぞ!」
画面に映し出された場所は、セントラルチェン市のアスリ獣国大使館。
その大使館の敷地内に、溢れんばかりの人間が折り重なる様に倒れている。その全員が白銀の鎧を身に着けていた。
「私達、アスリ獣国民は普段からスキル《思念伝達》によって離れた場所同士で会話をしています。その《思念伝達》をライブフィード上で行う事も可能です。では、皆様にも聞こえるように音声を流してみます」
「大使館のキヒ姉さ〜ん」
「はい、現場のキヒです。って何やらせんのよマリ」
「聖騎士隊の皆さんが全然動かないけど、殺してないわよね?」
「戦後交渉の取引材料に使うんでしょ、全員昏倒してるだけで生きてるわよ。そんなヘマしないって」
「フェラー達は?」
「直ぐに次の任務に向かったよ。もう終わってるんじゃないかな」
私は、未だに信じられないといった表情のユタ大使やゴドロワ聖騎士長に向き直り、アスリ専用ライブフィードの説明を続ける。
「アスリ専用ライブフィードには、マルチモニターという同時にいくつもの映像を映し出すという機能も搭載されています。その機能がこちらになります」
ブワオオオウン
空に新たに4つの映像が映し出された。
「まさか、あれは!」
「う、嘘だ、大使館が!」
映し出されたのは、セントラルチェン市にある、ロゾルビエト帝国、イルド皇制教主国、ベダム王国、ドゥイルンド王国、各国の大使館だ。
どこの大使館も護衛の人員は全て昏倒している。
「マリ様、フェラーです。帝国の大使館の制圧は終了しました」
「ありがとうフェラー。後はエソン兄さんに任せて、フェラーはキヒ姉さんの指示に従って」
「了解です」
「シマチョウだす。オラ達も教主国の大使館を制圧しただ」
「ポンゾウっす、ベダムの大使館も制圧したっすよ」
「ポンコです。ドゥイルンドも終わったよ〜、マリ様」
「みんなご苦労さま。みんなはそのまま待機していて」
「「「了解」っす」だべ」
ラース王国側の人達、全員の顔色が真っ青になり、言葉を発する者もいなくなった。ただ一人を除いては。
「貴様ら! いい加減にしやがれ!」
【勇者】ゴドロワ聖騎士隊長が、他の聖騎士達が使う銀製の細身の剣とは明らかに異質な、分厚い銀製剣を抜き、私に向かい襲いかかってきた。
シュバッ、キン
「ぐわあっ、き、貴様!」
「まだ、マリはんの説明は続いてます。もう少し大人しく聞いといたらどないですか」
一瞬。正に一瞬の早業だった。
私とゴドロワの間に割って入ったジホム皇皇の【勇者】シカ=ヤナルカ蒼鹿武士団長が、ジホム皇国特有の切れ味だけを追求された武器、刀でもってゴドロワの剣を持つ右腕の籠手の僅かに上、鎧で守られていない部分を抜き打ちに切り裂いたのだ。
教主国の聖騎士達の銀製武具には、聖銀〈ミスリル〉が含まれている。特にゴドロワの愛剣、厚鋼刃剣は聖銀の含有率も極めて高い。
その自慢の愛剣を振るう時間を、ジホムの勇者シカは与えてくれなかった。
抜かれた筈の刀は、既に鞘の中に収められている。
「この女は俺が止める! お前らはそのお喋り女を殺れ! 殺して構わん!」
ゴドロワの斬られた傷は深い。しかしゴドロワはシカを睨みつけながら、左右の部下達に指示を出す。
「「お任せを!」」
この二人の部下も優秀な者達なのだろう。指示に素早く反応して私に向かってくる。
シュシャッ、ドドオン
「うぐあっ!」
「ぐはあっ!」
二人の聖騎士が銀製剣に手を掛けた瞬間、私の影から飛び出した二つの影に撃退された。
撃退したのは私専属の近衛隊員。ガラジャとクネクモだ。
聖騎士の一人はガラジャの蛇の尾で弾き飛ばされ、一人はクネクモの蜘蛛の脚で蹴り飛ばされた。二人共、既に昏倒してしまっている。
「マリお姉様はわたくしがお守りいたします」
「おい、そこの髭ダルマ! あたしのお姉様を殺せだと、殺すぞ貴様!」
「ば、馬鹿な。俺の部下の中で1・2を争う精鋭だぞ。その二人が一撃で・・・あり得ん、なんなんだコイツら!」
驚愕に目を見開いているゴドロワ。
「ライブフィードの説明を続けてもよろしいかしら?」
私にしてみれば当然の結果だ。気にせず説明を続けるとしよう。
予定していた展開までいけませんでした。長めの話しが続いていたし、2話に分けることにします。
次回もマリ視点。マリ視点4連発となります。
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連載中[能力はチートだけど・・・]
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




