60・ラシリア大陸東南諸国連合(ES RUN)定例会議
いよいよ定例会議が始まりますよ、
セントラルチェン市の中心にラースの王族が住まう王城がある。その東側、王城前広場を挟んで、向かい合う様に建つこの建物こそがラシリア大陸東南諸国連合本部棟である。
この本部棟の3階本会議室にて定例会議が行われる。
会議に参加出来るのは、各国の代表者2名とその国の選出理事、合計3名だ。
ラース王国だけは理事を2名選出出来る権利を与えられている。
各議題は最終的に投票により決定され、出席者全員が等しく1票づつ投票権を持っている。
国単位ではラース王国のみ4票、他の各国が3票づつの投票権を持っている事になる。
南イスリーン連合公国とナスカ達アスリ獣国は、まだイスランに加盟していない為に選出理事はいない。
しかしながらこの日の最初の議題が、この2国のイスランへの加盟の是非であり、この議題に対しては2国に投票権は与えられていない。
ミィージョ公王による根回しの甲斐もあって、事前の票読みでは問題なく加盟が認められるとの見解が出ている。
「まあそう緊張する事はないぞナスカ、今日のお前の仕事は、イスラン加入後の理事選出くらいなもんだ」
「そうは言ってもさマルサン公、俺はこんな席に出た事ないんだよ」
「本当に子供なのだな、ふっ、こんな子供に我が王国が翻弄されたなどと、笑い話にもならぬ」
本部棟の門をくぐり、2階に充てがわれた控え室に通される途中の廊下。
そこでバッタリと出くわした長身で細面の優男。
その男を目にして、マルサン公王の目つきが変わった。
「ズハ」
真イスリーン王国国王、この男がズハ王か。
イスリーン王国の北部側は真イスリーン王国と改名した。真の一文字を加えたのは、南イスリーン連合公国への当て付けとしか思えない。
「所詮は下賤の者です。王のお目汚しでしかありません。気にする必要はないかと」
「公爵になったらしいなドガシン。恥ずかしげもなく、よくこの場に出て来れたもんだな」
「これはマルサン公王、本日は宜しくお願いいたします」
「ふん!」
マルサン公王とミィージョ公王に、凄まじい殺気と共に睨みつけられていても、どこ吹く風で涼しい顔をしている小さくて小太りな男。ドガシン伯爵、いや、いまは公爵か。
嫌な目つきの男だな。
「アスリ獣国国王のナスカ=クライムフォール=アスリです。以後よろしくお願いします」
真イスリーン王国の二人は何の言葉も発せずに踵を返した。去り際に、ここまで全く顔色を変えていなかったドガシン公爵が、強烈に俺を睨みつけてきたのは印象的だった。
何事も無くってわけには行かなそうだな。
☆
「では、南イスリーン連合公国のイスラン加盟に反対の方は挙手をお願いします」
誰も手を挙げる者はいない。それはそうだ、討議の時にも反対する者はおらず、スムーズに投票まで漕ぎ着けたのだから。
真イスリーン王国の代表達も不気味なほどに静かだった。
「では満場一致で、南イスリーン連合公国のイスラン加盟を認めます」
議長の一言で、会議室は拍手に包まれた。
「次に、アスリ獣国のイスラン加入についての討議に入ります。ご意見をお聞かせください」
即座に一人の男が立ち上がった。誰だあれ? 真イスリーン王国の代表団の人ではない。
「アナデリ国代表のストイコフです。我が国はアスリ獣国のイスラン入りには断固として反対します」
「アスリ獣国は、国民のほとんどが魔物という魔国であります。未だかってイスランに魔国が加入した事などありません。ましてや国王はまだ12歳の子供ですよ。議論の余地すらありません」
一気に捲し立てたなぁ。ここでアナデリが出てくるとはね。まあ予想の範囲内ではあるけど。
アナデリ族長国連邦。
通称ではアナデリ族国と言われている筈だが、アナデリ国と名乗ったって事は、族国と言われるのに抵抗があるのだもしれない。、ら
なにせ国自体が傀儡で、内情は帝国の族国と噂されている国だからな。
ハーテノンの軍事施設で働かされていた民間人は、ほとんどこの国から連れて来られていた。
「魔物がなんだって? 男も魔人、吸血鬼なんだがな」
シヴァルが噛み付いた。
「ジベルト国の選出理事のレイナです」
「アスリ獣国は人間の国と敵対してはいないと聞いています」
「イスランに加盟している、私達のジベルト国にも魔物は多く住んでいます」
「先程発言した国王シヴァルをはじめ、ここにいる代表ブラドショーは魔族モスマン、選出理事を任されている私、レイナも魔族ワーウルフです」
「アスリ獣国を魔国と決めつけるのは、暴論だと考えますが」
「アスリ獣国代表のナスカです」
「アスリ獣国は人間の国に敵対する考えは持っておりません」
「真イスリーン王国代表、ドガシンです」
「先の我が国の内戦に、今、発言したアスリ獣国国王自ら介入しており、12歳の子供とは思えぬ程の無法を働いております。敵対せぬなど詭弁に他なりません」
「そして先程のジベルト国選出理事の発言ですが、ジベルト国民はその8割以上が人間であり、国王も魔国を名乗ってはおりません。アスリ獣国とは比べるべくもありません」
「南イスリーン連合公国のドルベです」
「先の内戦でのアスリ獣国の参戦は、我が国の求めに応じただけであり、決して無法など働いてはおりません」
「南イスリーン連合公国、マルサンだ」
「王制を敷いている国で少年王など珍しくもない。年齢が問題になるとは思えん」
討議は紛糾した。反対派、賛成派の双方ともに歩み寄る気配すら見せなかった。
賛成派は、真イスリーン王国が魔物を使った件やハーテノンの軍事施設の件も糾弾したが、反対派は認めず、知らぬ存ぜぬで押し通した。
結局、議論は進展せぬままに投票によって結論を出す事になった。
「では投票に移らせていただきます。アスリ獣国のイスラン加盟に反対の方は挙手をお願いします」
手が挙がった。真イスリーン王国代表団の3名に、アナデリ族長国連邦代表団の3名、そして、もう1名の手が挙がった。
手を挙げたのは、ベダム王国代表団の中の一人だ。
ベダム王国。
イスラン加盟国の中で最も東南の端にある王国である。
王制国家だが、世界最多の信者数を誇るギリス教の影響を強く受けている国である。
ギリス教は魔物を完全なる悪としており、全ての魔国を認めていない。
「どういう事だ、ギリス教でもあんたは確かプロステート派だった筈だがな、ルタ総督」
同じギリス教の中でも、最大派閥であるカソリーク派は魔物を目の敵にしているが、プロステート派になると少し変わってくる。
プロステート派でも魔物は悪の存在だが、人間への敵対意識を持たぬ限りは認めているのだ。
その事をシヴァルは問うているわけである。
しかしルタ総督は答えない。代わりに隣に座っていた女性が立ち上がった。
「代わりに答えさせていただく。確かに我が国の代表であるルタ総督は反対票を投じたが、同じ代表である私、ベダム王国女王ホミンと選出理事の二人は反対しない。賛成2票に反対1票。これが我が国の立ち位置であると理解してもらえないかな、シヴァル王よ」
「ちっ、回りくどい奴らだな」
つまりは全面的に認め訳ではないって事だ。シヴァルの言う通り本当に回りくどいなぁ。
まあ、なにわともあれ、票決は出されたわけだ。
「8か国25票中、賛成18票、反対7票、3分の2以上の賛成を持ってアスリ獣国のイスラン加盟を認めます」
会議室内にアスリ獣国の加盟を祝う拍手が起こるが、それを搔き消す者達がいた。
「アハハハ、馬鹿馬鹿しい、茶番もいいとこだな!」
「ズハ! 貴様、何を!」
「我が真イスリーン王国は、国王ズハの名においてイスランからの脱退を宣言する!」
長くなるとは思ってましたが、3000文字までいくとはねぇ。
途中で区切るのも興醒めなんで、一気にいきました。
さて、次回からは、第2章もラストスパートです。
楽しみにしてて下さいね。
☆
タマモです。
いつも子供達がお世話になってます。
至らないところもあると思いますが、応援してあげてくださいね。
とても良い子達ですから。
子供達の励みになると思うので、ポイント評価をしてあげてください。
私からもよろしくお願いします。
連載中[能力はチートだけど・・・]
この小説とリンクする作品です。
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https://ncode.syosetu.com/n8548fz/
互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




