26・狼たちの黄昏
経過を看るまで油断は出来ないけど、母さんの治療は間に合ったと思う。
まだ他の仲間達の治療が残ってる。
フェンリルの兄弟も倒れちゃったみたいだ。
「俺達が出掛ける時には、あの兄妹は元気だったのに」
「昨日、急に倒れたの。ずっと我慢してたみたいで」
「かなり重症みたいなの。今はグライスが看ててくれてる」
仲間達の看護は簡単なことなら獣でも問題ないが、細かなところは人型でないと上手くいかない。
獣人化出来る幻獣フェンリル族の二頭は、今回頑張ってくれていた。
昨日倒れて、今、全然動けないってことは相当我慢してたんだな。
この後の治療も手伝って貰いたかったのだが仕方ない。
「とにかく行ってみるよ。母さんをよろしくねキヒ姉」
「任せて」
フェンリルの家は村の東側にある。
歩き出した俺にナビが話しかけてきた。
『タマモの容態が悪化したすぐ後でした』
『やっぱり知ってたんだ。あいつらが感染してたのも知ってたんでしょナビさん』
『心配事を増やしてもと思いまして。申し訳ありませんマスター』
確かに俺が知ってても出来ることはなかった。
だけど知ってたらメソとタツキを残して行けたんだけどな。
アクラは俺の監視役でもあるので、滅多に別行動は出来ない。
今回は移動速度を優先する為にアクラには納得してもらった。
フェンリルの家の周りは、フェンリル族に庇護されているソードウルフ達が心配そうに囲んでいる。
その家の入り口をノックして中に入った。
「二頭の具合はどう」
「戻ったのかナスカ。良くはない、診てやってくれ」
「薬の手配に時間掛かるので、手持ちだけ持って俺だけ先に戻ってきた」
グライスと話しながら、《亜空間収納》からさっきと同じ医療器具を取り出して準備する。
グライスはブルジ山中腹の南西側を管理する聖獣グリフィン母子の子供の方である。
管理地を留守には出来ないので、母であるグリンリルはブルジ山に控えている。
人化しているグライスは見た目は20歳くらいの金髪で長髪の美青年だ。
身長も190センチの長身で完全無欠のイケメン野郎である。
密かに、といってもバレバレなのだが、グライスはマリ姉に惚れている。
絶えずマリ姉と一緒にいる俺に何かと対抗してくる面倒くさい奴だが、頼りになるナイスガイだ。
「フェラー、ちょっとチクっとするぞ」
先程と同じ手順で処置を始める。
「すいませんナスカ様」
「気にすんなよ。仲間達の看護を手伝ってくれて助かったよ。フェリもな」
「いえ、大変な時に私達まで倒れてしまって」
「だから気にすんなって。病気なんだから大人しくしてて」
フェラーとフェリはブルジ山中腹、グリフィンとは反対の南東側を管理している幻獣フェンリル親子の双子の兄妹である。
フェンリル族は狼を大きくした様な姿で、特徴的なのは銀色に輝く見事な毛並みだ。それはそれは見事な光沢を放っているのだ。
体長が3メートルもあるフェンリル2頭が横たわっていると大きな家が狭く感じてくる。
2頭共、獣人化状態なら身長185センチなのだが。
兄のフェラーは非常に無口で滅多に喋らない。
寡黙なハンターという印象だが、俺を敬ってくれている。
妹のフェリも俺に誠心誠意尽くしてくれるが、世話を焼き過ぎるのが玉に瑕だ。
兄妹の父親であるフェンフィンは更にデカイ。体長5メートルで、体高で2.5メートルもある。
フェンフィンもグリンリルと同じ理由でブルジ山の中腹南東に残っている。
「これで大丈夫だ。もう心配ないよ」
2頭共、母さんよりは大分軽かった。直ぐに良くなると思う。
「ありがとうございます、ナスカ様」
「早く良くなって、直ぐにお役に立ちますので」
「自分もです」
「無理は駄目だ。ちゃんと大人しく寝てるんだぞ」
「グライス、後頼むよ」
「ああ。わかっている」
俺はフェンリルの家を出て集会場に向かう。
大型の獣の3頭分を使ったので、手持ちの薬は大分減ってしまったが、やれるだけやるしかないのだがら。
とりあえずだけど治療終了。
次回からは主人公とは違う人の目線になります。
お楽しみに。




