35・争乱の始まり
さてと、いよいよ本編再開であります。
☆
ファスルトの西の森に入って早々にメソちゃんが嫌な空気を感じとった。
こういう時のメソちゃんは鋭い。
気を引き締めて調査しなければ。
「マリちゃん。マリちゃん起きて」
「ううーん・・・。どうしたのメソちゃん?」
私は眠い目を擦りながら身体を起こす。
窓から月明かりが差し込む。外はまだ暗い。
「まだ夜じゃない、いったいどうし・・・」
メソちゃんの身体が小刻みに震えている。只事ではない。
「どうしたのメソちゃん?どこか痛いの?」
「・・・嫌な気配が、嫌な気配がどんどん強くなってるの」
「昨日言ってた森がおかしいってこと?」
「ううん、違うの。森だけじゃないの」
「村からも、むしろ村の方が強く嫌な気配に包まれてる」
私は窓を開けて村の方角を見るが、森の木々が邪魔して村の様子は掴めない。
『モラ起きて。今、近くにいる?』
『どうしましたマリ様。私は夜行性ですから起きてますよ』
モラはこの家のすぐ隣の木に住む、小型の鳥の魔獣インモウキ族の少女だ。
『上空からファスルト村の様子を確認してくれる?』
『畏まりました。この変な気配の原因を探るのですね』
『お願い』
モラも何かの気配を感じとってるのか。嫌な予感がするな。
『大変です、マリ様』
『村が沢山の魔物に襲われて、あちこちで煙が上がっています』
『大変な数の魔物です。1000体はいるかと』
『1000体!そんなに』
魔物の種族にもよるが、しゃれにならない数だ!
「メソちゃん聞いてた?」
「うん。早く行かないとミドリちゃんが」
急がないと、しかし相手が1000体では私達二人だけじゃどうにもならないかも。
『マリ、ナスカに連絡するわ』
『待ってアクラさん、まだ情報が少なすぎる』
『私とメソちゃんが村に着いてからでも遅くないわ』
『ナスカはナスカで、大変な時だし、まだ夜も空けてないわ』
『それもそうね、でも緊急な状態になったら勝手に連絡するわよ』
『その時はお願い』
先ずは冷静に、私に出来る事から始めないと。
『ゴブーク・オーリン・ポンゾウ・ポンコ・ポンノスケ、起きて』
『オーリンです。自分は異変に気付いて先程起きました。マリ様、村が大変な事に』
『ゴブーク。拙者も同じで起きたところ』
『ポンノスケです。どうしましたマリ様』
『全員、大至急集会所に集まって。お願い』
『了解した』
『承知』
『両親を起こして僕も直ぐに向かいます』
「メソちゃん、私達も行こう」
『モラ。魔物の種族と数を確認してから集会所に来て』
『畏まりました』
私達は大急ぎで上着を羽織って、ドアに手をかけた。
「どうしたのマリお姉ちゃん。どこか行くの?」
「ラスリル。ごめん、起こしちゃった」
ラスリルは昨晩から私達の家に泊まりにきていた。
「私も行く」
ラスリルに説明している時間も惜しい。
私は無言でラスリルを抱き抱えると、家を出て集会所を目指した。
集会所に入るとゴブークとオーリンはすでに来ていた。
私達のすぐ後からポンゾウ親子も駆け込んできた。
「ポンゾウ、ポンキチは呼んでないわよ」
「すいやせん。ついてきちまって」
「あっしも話しを聞きたいでやんす」
「・・・・・・」
時間がない。ポンキチは後回しね。
「しょうがないわね。大人しくしてなさい」
「わかったでやんす」
とにかく何をおいてもファスルト村に助けに行かねばならない。
「先ずは私とメソちゃんとで村に向かいます」
「オーリンはすぐに動けるオークを集めて追いかけてきて。ゴブリンよりオークの方が防衛には向いてる」
「先行するってお二人だけでですか?危険では?」
「私達なら二人でも、時間を稼ぐくらいは出来るわ」
「心配しないで」
「了解しました。すぐに追いつきます」
「ゴブークは森のみんなを集めて待機していて」
「私が連絡したらすぐに動けるようにしておいてよ」
「承知しました」
「ポンゾウとポンノスケはオーリンをサポートして。人間との連携が取れるように」
「「了解っす」」
「ポンコは残りの家族と共にゴブークと待機。ゴブークが動いたら同じ様に連携のサポートをお願い」
「了解よ。任せて」
「あつしはどうするっすか?」
ポンキチが横から口を挟んでくる。
「あなたはポンコと一緒に待機よ。当然でしょ」
「あっしも連れてって欲しいっす」
「駄目よ。あなたにはラスリルのこともお願いするわ」
そう言って、抱いていたラスリルをポンキチの隣にそっと置いた。その直後に窓から鳥が飛び込んできた。
「モラ。敵の数の詳細は掴めた?」
「仲間とも協力して調べました」
「どうだった?」
「はい。敵の総数は1200体です」
「この内の500体は知恵もなく非力な魔獣と進化前のゴブリンとオークですので問題になりません」
冒険者ギルドで普通のゴブリンの推定魔物ランクはE。オークでもDランク。
対してうちのゴブリンとオークは全員がホブゴブリンとハイオーク以上。ゴブークとオーリンに至ってはチャンピオンとジェネラル。
数は多いけど問題ないわ。
「問題は残りの700体です」
「ガーゴイルとワイバーンが200頭づついます」
「200頭づつ!!」
ガーゴイルとワイバーンは共にAランクの魔物。
知恵はないけど、個体によってはゴブークとオーリンに匹敵する。
それが全部で400頭とは、厄介だわ。
「残りの300体はコカトリス100頭、ミノタウルス100体、イエティ50体、ホワイトファング50頭、それに1頭だけですがバジリスクを確認しています」
「バジリスク!本当にバジリスクなの?」
「何度も確認しました。間違いありません」
バジリスク!
見たことないけどたしか推定ランクでSだったはず。
仮に弱い個体だとしてもA+は確実にあるわね。
それに毒持ちだったはずだ。
村の中での毒持ちはヤバイ。
コカトリスはCランクだけど毒持ち。
ミノタウルスはBランク。イエティとホワイトファングはAランクだ。そしてこの3種族は知恵ある魔物。
知恵ある魔物は攻撃が多彩でランク以上に注意が必要ね。
それに元々この辺にはいない、北方の種族ばかりがなぜこんなところにいるのかも気になるわ。
厄介なのが揃ってるけど、防衛に専念すれば時間を稼ぐことは出来るはずだ。
『アクラさん。ナビに連絡お願いします』
『了解。すぐ来るように言っとくわ』
「マリ様。やはり自分も共に向かった方が」
「いえ、大丈夫よオーリン」
「私達もあくまで防衛に専念する。守るだけなら簡単にやられたりしないわ」
「それでもなるべく急いで来てね」
「わかりました。自分は今すぐ仲間集めに走りますのでこれで」
「呉々も無理はしないでください」
オーリンは急いで集会所を後にした。
『マリ、ごめん』
『ナビとの回線が切れた』
『回線が切れた?何で?』
『わかんないわよ』
「メソちゃん。アクラさんとナビの回線が繋がらないの」
「アンナにやってみてもらって」
「うん」
「駄目みたい。繋がらないって」
『アクラさん、どういう事かな?』
『おそらく妨害されてるわ』
『メソや魔物達が感じてた、嫌な気配ってのが理由だと思う』
『短距離なら問題ないけど、長距離回線は無理だと思った方がいいわ』
『どこまで話せたの?』
『かろうじて魔物の襲撃を受けてる事は伝わったわ』
『詳細は何も』
「メソちゃん。こっちが襲撃されてる事だけはナスカに伝わってる」
「私達は急いで村に向かおう」
「防衛に徹して時間を稼ぐのよ」
「うん。メソ達強いから大丈夫だよ」
「みんな、後をお願いね」
私達は集会所を後にして駆け出した。
村までは目と鼻の先。
メソちゃんの勘の良さで、襲撃にいち早く気づけたのは大きい。
急げば間に合う!
☆
「どうだ戦況は?」
ファスルトの村からはまだ離れた位置。北の旧ハーテノンに向かう街道に彼等はいる。
その彼等の指揮官と思わしき男が、部下に向かい尋ねる。
「はっ。何故かはわかりませんが、マルサンの騎士隊が村に入っていたようで善戦しています」
「しかし数が少なく時間の問題です」
「あはは。まああんな村など魔物どもだけで問題ないのだ」
この指揮官の男は、初めから自分達の勝利を疑っていない。高笑いしながら、戦場に向かう指揮官とは思えぬほどにリラックスしている。
「このまま一兵も損じる事なく、セコードまで攻め込む」
「貴様らも、そのつもりで準備しておけ」
「「「了解であります。トガシン伯爵殿」」」
主人公のいないところで騒然としてまいりました。
作者も続きが気になります。
読者の皆様にも気にして頂けると幸いです。
設定挟んだりしてお待たせ致しました。
この小説の今迄は全て序章、前振りみたいなものです。
(その割には長過ぎですが・・・)
こっからはドンドン盛り上げていきますよー!
ご期待下さい!
☆
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