38・不測の事態
マリ殿とメソ殿に約束したのだ。
この森は某が必ず守り抜く。
『すまんゴブーク。これ以上は持たない』
『いや、少ない体数で良く持ち堪えてくれたでござる』
『礼を言う。ポーク殿』
『オークは下がって集会所の守りに着いてくれ』
『了解した。後は任せる』
正面からの敵をオーク達は20体で押さえてくれていた。
流石は防御に優れたオーク達でござる。
某達ゴブリンには出来ぬ芸当でござるな。
「皆の者、これより某らゴブリンで特攻をかける」
「敵を撹乱するぞ!」
「この攻撃はあくまで撹乱が目的でござる」
「呉々も深追いはするな」
「「「おおーー」」」
『モラ殿達も空からの援護を頼むでござる』
『任せて。戦闘は出来ないけど撹乱は得意よ』
「では行くぞ!」
某達が進軍した矢先であった。
「ぐわあっ、お前達なにを」
「ゴーブル、落ち着け。うわぁ」
「なにをする。ガブリン。やめぬか!」
「何だ、どうしたのでござる?」
「わかりません。ゴーブル達が突然、ぐあっ」
何だ、何が起こってるでござるか。
仲間の中でゴブリンが暴れている。
数は・・・・・・30体ほどか。
ゴーブルにガブリン、それにゴブランもか。
他にも・・・ 一斉に暴れだして・・・
暴れているのは8歳以下の若い個体ばかりだ。
若い奴らばかりが、なぜ?
「やめぬか、馬鹿者があ」
ドゴッ
「ヌワアアァァッ」
駄目じゃな。殴っても止まらぬ。
それに目つきがおかしい、正気じゃない!
「族長!どうすれば?」
「とりあえず殴れ!殴って気絶させろ!」
「味方に暴れる者がいては収拾がつかなくなる」
「しかし、このままでは・・・もう殺すしか」
「ならん。味方を殺したなどナスカ殿達に顔向け出来ん」
「絶対に殺してはならん。殺さずに大人しくさせるのだ」
しかし何故急に若い者だけが?
・・・まさか!
そうだとすると・・・。
まずい、オーリンが連れて行ったのも若いオークばかりでござる。
マリ殿達に連絡を、いや、敵が目の前に迫っているでござる。
立て直しが先でござるな。
「ゴブラ。某が一人で突撃して敵を撹乱する」
「その間にお主らは暴れている者達を無力化して、体制を立て直すでござる」
「一人でですか」
「モラ殿達、飛べる者達に援護してもらう故心配ござらん」
「この場は頼むぞ、ゴブラ!」
「了解しました。ご武運を」
某は駆け出しながらモラ殿に連絡を入れる。
『モラ殿、予定変更でござる』
『某一人で突っ込む故、援護を頼みたい』
『いいけどゴブリン達大丈夫なの?』
『急に暴れだしたけど』
『その事でマリ殿に連絡をお願いしたい』
『某は忙しくなる故』
『いいわよ、何を伝えれはいいの?』
『某の考えでは・・・・・・。そういう事ではないかと思うのでござる』
『わかったわ。すぐに伝える』
『援護の方も頼むでござるよ』
ではそろそろ始めるでござるよ
「うおおおおぉぉぉ〜〜」
「某の目の黒いうちは、ナスカ殿の森に手を触れさせわせぬぞ〜〜」
ズドン、ゴガ、バキン、ドゴッオオーーン
某の強さを思い知るでござる!
☆(ここよりマリ視点)
『とゴブークが言ってたんですけど』
『アクラさん、どう思う?』
『おそらくゴブークの見立てで正しいと思うよ』
『わかった』
『了解したわ、モラ』
『そっちも頑張って』
『ゴブークにも無理しないように伝えて』
『マリ様もお気をつけて』
こっちも早く対処しないと。
「トンキチくん、チンペイくんやめて!」
「どうしちゃったの?」
「メソちゃん」
「マリちゃん、トンキチくん達が」
「その事で話しがあるの。オーリンも聞いて」
「すいませんマリ様。自分が連れてきた者達が暴れだして」
「この者達の始末は自分が!」
「ダメだよオーリンくん。殺したりしたら絶対にダメなんだからね」
「しかしメソ様」
「いいから聞いて二人とも」
「オーリン、貴方8年前にこの村で暴れた時の事はあまり覚えていないのよね」
「はい。頭に霞がかかったかのようでした」
「今、暴れているみんなはおそらく、その時のオーリンと同じ状態よ」
「森でも同じ事が起こってるって。しかも若い者達だけが」
「どういう事ですか?何故若い者だけが?」
「ゴブークが言うには8年前と同じ事が起きてるって」
「若い子達は8年前の事件を経験していない為に免疫がないか、その後の名付けは私達じゃなくて親達に任せているから私達との《絆の協和》の繋がりが薄いか、のどっちかじゃないかって」
「若い者ばかり連れて来た事が仇になってしまったか」
「この混乱の間に、敵の魔物たちに突破されて今はとにかく時間がないわ」
「オーリンは暴れている者たちを気絶させて、無力化して。そして残った者を集めて前線を立て直すのよ」
「了解しました」
「メソちゃんと私は前線に戻ろう。空が手薄になってて危険だわ」
「わかった」
「オーリンくんダメだからね。殺したりしたら絶対にダメなんだから」
「了解です。メソ様を悲しませる様な事は絶対にしないと誓います」
その時、私に向かって巨大な影が、余りにも巨大な影が飛び込んできた。
突然過ぎて私は反応すら出来なかった。
ドッカアアアァーーン
「きゃああああぁぁ」
「マリちゃん!」
「マリ様!」
何今の?何かに飛ばされて?
『マリ!しっかりしなさい!マリ』
意識が薄れる。だめだ。こんな時に・・・
『マリ! マリ!』
何あれ?・・・ヘビ・・・
だめだ、意識が・・・メソちゃん・・・後を・・お願・
☆(ここよりメソ視点)
「マリちゃん!」
マリちゃんが弾き飛ばされた!何に!
メソが振り返ると巨大なそれは静かに首をもたげていた。
深緑の鱗に覆われた巨大なヘビが。
邪悪に光る赤く冷たい巨大な目、あれが!
「お前が、マリちゃんを殴ったのかあぁ」
「バジリスクーー!」
目の、いや瞳の奥が燃える様に熱い。
そこから身体に魔力が流れ込んでくる。
「ロックカタパルト!」
メソの右手から巨大な岩が噴出されてバジリスクを直撃した。
さっきまでは魔力不足で使えなかった魔法だ!
それでもバジリスクはビクともしない。
「メソ様!」
「オーリンくんはみんなを助けて」
「しかし!」
「大丈夫!メソ強いんだから!」
「早く行って!」
「くそ・・・ご武運」
オーリンくん頼んだよ。こいつはメソがやるんだ。
「メテオスラッシュ!」
更に巨大な岩の塊が上空からから斜めに振り落とされる。
今度はバジリスクも村の外まで吹き飛ばされた。
しかし、また何事もなかったように鎌首をもたげる。
〈ロックカタパルト〉よりも大きな魔法を放ったのだが。だめだ、魔力が足りない。
一時的に魔力量は増えたが、それもすぐに枯渇する。
それでも負けるわけにはいかない。
こいつだけは絶対にメソが倒すんだ。
その時だった。
メソの目の端に、傷だらけで立ち上がる小さな影が写り込んだ。
小さな狸の影が。
「ポンキチくん?」
☆(ここよりポンキチ視点)
「ポンキチくん、逃げて」
「このままでは死んでしまいますわ」
「大丈夫でやんす」
「ミドリの姉貴こそラスリルを頼むでやんす」
「ポンキチ〜・・・死んじゃうよ〜」
一頭のガーゴイルがミドリ達を襲った。
ポンキチはそれに果敢に挑んだのである。
しかし敵う筈も無く、既にポンキチの小さな体は血に塗れていた。
それでもポンキチは立ち上がり、ミドリ達を背にしてガーゴイルに立ち塞がっていた。
「ゴガアアァ」
ザシュッ
「うぎゃあっぎ」
「ポンキチくん!」
「痛くねえでやんす」
「あっしは小型の霊獣っすが、根性ならガーゴイルより大きいっす」
こんなガーゴイルごときに負けてたまるか!
ナスカ先輩がいないんだ。
あっしがミドリの姉貴とラスリルを守るんでやんす!
「ゴカアアアァァッ!」
ドカア、ゴン
「ひぎゃっ」
「ポンキチ〜」
「大丈夫って言ってるでやんしょ〜」
根性でやんす!
ちょっとだけ血が出てるけど根性でやんす!
ちょっとだけ目が霞んでるけど根性でやんす!
「これでどうだ〜!」
ポンキチの身体が壁のように変化した。
身体が引き伸ばされて大きくなる。
《無機物擬態》壁擬態でやんす!
これで少しは持つでやんすかね〜。
「グワアアァァッ」
ザシュッ
根性でやんす!
ガシュッ
根性でやんす!
ドシュッ
根性でやんす!
こんな足の指の1本足りないガーゴイルの爪なんかに負けないでやんす。
あっしはナスカ先輩の代わりに、ここに立ってるでやんす!負けるわけにいかないでやんす。
根性でやんすよ!
キイイイイイィィィーーーーーーン
その時あっしは見たでやんすよ。
凄まじい速さで飛び込んでくる影を。
ザシュァッ、ドゴゴウンーーーン
その影がガーゴイルの足を斬り裂いて、吹き飛ばすのを。
その大好きな先輩の影を。
「ポンキチ。良く頑張ったな!」
「ナスカ先輩!」
やっと登場の主人公でやんす!
次回、ちょっと時間が戻ります。




