52・しょうがねえか
「ナスカくん、この度は大変に世話になったな」
「心からお礼を言わせてもらう、ありがとう」
ドルベ元侯爵は俺の姿を見つけるなり、挨拶も早々にお礼の言葉をくれた。
「いえ、ドルベ元侯爵のお人柄の賜物ですよ」
「解放した領民達の話を聞けばそれがわかります」
「君は若いのに本当にしっかりとしておるの」
「マルサン公が気に入るわけじゃ」
「本日はお招きありがとうございます」
キチンとした挨拶をしておかないと失礼だと思い、今更ながら挨拶の言葉を述べた。
「まあ話しは後じゃ、皆集まっておる故、席へ急ごうかの」
ドルベ元侯爵はそう言って、急かす様に俺達を城に通してくれた。
ドルベ元侯爵領の領都フォス。その街の中にあるフォス城へと。
領都フォスと姉妹都市フィスの街を奪還してから、2週間が過ぎた。
その間も俺達はドルベ元侯爵領全域奪還を目指して、前線を駆け回った。
そしてついにはその全域を取り戻したのだ。
現在は北部側からの攻撃も止み、前線も落ち着いている。
このタイミングで俺達は、ドルベ元侯爵からの招待を受けてこの城にやってきた。
今、この場にいるのは俺とマリ姉、それとメソだ。
タツキも招待されていたのだが、面倒だから一度山に帰る、と言って帰ってしまった。
ついでにと俺は魔獣達の撤退を決め、キララとヴァルグ達もタツキと共にブルジ山に帰した。
俺たちは城の大広間に通された。
大きな大理石のテーブルがあり、既に三人が並んで着席している。
マルサン元公爵、ミィージョ元公爵、ヌドゥリウル元侯爵である。
その横にドルベ元侯爵も並んで座る。
俺達三人はその向かいに通されて、並んで着席した。
全員の席の食事の用意が整ったところで、マルサン元公爵が立ち上がって話し始めた。
「ご苦労だったなナスカ。
「いずれ伯爵以下の将軍や隊長達も招いて、戦勝の宴を開くつもりではいるが、今日はこの四人で我慢してくれ」
「代表して私が進行させてもらう」
「今日はお前達に話したい事があってな」
話したい事?なんだろうな。
「お聞きします」
「北部側より停戦の申し出があった」
「重ねて私達の所領の安土と貴族位の復帰を打診してきた」
あれから帝国の介入は見受けられない。
北部側としても停戦の判断は正しいだろう。
ただ、全てを元に戻そうとは虫が良すぎるだろ。
「私達としても停戦は受け入れても良いと思う」
「だが、他の申し出に関しては断固として拒否する考えだ」
当然だと思う。
俺は小さく頷く。
「拒否すれば当然、王国からは正式に離脱する事になるが、それは構わない」
「だが、この機会に私達の相互関係を強固なものにしておきたいのだ」
「それにはもちろん賛成しますよ」
「具体的にはどの様な関係を築くのですか?」
「建国する!」
「建国!」
「ああ。私達四人を公王とした四つの独立した公国を作り、それをまとめた連合公国として独立するつもりだ」
「正式には[南ニスリーン連合公国]となる」
「私達四人の話し合いで私、アガリーン=フォス=マルサンが初代代表となる事も決まった」
「私としては他の三人にやって欲しかったのだが」
「まだ言ってんのかアガリーン。いい加減に腹を括れ」
ミィージョ元公爵、もとい公王が横槍を入れる。
「北部側は受け入れられないだろうが、あちらとて帝国の援助が無ければ戦争を続ける訳にもいくまい」
「停戦を一時休戦とし、北部側に時間稼ぎの機会を与える事で納得させるつもりだ」
北部側は、帝国が動けばいずれは南部も支配出来ると夢見ている連中だ。
その条件なら納得するだろうな。
「ガネーボウのオヤジを助けられなかったのは悔しいがな」
ガネーボウ元公爵は捕らえられた即日に処刑されていた。
その仇といえる北部側と一時的にとはいえ講和を結ぶんだ。悔しいだろうな。
「そういう訳で南ニスリーン連合公国の建国と私の初代代表就任を諸外国に向けて正式に発表するのだが、賛成してくれるか」
「もちろんですよ」
「俺達としても帝国と繋がる北部側は信用出来ない」
「むしろ南部側が北部側と完全に決裂してくれた方が助かります」
「そうか、認めてくれるか」
「ありがとう」
「でだな。お前達に提案があるのだが」
「なんですか?」
領主あらためマルサン公王がにやにやしている。
「お前達も建国せんか」
「はあ?」
「何言ってんですか」
「いやあ、お前達に建国してもらわないと困るんだよ」
困る事なんてある訳ないだろうが。
「お前達に建国してもらって、私達の建国と同時に発表してもらう」
「それと共に両国の同盟を合わせて発表し、互いに互いの国の後ろ立てとして、諸外国に認めさせようということだ」
詭弁だな、ミィージョ公王は大陸南東部の諸国との繋がりも深い。
俺達が建国しなくても諸外国は認める筈だ。
要はついでだからお前達も建国しちまえ。
今なら諸外国も認めるし、好き勝手出来るぞっていうお誘いだ。
しかも俺の考えもわかった上で、堂々と建前を言ってやがる。
にやにやしてやがるもんな、このオッサン。
確かに俺達の仲間も増えてきているし、小さくはあるが管理してる土地も増えてる。
この世界には魔王が治る魔国も複数存在していて、人間の国との繋がりを持つ魔国もある。
獣の国が建国したって不思議じゃないか。
俺は両隣の席に目を移す。
マリ姉はしっかりと頷き、メソは何故かニコニコしている。
渡りに船のタイミングだし、しょうがねえかな。
「わかりました。俺達も[獣の国]として建国します」
「同盟の件、よろしくお願いします」
「そうか、そう言ってくれると思っていたぞ」
「まあ、細かな話し合いは後だな、会食を始めるとしよう」
マルサン公王が会食の宣言をすると、給仕達が一斉にメイン料理の準備に取り掛かった。
しかし建国か、国を興すとなると足りないものが多過ぎるな。どうすっかなぁ〜。
ニスリーン王国の内戦は一応終結しました。
そんな訳で第2章は建国編です。
まだここまで読んでない読者もいると思うので、章タイトルをつけるのはもう少し後にします。まあ2、3日後かな。
第2章はまだ続くので引き続き応援宜しくお願いします。
☆
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以上です。
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