39・救出作戦
マリ達が土の壁と氷の天井を作ったくらいの時間の話しです。
ーーー3時間前ーーー
『報告です。マスター』
『どうしたの、ナビ先生』
『アクラからの報告でファスルトの・・・』
『・・・・・・』
?
『すみませんマスター。アクラとの《思念伝達》回線が切れました』
『再接続に失敗。・・・回線が繋がりません』
『?。アクラと《思念伝達》出来ないって事?』
『その通りです』
ナビ先生が《思念伝達》を使えないって、そんな事今迄に一度もなかった事だ。
「ナスカよ。ナビとアクラの会話は我も聞いてたのだ」
「我の方でもアクラに《思念伝達》を飛ばしてみたが繋がらないのだ」
またタツキは盗み聞きしてたのね。どうすれば回線に入り込めるんだろ?
「タツキも繋がらないのか?」
「うむ。我もこんな事は初めてなのだ」
「そんな事より、ナスカ、ファスルトの村が魔物の大群に襲われているらしいのだ」
「あの領主の懸念が的中したのだ」
「なんだと!」
『ナビさん、それを先に言ってくれ!』
『すみませんマスター。入ってきた報告が、その一文しかありません』
『その為、マスターに充分な詳細をお伝え出来ませんでしたので』
『詳細はわからないのか?』
『はい。魔物に襲われている、というところで回線が途切れました』
『アンナでしたら、始めに多くの情報をまとめて送ってから、確認で話し始めるのですが、アクラは始めからグダグダと話し始めるので』
ナビさんに本当に嫌われてんな、アクラの奴。
「タツキ、どう思う?」
「うむ。いくらアクラからの情報といっても嘘ではないと思うぞ」
タツキにまで言われ放題だな、アクラ。
「まあ襲ってきた魔物の種族と数にもよるが、マリとメソがいれば心配はないんじゃないかな」
「なんならちょっと我が行って見てきても良いが」
『お待ち下さいマスター。たった今アレティーから新たな情報が入りました』
『アレティーから? 何でアレティーから情報がくるんだ?』
『領主の言動が少し気になったので、昨晩、執務室に忍び込むようにアレティーに指示しておきました』
俺のダチに勝手に何させてんの、この人!
『で、アレティーはなんだって』
『領主のところにも、ミドリに同行した執事よりファスルトの情報は入りましたが、《思念伝達》と同じように魔道具通信も切れたようです』
『魔道具通信も切れた? 詳細は伝わったのか』
『いえ、こちらと同じ情報量です』
なんだ。それじゃあ何も変わらないじゃないか。
『ですが、ファスルトとは別の情報が』
『ニスリーン王国に内乱の兆しがあります』
『内乱! 大事じゃないか!』
『確かなの?』
『一昨日、王国の侯爵が一人追放されています』
『この事件が内乱に繋がる可能性は高いと思われます』
『内乱か・・・もしかして帝国が!』
『はい。王国に内乱が起これば帝国は動くでしょう。帝国が内乱を手引きしている可能性もあります』
『だとするとドワーフのおっちゃん達の集落もほっとけないか』
『その通りです。流石はマスター、慧眼です』
お世辞まで言うようになったのね、ナビ先生。
ドワーフの集落とは、此処やファスルトの森の建物を建ててくれたドワーフ達の棲家で、ブルジ山の北東にある。
元々のドワーフの街はその更に北にあり、帝国に近い位置にあるのだ。
ドワーフには腕の良い鍛治師が多く、帝国に多くの武器を降ろしていた。
だが帝国の方針に賛同出来ずに、反発する者達もいた。そんな者達の中から120人が出奔して作ったのが、この集落だ。
現在は鍛治の受注を受ける事が出来なくなった為、主に狩猟で生計を立てている。
鍛治仕事は、偶に俺達が頼むぐらいだ。
ニスリーン王国の内乱に帝国が介入する事になると、帝国が大掛かりな南下を始める危険がある。
ドワーフの集落は帝国に従わなかった者達の集まりなので、大変危うい状況となってしまうのだ。
『タツキにはドワーフの集落に行ってもらった方がいいって言うのか?』
『はい。マリとメソがいる分、ファスルトの方が時間的余裕はあると思います』
どうするかな。ドワーフの集落の方が遠いから、タツキの方が早いけど、ファスルトだって襲撃の規模によっては手遅れになりかねない。
・・・・・・。
前に考えたアレやってみるか。アレなら前よりも早く移動出来る。集まるまでに時間がかかるから、その間に薬の調合を終えられるしな。
「タツキ」
「なんだ、決めたのか?」
「ああ。タツキはドワーフの集落を頼めるか?」
「構わんが、マリ達の方はどうする?」
「俺が行く。ちょっと良い方法があって、この方法なら準備に時間はかかるけど、移動は多分10分かからないで行けると思う」
「《亜空間移動》と違ってそんなに疲れないしな」
「10分だと! なかなか速いではないか!」
「いや、我が本気を出せばもっと早く・・・ぶつぶつ」
何かタツキがぶつぶつ言い始めた。もしかして対抗しようとしてないか、こいつ。
「その準備の間に俺は調合を終えられるし、処置はもうキュービ兄とキヒ姉で出来るから治療にも差し障りない」
「それに内乱に関わる事になるかもしれないので、俺のこの方法なら、ソードウルフも多く連れて行けるしな」
「ソードウルフを全頭集めても、我の方が強いぞ」
だから、いちいち対抗すんなって。
「そうだけど、人間の戦争では多方面の戦いになる事が多いから、数が重要になるんだよ」
「そういうこともあるかも知らんがな、ナスカ」
「お前は寝てないだろ、大丈夫なのか?」
「そこは根性でなんとかするよ」
そこをツッコマれると苦笑いしか出来ないな。
「・・・そうか。そこまで言うのなら我はドワーフの方に行ってやるのだ」
「だが、我が必要になったらすぐに呼ぶのだぞ」
「一瞬で飛んで行ってやるのだ」
「ああ。その時は頼むよ」
タツキが家を出て、あっと言う間に飛んでいってしまった。
タツキって、一度決めたら行動に迷いがないよな。羨ましい。
『エクス、ちょっといい?』
『おお、ナスカ様。息子達が世話になってすまんな』
エクスはソードウルフ族の族長で、ルルの父親だ。
『今、動けるソードウルフって何頭いる?』
『120頭だな。半数近くが熱でダウンだ』
『その子達って借りられる?』
『構わないぞ。ナスカ様にはいつも世話になっている。今回の流行り病では特にな』
『使える事があれば、いつでも使ってやってくれ』
『助かるよ。全員俺ん家に寄越してくれ』
『了解した』
これで良しと。
ソードウルフ達は東の森に散らばってるから、集まるのに2時間半くらいかかるだろう。
その間に調合を終えるぞ。
あっと、一応サンダーバード族にも連絡しといた方がいいか。
『キラミさん、いいっすか?』
『ナスカ様。うちのアホウどもがご迷惑かけてすんまへんなあ』
『いえいえ。病気の時はお互い様です』
『わざわざ連絡くれはるとは、どないしはりました?』
『しばらくの間は、みんなここから出払っちゃう事になるんですよ』
『戦えるのがグライスくらいしか残らないので、留守をお願いしようかと』
『構いません。任しといてください』
『でもグライス様がおりはるんなら、うち達の出番はないかもしれませんなあ』
『よろしくお願いします』
『かしこまりましたわ』
良しと。あと2時間半、いや、練習入れて3時間か。
その時間でなんとか調合を終わらせるぞ。
ナスカ視点になると、何故か説明臭くなるな。
なんでだろ?
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