72・大陸中央部の情勢と阿保二人
シヴァルの両親がとんでもない大物だという事と、大陸西側の情勢も少し掴めた。
大陸の中央部はどうなっているんだろうか?
「シヴァルよ、たしかお前さんは獣王とも親しくしていたよな。ついでだ、中央部のお前の知っていることも話せよ」
「ああ、構わないぜ、そういえばライオルの奴もナスカと直接話してみたいような事を言っていたからな。俺達にとっては中央情勢の方が知っておいた方が良さそうだ」
ミィージョ公王の意見にシヴァルが頷く。
ラシリア大陸は中央部の大国達の思惑によって、東側と西側に分断されているのだ。
その大陸の分断を意識的に行なっているのが中央部の二つの大国。北の帝国と南のギリス教の教主国である。
北の帝国、正式にはロゾルビエト帝国。
現皇帝の名はズタルリーン=バド=ロゾルビエト皇帝。
国教としてギリス教を掲げているが、カソリーク派でもプロステート派でもなく、ギリス教派ロゾルビエト聖教という独自の形態をとっており、大司教の位階を兼ね備えているズタルリーン皇帝が意のままに操れると言われている。
ギリス教のカソリーク派は魔物を絶対の悪としており、認める事などあり得ないが、ロゾルビエト聖教はロゾルビエト帝国の掲げる絶対的な実力主義と同じで、例え相手が魔物であっても自分達の利益となるなら気になどしない、利得至上主義の団体である。
ロゾルビエト帝国の最高戦力と言われているのは、第2皇女の【勇者】エスカテリナ=キフ=ロゾルビエトだが、謎に包まれた存在で、アスリ獣国の諜報力をもってしてもその実体は何もわかっていないのだ。
ラシリア大陸中央部の南の教主国、イルド皇制教主国。
現在の皇王はガダマ=エス=イルド皇王だが、象徴的存在であり実権はない。
実権を握っているのは、ギリス教カソリーク派の総本山であるイルド教会であり、最高指導者の教皇レオル=ルタール10世である。
イルド皇制教主国には、皇騎士隊の他にギリス教を中心とした聖騎士隊という独自の軍隊を持っている。そして、その聖騎士の中には二人の【勇者】がいる。
【勇者】シャルカール聖騎士長と【勇者】ゴドロワ聖騎士長だ。
とりわけ、シャルカール聖騎士長は【奇跡の人】という二つ名も与えられていて、ギリス教イルド教会はその戦闘力に絶対の自信を持っているという話だ。
ロゾルビエト帝国とイルド皇制教主国では、その国内の通過を許可していない。
東側と西側からの商人や旅行者には、国内の立ち入り場所にも制限が設けられていて、両国内での東側と西側の接触すら不可能である。
この、大陸の分断政策は両国で徹底されているのだ。
よって、大陸の逆側まで抜けるには、中央の魔物が支配する地域を抜ける必要がある。西側から東側へとシヴァルが通ってきた経路だ。
「俺が昔に抜けてきたのは、魔物の支配地の中でも南側に位置する魔国、サバルナ獣人国だ。王様やってんのが獣王、西側では獅子王と呼ばれてたがな、名前はライオル、【獅子王】ライオルだ」
「サバルナ獣人国には魔物もいるが、その国民の9割は獣人だ。【獅子王】ライオルも獅子の獣人だぜ」
「お前はいつも、どうやってその獅子王と連絡を取ってるんだ?」
「大抵はスキル《思念伝達》だかな、俺のジベルトとライオルのサバルナとは僅かな量だが貿易もしてるぜ。ガンモン大河でも南の方の流域に、俺とライオルとが共同で橋を架けたんだよ」
「ライオルとナスカの関係が良くなったら、亜空間トンネルを開いてもらおうと思ってた」
「俺達、アスリ獣国と良好な関係を保ってくれるのなら、トンネルの開通くらい構わないけど、俺と会いたいと言っているの? そのライオルさんが?」
「ああ、なんかナスカに手伝ってもらいたい事があるとか言ってたな」
「だがな、ライオルのサバルナ獣人国と仲良くなるって事は、もう一つの魔国、魔物の支配地域の北側の魔大国との関係は悪化するって事なんだよ」
「実際、北側のエルフの魔国は、俺のジベルト国のことを嫌ってるからな」
「その、北側のエルフの魔国の事もシヴァルは知ってるのか?」
「よくは知らん。知ってるのは、ライオルに聞いた話くらいだな」
「それでも良いから話してみてよ」
「ああ、国の名前はエレンスィリア。【エルフ女王】エルファリアが支配する魔国で、国民は全てエルフ族だ」
「そのエルファリア女王とサバルナ獣人国の獅子王の仲が悪いって事?」
「ああ、実はな、このエルファリアとライオルは300年前は共に大魔王【黒怒竜】ニーズヘイルの幹部で、お袋の同僚だったらしい、お袋の話しでは、その頃から仲が悪かったらしいな」
「【黒怒竜】ニーズヘイルの幹部! 300年前からって、その二人は討伐されなかったの?」
「ああ、親父はニーズヘイルを倒した時にお袋に騙されて吸血鬼になったんだけど、その時点では死んだ事になってたらしい。アイザーの勇者パーティーも四大魔王は倒してるから、それ以上の討伐はしなかったって事になっているが、お袋曰く、アイザー達だけじゃエルファリアとライオルは倒せなかっただろうって事だ」
「んで、それ以来、ライオルとエルファリアはずっと争いを続けていて、人間達が大陸中央部の魔物地帯に手を出さなかったのも、それが原因みたいだな」
300年も喧嘩してるってどんだけ仲悪いんだよ。
しかしまあ、シヴァルに聞いた中央部の情勢はこんな感じだった。
その後も、各国の首脳と中央部の事についても語り合ったが、俺達の当面の問題はイスランの事なので、現時点では放っておいた方が良いという結論に達し、懇親会もお開きとなった。
翌日の朝、朝食の席には二人の顔が歪んだ男の姿があった。シヴァルとケヤス将軍である。
昨夜の懇親会の後に、女湯を覗こうとしたシヴァルとケヤスは、女達の反撃にあったらしい。
ガリアの女王キヨナの氷魔法で凍らされた挙句に、ジホムの【勇者】シカとアスリの副国王マリの二人にボコボコにされたそうだ。
シヴァルは勿論のこと、ジホムの将軍ケヤス=ドガワも中々の阿保みたいだなぁ。全く何をやってんだか。
今迄、北の帝国としか書いていなかったロゾルビエト帝国ですが、名前を伏せていた事にあまり意味はないです。単純に名前を付けたのが遅かったのと、名前を決めた後もなんとなくで北の帝国で通していました。
中央部南の大国であるイルド皇制教主国も同じような理由で、カソリーク派の総本山で通していました。帝国の煽りを受けた形ですね。
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