25・どこでもドア〜
母さんの容態が急変した。
早く薬を届けないと。
俺は領主宅の客間で目覚めた。
とはいえまだ早朝である。
ベッドの中ではルルがモソモソと動いている。
昨日、俺達が緊急の話し合いをしている最中のルルは、心配そうな顔をしながらも黙って話しを聞いていた。
ベッドに入ってからは涙を浮かべて俺にずっとしがみついたままだった。
獣の村では多くの魔獣が床に伏せっている。その中にはルルの兄姉も含まれる。心配だったのだろう。
マリ姉・メソ・タツキの3人はミドリの部屋に泊まっている。
各々のやるべき行動は既に決まっているから、あっちでは女4人でガールズトークでもしていた事だろう。
良い気分転換にはなるだろうが、夜遅くまでやってないかが心配だが。
『ナビ先生、タマモ母さんの様子はどう?』
『変わりありませんが、安定はしています。今日中に処置すれば問題ありません』
『他の皆んなは?』
『現在、一番悪化しているのはタマモです。彼女は高齢で体長も大きいので体力的にキツイと思われます』
『病気の廻りが早いのは体長の小さな者達ですが、今のところ問題ありません』
『わかった。何かあったら報告してくれ』
『了解です。マスター』
一先ずは変わりないか。安心は出来ないけど。
薬が届くまではまだ時間があるだろう、今の内に頭の中を整理しておこう。
先ずは俺の役割からだ。
薬を届けたら母さん他の重症な患獣に処置を施す。
残りの薬が届くまでの間は経過を見守り、届いたら薬剤の調合だ。
一通り終わったら、ファスルトに飛んでマリ姉とメソに合流する。
場合によってはグライスにファスルトに向かってもらおうとも思っている。
タツキには薬を届けてもらった後は処置と経過の監視を代わって貰う予定だ。
タツキはある程度の医療知識があるので任せられる。
その間にファスルトの件が解決していなければ、タツキもファスルトに向かうと言っていた。その辺りの事は連絡を取りながら臨機応変にやるしかないだろう。
仮に俺とタツキが獣の村を離れても、治癒魔法を使えるキュービ兄やキヒ姉もいる。
今も任せているところだし問題ない。
マリ姉とメソは今日はセコードの街で情報収集と準備をして、明日ファスルトに出発する手筈になっている。
昨日あれから領主の話しを改めて詳しく聞いたが、どうも胡散臭い気がする。
マリ姉とメソには無理はしないように言ってあるが、連絡はマメにとった方が良いだろうな。
ルルはタツキに連れ帰ってもらう。
ルルも《影移動》が使えるが、俺の《亜空間移動》にはついてこれない。《亜空間移動》中は耐性のない者は俺の影に潜る事も出来ないので、タツキに任せる事にした。
『マスター。タツキが起きました』
『わかった。応接間に移動するよ』
『大広間がよろしいかと。この家の朝食は大広間で摂るようです』
『大広間?場所がわからないけど』
『ご案内します。タツキにはもう伝えました』
『流石はナビ先生。ありがとう』
いったいいつナビ先生はこの家の間取りや生活習慣まで調べてるんだろうか?謎だ。
ルルはまだ寝ている。
昨夜は遅くまで泣いてたようだし、起こすのは可哀想だな。
仕方ない、抱いてってやるか。
☆
「とりあえず集まったのは中型の魔獣12頭分だ。大型の魔獣だと5頭分しかないが大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます、領主」
「みんなをお願いします」
「こっちの事は心配するな。タマモさんによろしくな」
「お嬢もまた」
「いいから早く行きなさい。私だってタマモの事は心配してますのよ」
「そのかわり今度はゆっくりと遊びに来るのよ」
「わかりましたよ」
「じゃあみんな、行ってくる」
挨拶を交わして直ぐに俺は亜空間に入った。
出口は獣の村とセコードの丁度中間の場所だ。
《亜空間移動》でも獣の村までは一度には飛べない。
それに《亜空間移動》は非常に疲れるので、一度飛んだら休憩が必要だ。
3時間の休憩の後に二度目の亜空間に入った。
出口は当然獣の村の自宅前である。
獣の村には4軒の家と1軒の集会場がある。
一番大きな建物が集会場で、次に大きいのが俺達テイルズフォックス親子の家だ。
集会場程ではないが、多くの魔獣が集まるのでこの家もかなりでかい。
その隣に建ってるのがタツキの家。
タツキの母はブルジ山山頂に住んでいるが、タツキはもっぱら獣の村で生活している。
他の2軒は、普段は使っていない。
ブルジ山中腹の南西側に縄張りを持つ聖獣グリフィン親子が訪れた時用の家と、同じ様に中腹南東側を支配する幻獣フェンリル親子用の家である。
タツキの家も含めて、この3軒も人間の家と比べると大きな家だ。
グリフィン・フェンリル共に獣姿の時は大型の魔獣なので狭い家では困るのだ。
タツキも竜化すると大きくなる。他の竜族に比べると滅茶苦茶小型なのだが、それでも3メートルくらいにはなるのだ。純粋な竜族はデカ過ぎて家になど住めない。
これらの家々は俺が建てたものではなく、俺達と仲の良いドワーフ達が来て建ててくれたものだ。
その自宅前に俺は一瞬で移動してきた。
行きに2日かかった距離を3時間で戻って来たのだ。
「キュービ兄、母さんの具合は?」
「ナスカ。今は眠ってるけど苦しそうなの。どうしたらいいの?」
「落ち着いてキヒ姉。今直ぐ処置するから」
俺は手早く薬の準備を始める。
「キュービ兄は?」
「今は集会場の方に行ってる」
話しながら大型家畜用の注射器を取り出し、次いでに鎮痛剤の錠剤も取り出してキヒ姉に渡す。
「母さんに飲ませてあげて。少しは楽になる筈だから」
「わかった」
「お母さん、起きて。ゆっくりでいいからこれ飲んで」
「ナスカが持ってきてくれたの」
母さんがゆっくりと目を覚まして俺の方に振り向いた。
「おかえりナスカ。ご苦労だったね」
「動かないで母さん。今から処置するから」
起き上がろうとする母さんを、俺とキヒ姉で慌てて止める。
狐姿の母さんは大型だ。体長が280センチあり、そこに160センチもある尻尾が7本も生えてい、体高でも120センチもある。
ただ人化すれば身長は170センチに縮まるので、家で生活する時には人化している。
今は体力が落ちているので人化は出来ないのだろう。
キヒ姉は人化して看病している。
テイルズフォックスは真っ白な毛並みと尻尾の数が特徴的な種族だ。なので人化すると皆真っ白な髪の毛になる。
キュービ兄はショート、キヒ姉はショートボブ、メソはストレートなセミロングと髪型は様々なのだが。
メソだけは人間でもあるので、普段はピンク色のふわっとショートの人間バージョンで生活している。
「母さん、ちょっとチクっとするけど我慢してね」
解熱液剤を注射して針先を残して注射器を外す、それにチューブを繋いで抗生物質を点滴で少しずつ投与していく。
「母さん、じきに眠くなるから楽にして寝てて」
「ありがとう、ナスカ」
コカトリス熱は高熱に痛みが伴うので、発病するとかなりキツく死亡率も高いが熱さえ下がれば心配ない。
「もう大丈夫だと思うよキヒ姉」
「よかった〜。ありがとうナスカ」
心底ホッとした様子のキヒ姉。よっぽど心配だったのだろう。
『ナビさん、アンナに報告して』
『村に到着直後から逐一状況は伝えています』
流石はナビ先生。
「俺は集会場に行ってくるよ。姉さんは母さんを観てて」
「待ってナスカ。フェンリルの家に先に寄っていって」
「フェラーとフェリの二頭も倒れちゃって」
「えっ、あの二頭も倒れたの」
どうしてもいい感じの内容をいい感じの長さで書けんでず。
自分の文才の無さに呆れてしまいますが、いい加減な性格なので、もう気にしないことにしました。
こんな作者ですが、お付き合下さいね。




