53・慣れない王様
「坊ちゃんおはようございます」
「あ、すいません。今は国王様でしたね」
「朝からやめてよエソンさん」
エソンさんは少し考えてから、強い口調で言った。
「いや、やっぱり国王様に向かって坊ちゃんは良くありません。これからは国王様とお呼びしないと」
これは、簡単にはやめてくれそうにないな。
「せめて名前で呼んでくれませんか」
「ナスカ王様ですか?」
「ナスカさんでお願いします」
「それは駄目です。ではナスカ様で」
妥協点はこんなところかな。もう少しくだけて欲しいけど、魔獣達でナスカ様って呼ぶやつ結構いるしな。
「では、それでお願いします」
「はい。改めまして、おはようございます、ナスカ様」
「うん、おはようエソンさん」
ちょっと落ち着かないけど、仕方ないな。
「おはようございます、ナスカ様。昨夜は良くお休みになられましたか」
「叔父さんまでやめて下さいよ」
「いや、横から聴いていて、僕も気をつけようと思ったんだ」
「これからは僕もナスカ様と呼ばせてもらうよ」
もう、勝手にしてくれ!
俺達はセコードの街まで戻ってきた。
昨夜はここ、クライムフォール商会本店の離れに泊まった。
離れとはいってもかなり大きな建物だ。
住み込みで働く人の社員寮にもなっていて、倉庫も併設されている。
エソンさんも住み込みの社員で、家政婦も兼業してくれている。
朝、目を覚ました俺達は、叔父さん達の住む本店2階まで朝食を食べにきたところだ。
「で、叔母さんは何やってんですか?」
「ふにゃぁ〜」
ルルの顔が蕩けている。
叔母さんがルルの首の回りに頭、更にお腹までもをくしゃくしゃに撫でまくり、自分の顔まで蕩けさせている。
またモフモフ好きが一人増えたな。
「いや〜、この子かわいいねえ、ナスカ様」
叔母さんまで様付けかよ。
「おはよう、叔母ちゃん」
「おはようございます、ユフラ叔母さん」
「おはようでやんす、先輩」
「みんな揃ったみたいだね。朝飯にしよう」
叔父さんの一言で、エソンさんが朝食を机の上に並べ始め、マリ、メソ、ポンキチがそれを手伝った。
朝食の準備が出来て、エソンさんも一緒に席に座る。
「「「いただきます」」でやんす」
「食べながらでいいのだが、ナスカ様に聞いて欲しい事があるんだ」
「なんですか、叔父さん?」
「昨夜、家内とも話し合ったんだがね」
「商会の本店を、ナスカ様の首都であるアスリに移したいと考えているんだ」
「えっ!」
驚いた。クライムフォール商会は多くの支店を抱える大商会だ。
その商会の本店をまだ、未開と言ってもいい場所に移すなど、賭けというより自殺行為だ。
「正気ですか?」
「ああ、正気だよ」
「昨日、ナスカ様は手付かずといってもいいブルジ山の鉱石を、国の産物として利用出来ないかと話していたね」
「あの話しに大変興味があるのだよ」
「周辺の森についても調査した事がないと言っていただろう」
「しっかりと調査すれば、貴重な野草がある可能性を充分に秘めている」
「ナスカ王には、それらの独占販売権を我が商会に認めてもらいたいんだ」
「それは構いませんけど、何も本店を移す事はないんじゃ」
「いや、やるなら本腰入れてやりたいんだ」
「ちょうど息子にも店を任せたいと思っていたところだったしね」
「それに失礼だが、ナスカ様のところに商売の知識がある者はいないでしょう」
「私が行けば、その手伝いも出来ると思うよ」
そうか。最後のそれが本音なんだな。
息子のチグス兄さんも既に承知しているのだろう。
俺の周りは、お節介な良い人ばかりだったんだな。
「わかりました。こちらこそお願いします」
俺は深々と頭を下げた。
「店舗はこちらで用意しますので、移転はその後でお願いします」
「ミィージョの支店で修行中のチグス兄さんにも、こちらから、お礼を言わせてもらいます」
「これからもよろしくお願いします。テス叔父さん
朝食を終えて、皆んな各々に一息ついている。
商会の営業時間は10時から、従業員の出社もまだ先の時間だ。
俺は叔父さんと、移転の段取りについて軽く話し合っている。
そんな朝のゆったりと流れる静かなひと時は、一瞬で崩されてしまう。
けたたましい声に切り裂かれて。
「おはようですわ、皆さん。良い朝ですわね」
「朝から元気ですね、ミドリさん」
「ナスカ、あなたはもう国王なのですわよ。さん付けはよしなさい」
ミドリでもそういう事を気にするんだな。
謙遜するところなんだろうが、こいつ相手には正直有り難いな。
「それでミドリ公女殿下、なにか御用ですか?」
「ワザとらしいわね。呼び捨てでいいわよ」
「今日はランチに行く約束なのよ、マリ達と」
ランチ? 今、朝食を摂ったばかりなんだが。
「早いですねミドリさん」
「マリも! 貴女はもう王族なのよ。呼び捨てになさい」
「ランチの前に、お買い物でもと思いましたの」
「やった〜。ミドリちゃんと一緒にお買い物行きたい」
「だから、メソも・・・。メソはそのままでいいですわね」
「じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃ〜い」
「あら、ナスカは行かないんですの?」
「俺はちょっと行くとこがあるんだよ」
「あら、残念ですわね。荷物持ちの予定でしたのに」
用事があって良かった。
「仕方ありませんわね。マリにメソ、行きますわよ」
「「行ってきま〜す」」
「ナス兄ちゃんどこかに行くの?」
「行くよ。ルルも一緒に行くか?」
「いいの? やった〜!」
「あっしもお供するでやんす」
「ポンキチは駄目。お前は今日は店の手伝いだ」
「ガーン!! あれですか? あつしが騙したからっすか?」
その通りだよ。ポンキチ!
実際にはメソが暗殺者の存在を感じとった時点でアンナ、ナビ、アクラが共謀して、自分達だけで解決しようと謀ったらしいがな。
叔父さん達には今日一日お前をこき使う様に頼んであるのだよ。
「もし騙した件なら、マリの姉貴とメソの姉貴、ルルだって共犯じゃないっすか」
「違う、違う。忙しいから人化出来るお前に、手伝いを頼みたいだけさ」
せいぜいこき使われるがいい!
「僕はナス兄ちゃんと行っていいんだよね?」
ポンキチの言葉が気になってるのか、ルルが心配そうな目で俺を見つめている。
安心しろ、お前にも試練を受けてもらうよ。
「ああ、ルルは俺と一緒だよ」
「良かった〜」
ホッとしたルルが、幸せそうな笑みを浮かべる。
クックックッ、今のうちに幸せに浸っていろ。
マリとメソに手を出すと、後が怖いからな。
お前達に割りを食ってもらうことにしたんだよ。
クックックックックッ・・・。
もう何話かは日常話しでいきたいと思ってます。
サブタイトルでもまた遊びたいな。
☆
ラスリルです。
あのね。
ルルくんとポンキチお兄ちゃんがね、前に後書きやっちゃったから、私が一人でやる事になっちゃったの。
私は小さいから、戦ったりは出来ないけどね。
私をまた見たいって人はポイント評価をしてね。
お願いね。
それと、ナスカお兄ちゃん。
ルルくんとポンキチお兄ちゃんに、あんまり酷いことしないでね。
お願いだよ。
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