74・茶番劇
今回もマリ視点です。
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アスリ獣国の方針は表明した。言葉的には新技術のこれからの運用方針を示しただけだが、言葉の裏にある、喧嘩売るなら買ってやるという意思表示はラース王国側にも伝わった筈。
さて、どう出てくるかな?
「こんな馬鹿な方策など認められる訳がない!」
「アスリ獣国は開き直る気か!」
「話にならん! 国王を出せ、国王を!」
今や、イスラン本部棟3階の本会議室は怒号に包まれている。だが、それらは只の野次に過ぎず、正式な意見として発言してくる者が中々現れない。
私達、アスリ獣国側の面々からは、発言する気などない。ただ、黙って野次を聞き流していた。
「まあまあ、皆さん落ち着いて下さいよ」
そんな中でラース王国の代表、カール王子が言葉で野次を制しながら片手を挙げた。
「ボボロン、僕の方からアスリ獣国へ質問があるんだけどいいかい?」
「発言を認めます。どうぞ、殿下」
進行役のボボロン理事の許可を取り付け、カール王子が発言する。
やっと正式な発言がきた。
正直なところ、国際会議ってこんなにも面倒くさいものなんだと思ってしまう。
こんな事をいつもやっているキュービ兄さんの凄さを再認識してしまう。
「新技術の運用方針は一先ず置いて、損害賠償の方は支払って頂けるのかな?」
直ぐさまキュービ兄さんが手を挙げて発言する。
「イスラン諸国間での住民の移動の自由は、連合条項の中にも盛り込まれている事です。その事は、冒険者ギルド並びに商業ギルドでも保証されています」
「住民の移動により発生した損害を、アスリ獣国が賠償する義務はないと考えますが」
「マリ副国王も同じお考えですか?」
「はい、私も支払い義務などないと考えています」
ラースのガトリーマム代表が手を挙げて発言する。
「アタシ達は住民の移動だけを問題にしているわけではなく、貴女達の侵略行為そのものを問題にしているのですよ」
「イスランに加盟している国が、他の加盟国を侵略しておいて何も賠償しないなどと、開き直り以外の何物でもない」
ミィージョ国王が手を挙げた。
「僕の意見もよろしいかな?」
ボボロン理事は渋々了承するしかない。
「ラース王国にベダム王国、それにドゥイルンド王国さんは、先程からアスリ獣国の侵略行為を問題にしていますが、何を持ってアスリ獣国が侵略行為を行っていると言うのかな?」
「僕達、南ニスリーン連合公国の国々も、アスリ獣国の新技術を使わせて貰っているが、連合公国内にその様な問題など起こっていません」
「それと先程、ベダム王国とラース王国から、我が連合公国にも損害賠償の請求を受けたが、南ニスリーン連合公国にも支払う義務はないと考えます。
「俺もだ。ジベルト国もお前らに払う金などない!」
シヴァルは手も挙げずに、ミィージョ公に追従する。
キヨナ女王が手を挙げ、ボボロン理事の許可も待たずに発言し出す。
「わたくしの国、ガリアもベダムさんから賠償請求を受けましたが、支払い義務はないと考えていますわ」
カール王子が手を挙げて発言する。
「あくまでも侵略行為そのものが無かったと主張する。そういう事でいいのかな、マリ代表?」
私も手を挙げて答える。
「はい。その認識で間違いでありません、カール王子」
「だそうだよ、困ったね、ガトリーマム」
カール王子がガトリーマム代表に話しかけるが手は挙げていない。
「そういう事では仕方がないですね、殿下」
返答するガトリーマム代表も手は挙げない。
どうやら茶番は終わるみたいだね。
「アタシ、ガトリーマムがラース王国の代表として、緊急議題を提言します」
「アスリ獣国を人間社会の敵性国家として認定し、イスランから除盟して、国家としての機能を解体すべきです」
やっと本音を言ったか。ラースの欲しいのはアスリの新技術だけだから、ナスカさえ抑えればどうとでもなるって訳ね。
「お待ち下さいガトリーマム代表。人間の敵性国家となれば、イスラン内に留まる議題ではありません」
続いてボボロン理事が発言するが、やはり手は挙げていない。もう、イスランの定例会議という体裁を取る気は更々ないという事。
やっぱりうちの諜報部は凄いわね。完璧に読み通りに進んでるわ。
「外部の人間にも入室頂くこととなりますが、よろしいですか、殿下?」
「そうだね、入ってもらって」
カール王子の一言で、二人の男が本会議室に入室する。
待機してる時点でおかしいんだけど、ラース側にはもう体裁を取り繕うつもりなどないのだろう。
ラース王国代表団の両側に、入室してきた男達の席が用意され、男達はその前に立つ。
「ご存知の方もいると思いますが、私はイルド皇制教主国のラース王国駐在大使、ユタと申します」
「自分も同じくラース王国駐在大使、ロゾルビエト帝国のガリンであります」
二人の男は、挨拶を済ませて座席に腰を下ろす。
現れたのは二人の大使だけ、ラース王国はまだ茶番を続ける気みたいで、私はウンザリする。
「大陸中央部の2大国の大使が、何の用ですか? 今はラシリア大陸東南諸国連盟の定例会議中ですが」
ミィージョ公王の質問に、教主国のユタ大使が答える。
「失礼ですが、事が人間の敵性国家に関わる事とあれば、我が教主国も帝国も黙っている訳にはいきません」
「僕は、アスリ獣国が人間国家に敵対行為を行った事などないと言っているのですがね」
「我が教主国は、ラース王国、ベダム王国、ドゥイルンド王国の3国より、アスリ獣国に敵性国家の疑いありとの報告を受けて私をこの場に派遣しているのです。横から口を挟むというのであれば、南ニスリーン連合公国も要らぬ疑いを招く事になると思いますが」
「上等だ、喧嘩売ってんのかよ、おい!」
「待ちなさい、シヴァル」
今にも飛びかかりそうなシヴァルを制して、私が話す事にする。
最終的な結果は同じでも、シヴァルに任せると世間の印象が良くない事になりそうだ。
「アスリ獣国に人間国家と敵対する意思はありません。どうすれば私達の疑いは晴れますかね、ユタ大使?」
「先ずは貴国が、ラース王国側の提案を全面的に受け入れる事ですね、その上で貴国の代表に我が教主国と帝国へ弁明に来て頂きましょう」
「それは流石に承服出来ませんね」
「では我が教主国は、アスリ獣国を人間の敵性国家と認定致しましょう。帝国は如何致しますか? ガリン大使」
「帝国もアスリ獣国を敵性国家として認定する」
「流石は帝国、的確な判断ですね。ではイスラン加盟国の皆様にも立場を明確にして頂きましょうか」
「上等だ。ジベルト国はアスリ獣国を支持するぜ」
「南ニスリーン連合公国もアスリ獣国への支援を表明しますよ」
「わたくしのガリア王国もアスリさん支持ですわ。わたくしは何より帝国が嫌いなんですのよ」
「かっかっか、なんとも長い茶番劇でしたな。ジホム皇国も勿論、アスリさん支持ですわい」
私達側の各国が次々と、アスリ獣国支持の表明をする。
事前に打ち合わせていた事とはいえ、私達の獣の国が受け入れられていくのは、やっぱり嬉しい。
「仕方がないですね。ラース王国は、僕、カール=メイジ=ラース第1王子の名において、アスリ獣国へ宣戦を布告します」
「我らベダム王国も、我、ホミン=ベダム女王の名において、アスリ獣国に宣戦布告する」
「ドゥイルンド王国はラース王国へ全面的に戦争協力を致します」
ラース側の3国も、それぞれ私達との敵対を表明する。残るは2大国のみ。
「それでは、我が教主国もラース王国に協力しましょう。帝国はどうなさいますか?」
「帝国は勿論、人間の敵性国家を討伐するのみだ」
これで、この場の全ての国の立場が明確になった。
『アクラさん、ナスカ達は?』
『とっくに動き出してるわよ。予想通りの展開になりそうね』
『ええ、多分そうなるわね』
ラース王国のカール王子が私の前まで進み出て言う。
「申し訳ないけど、この建物は既に僕の国の精鋭5千の兵で囲ませて貰いました。貴女達の国は元々、多くの魔獣で構成された魔国ですし、此処は僕の国です。卑怯だとは思わないで下さいね」
「別に構いませんよ。それよりも貴方のその嘘くさい笑顔が、いつまで続くか見ものです」
カール王子の言葉を笑顔で返す私の前に、今度はイルド皇制教主国のユタ大使が出て言う。
「余裕ですねマリ副国王。私も援軍を連れて此処に来ているので、貴女にも紹介しますよ」
恐ろしい程に、うちの諜報部の読み通りの展開だ。ここで、誰が来るかで、教主国の本気度がわかる。
さて、誰が出てくるかな?
やっと会議が終わりました。
国家間の会議なので、口調も長ったらしくなるので正直疲れました。
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